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生死を扱うので肉体改造は得意です

号令なしに、ロンバルドを先頭に銀の槍を持った兵士達が隊列を組む。

此方を先端に三角形を作るような陣形だ。

槍を持たない者達が走り出してどこかに向かっていくが、まぁあっちはスケルトンドラゴンがやってくれるので無視して良いだろう。

何でかスケルトンドラゴンの方向に自分から向かっていってるしな。


「まさか、竜狩りと同じような戦いになるとは」

「本当の竜は向こうだ」

「お前ら、無駄口を叩くな。隊長に続くぞ」


腰を落とし、彼らが構える。


「人骨操作」


俺も対応すべく、自らの骨を人骨操作にて武器へと代えていく。

手のひらから突き出すような形で、一瞬で伸びた骨の剣。

それを握って、二刀で構えた。

近接戦闘は苦手なんだ、なぜなら戦う相手が骨だけだったからな。


「我が身に続け!鉄と血によって敵を制す!総員、突撃用意!」

「「「用意!」」」

「突撃ィィィィ!」


爆発音が聞こえたと思った、同時に自分に向かって槍が迫る。

砂埃がロンバルドの背後で舞う、あの距離を一瞬で詰めた。


「ぐっ!なら」


骨の剣を交差し、その槍の穂先を防ぐべく身構える。


「甘い!」

「なっ、ガハッ!?」


槍が伸びた。

遅れながら、その理由に気づく。

奴は引きながら駆けることで距離を詰め、此方が身構えた瞬間に突きを放ったのだ。

強烈な一点への攻撃は骨の剣を容易く砕き、俺の胴体へと衝撃を走らせる。

そのせいで、内臓が損傷し吐血する。

まぁ、衝撃が走っただけだ。


「ムッ!?貴様!」

「死ね」

「隊長!」


刈り取るように、背中から骨の刃付きの血管が飛び出して肉薄にせんと迫る。

翼のように、生えたそれは鞭のように俺の背後から前面に向かって振るわれた。

その先端には骨で出来た刃、まるで鎖鎌のようなそれがロンバルドの首まで迫り、左右から飛んできた二つの槍によって弾かれた。


「残念です、防がれたか」

「手出し無用!」

「何言ってんですか隊長、死にかけてましたよ」

「肉の触手に骨の刃、本当に人間か?」


弾いたのは部下の騎士達の槍だと気付く。

しかし、せっかくの奇襲が台無しだ。

ロンバルドだけに集中していた自分の失態か。


「気を付けろ、防具を身に着けているようだった」

「そこまでお気づきでしたか」

「フン、手応えが違ったのでな」


ロンバルドの言う通り、俺は肋骨を交差させて、鎧のように骨をつなげていた。

一応、鉄板のような強度はあるんだが衝撃は通されてしまった。


「部下の方達が邪魔ですね。試したいことがあったので利用させてもらいましょう」

「させるとでも」

「俺の方が早いので、指骨発射!」


両手を向け、指先の骨を射出する。

末節骨の骨が飛び出し、次に中節骨、基節骨と飛び出していく。

指の一つが発射し終えると直様に骨を生成し、絶え間なく射出していく。

まるで雨粒が降り注ぐように、絶え間なく発射される骨、ロンバルドを守るように部下が肉の壁となる。

ロンバルドの前に出た部下の二名が、身体中に骨を突き刺さった状態になった。

傷は浅く、身体の傷穴から滲み出るように血が出るぐらいだ。


「隊長はやらせないぞ、死霊術師」

「まだ攻撃は終わってませんよ、人骨爆破!」

「なっ、ぶがぁぁぁ!?」


ロンバルドの前で、部下の身体が膨らみ始める。

一瞬の膨張、同時に水風船が割れたように内側から爆発して血飛沫へと代わった。

その光景に、ロンバルドが目を見開き固まる。


「な、なん……」

「あの槍の攻撃、魔力を暴発させて爆発させるんですよね。媒体として優秀な骨でやってみたんですが、同じくらいの爆発力はあるみたいだ。初めて何で成功するか分からなかったんですけど」

「貴様ァァァァ!」

「ッ!?どうしたんです、いきなり!」


何をしたのか聞きたがっていたから教えてあげようとしたら、ロンバルドが突っ込んでくる。

その身を赤くして、煙のような物が出ている。

熱い、これは熱か!?

