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金、金、金、聖職者として恥ずかしくないのか

霊体変化して、壁をすり抜けるようにしてソフィア殿達の元に戻る。

ソフィア殿達は、どうやら場所を変えていたらしく洞窟のような場所にいた。

よく、洞窟なんて手頃な物を見つけたな。

洞窟を進んでいくと、広い空間が出てきた。

竈やテーブル、それに食料と敷物として動物の死体が地面にはある。

ベッドもあり、ソフィア殿達が準備したというよりは元からあったような物だ。

そんな竈の前にソフィア殿がいた。

横にはオグマ少年が鍋を見ている、料理中だろうか?


「ただいま戻りました」

「ハデス!?よく、ここが分かったな」

「レギオンの繋がりを追って来ました、何かありましたか?」


俺の問いに困惑した様子で、色々合ったと言葉を濁す。

そんな彼女の言葉を補足するようにオグマ少年が口を開いた。


「山賊に襲われたんだ。あんな目立つ馬車じゃ見つかって当然かもしれないけど、それで山賊が死んだ」

『儂らがやった、ドヤァ』

「あぁ、うん、瞬殺だったよ。それで、山賊の身体を乗っ取ったレギオンに連れられて拠点に来たんだ」


なるほど、それにしては死体がないと思ったがそれに関しては察したのかオグマ少年が奥にあると教えてくれた。

まぁ食えよと出された食事を食べながら、俺は自分が得た情報を伝えた。

ソフィア殿を支持する人間が処刑されていること、ゾルグという隣の領主が乗っ取ろうと民衆を惑わしていること、


「抵抗勢力?つまりテロリストって事ね」

「まず、ソフィア殿の予想に反して騎士達は裏切ってませんでした。ゾルグという輩が連れてきた、メイシュール家の騎士と未だに争っているようです。奴らは彼らのことを騎士派と呼んでいます。村人を連れてったのはメイシュール家の騎士ですね。それとゾルグと結託していない聖職者、教会派という名称の者達がいて、全員監禁されてるそうです」

「うぅ、あぁぁ!ごめん、疑ってごめん!ポンコツでごめん!」

「お姉ちゃん……」

「何だかすみません」


ソフィア殿が自分の過ちに苦悩して唸り声をあげた。

隣りにいたオグマ少年も残念そうな目を向けていた。

いっそ殺せと言うので、言われた通りにしようとしたら本当に殺そうとする奴がいるかと怒鳴られた、解せぬ。


『女心とは、裏腹なのだ』

「俺には難しい」

『フッ、坊やだからさ』


そういうものか、レギオンの言葉に耳を傾けて俺は反省した。

ソフィア殿は考えを巡らせ、一つの作戦を持ち出した。


「監禁されてる人達を助けよう」

「なんか、普通」

「普通って言うな!そんで、ゾルグの野郎をボコボコにして解決よ!フォローは助けた教会の人がしてくれるはずだし、完璧ね」

「うむ、唸るほどの妙案だ」

「兄ちゃんは兄ちゃんで、どうしてそう全肯定するんだよ」

「肯定……難しい言葉を知ってるな」


そうして、俺達は食事を終えて山賊達の住処で一夜を過ごすのだった。

翌日、流石に馬車は目立つので置いていくことにした。

山賊の死体から剥ぎ取った服を使って、変装もした。

村人を装って街に入る作戦だ。

ちなみに、ソフィア殿は男装することでバレないはずだ。


ホープキンスの街は、元々交易都市であるため人の出入りを止めると数日で食料が尽きてしまうそうだ。

この辺は領主であるソフィア殿は詳しかった。

俺達は疎らながらもやって来る商人達の群れに混じって街へと向かった。

長い外套につば広の帽子、そして杖と貴重品の入った袋。

紛れもない巡礼者の恰好だった。

山賊共が盗品を売るために街に入るための恰好なのだろうというのが、ソフィア殿の見解だった。


「次、身分書を出せ……この時期に巡礼者か」

「何かあったので?」

「いや、入っていいぞ」


特に怪しまれることもなく、気の毒そうな目を向けられるだけで中に入ることが出来た。

俺は以前手に入れた知識を元に教会へと迷わず向かう。


「私、戦闘とか出来ないから頼むわよ。まずは裏切り者を殺すわ」

「姉ちゃん、貴族なのに魔法とか使えないの?」

「使えるけど、私が使えるのは戦闘向きじゃないから。あと、私は良いけど他所でそんな口を聞いたら不敬罪で首が飛ぶから貴族に対しての言葉使いを覚えたほうが良いわ」

「そ、そうなんだ。貴族って怖え……」

「いや、貴族よりハデスの方がよっぽど怖いと思うんだけど」


ソフィア殿の指示に従って、まずは聖職者を殺すことにした。

死霊術師の天敵なのでゾルグを倒す前に、部下であるソイツらを先に処理したほうがいいそうだ。

そういう戦略というのは習ってなかったので勉強になる。


「ハデスの話だと、ちゃんとした聖職者は監禁されてるのよね?」

「はい。領主の館近くにある監獄にいるそうです」

「どうして領主の館の近くに犯罪者がいる監獄があるんだ」

「兵舎も近くにあるから、一番守るべき領主の元にすぐ行けるようにだよ。領主の周りが一番武力があるから、必然的に監獄も見張りがしやすい場所にあるのよね」


流石、この街の領主なだけあってオグマ少年の疑問はソフィア殿がすぐに回答した。

兵舎から離れている場所に監獄があると、脱獄されそうになった時に増援が遅くなるのだそうだ。


「教会の奴らを殺したら、監獄を襲撃するわ。その頃には騎士が出てくるでしょうけど、ゾルグ諸共一網打尽よ。最期に我が家に帰って、聖櫃、契約の櫃に血を入れて街を掌握するわ」

「流石です、ソフィア殿」

「そんな作戦で大丈夫なのかな……」


教会に辿り着くと、そこには民衆による行列が出来ていた。

行列の先では、教会の人間らしき聖職者が魔法で治療を行っている。

その様子にソフィア殿が解説してくれた。


「教会にも派閥があるんだけど、アイツらは守銭奴の奴らだ。なんとか学派の奴らで、善行を行うべき者は優先されるべきという考えから、寄付金次第で魔法による治療を行うんだ。たぶん、反発したのは金儲けを良しとしない派閥の人達だ」

「あぁ、なるほど、だから時たま治療を拒まれる人がいるんですね」

「魔力にも限りがあるから誰でもというわけにはいかないけど、あぁそうか人手不足なんだ。それに治療も間に合ってない。魔力を領主から提供されてないんだ。だから治療速度は遅れるし、しかも金で選り好んでるから余計に時間が掛かってるんだ」

「騎士のように、領地から魔力を提供されるのですか?」

「本当はダメだけどね。許可する人がいないからされてないのが現状ね」


見た限り、行列に並ぶ民衆は病人と言うよりは怪我人の方が多い。