まるで焼入れしている鉄のように熱くなっていた。

体感で、さっきよりも速度も力も段違いだ。


「ウオォォォ!」

「くっ!?これは……」


銀の槍が赤くなっていた。

赤い、赤熱した槍が骨の鎧を焦がして貫き、内蔵を焼く。

意図したことではないだろうが、焼かれた内臓は一度分解する工程を踏まないといけないので再利用出来ない。

つまり、傷口と傷口を繋いでの再生は出来ない。

再生力の低下、焼かれた傷口はそれを招いた。


「た、隊長に続け!」

「奴を仕留めろ!」


部下達が続くように俺とロンバルドの近くまで武器を持って集まってくる。

囲まれると面倒だ。


「貴様は、確実に殺す!」


顔面は赤く、血管は浮き出ており、眼球は真っ白であった。

まるで鬼の形相、オーガのような顔である。

最初から使えばいいのに、使っていなかったというのはリスクのある技なのだろう。

身体能力の上昇、発熱、どういった魔法だろうか。


「面倒な」


上半身と下半身を切り離し、自分の髪を掴む。

そして、首を切り離して思い切り遠くに投げた。

ブレる視界、だがこれで距離は取れた。


「人体爆破」


人骨爆破の応用、槍の代わりに肉体を媒体として魔力を暴走させる。

自分の八割の魔力を失うが緊急事態だ。

ここは戦場、死体になって霧散した魔力がゴーストになることだろう。

そいつらを吸収すれば、幾らか回復できる。


「貴様ァ!戦え、戦え!」


視界の端で、此方に吠えるロンバルドの姿が見えた。

そして、目の前で自分の肉体が膨れ上がり内側から目が眩む程の光を発しながら爆発した姿が見えるのだった。




衝撃と共に頭痛がする。

それもそのはず、爆風に煽られて頭から地面を転がったからだ。

その頭をどこからか現れたスケルトンの一体が拾ってくれた。

自分の頭部とすり替えるように交換させた。

喉の部分に骨が刺さっているような状態で不安定ではある。


「酷い目にあった。さて」


俺はスケルトンの身体で倒れている死体を探して走る。

随分遠くまで飛ばされたな、まぁ敵の死体までは遠いけど。

しばらく走ってようやく第一死体を発見。

その死体の首を切断して、自分の首を外してくっつける。

すると、首と敵兵の死体が同化して肉体を手に入れられた。


「君には新しい頭をあげよう」


敵兵の頭をスケルトンに渡して、自由にさせる。

一応、彼らにも少しだけ意識があるからな。

部下の気持ちを蔑ろにしてはいけないだろう、ロンバルドの姿から俺は学んだ。


「ふむ、内臓に穴が開いてるな。刺されたのか」


肉体の状態を確認、再生させて周囲を見渡す。

嬉々として死体漁りを死霊術師が始めそうなほどの死屍累々な光景が広がっていた。

歩くたびに新しい死体が見つかるとか、楽園だろうか。


「兵士達よ、俺の元に集え。魂縛吸収」


手を掲げ、そこに向かって周囲の死体から魂を集める。

球体のように集まった魂を分解して、魔力へと代えていく。

これで全回復だ、後は敵の兵士か。


そして、スケルトンドラゴンの方を見ると奴は静止していた。

おかしい、敵を殲滅するまで暴れるように命令を組んでいたはずなんだが、やられたのか?


「あっ」


俺の意思を感じ取ったのか、スケルトンドラゴンが首を左右に振る。

そして、視線を足元に向けていた。

おい、これを見ろと目で訴えかけられた。


そして俺は気付いた。

足元にいる死体が、綺羅びやかな装備をしているということにだ。


「領主が……死んでる……」


呆気ない幕引きで戦争が終わった。






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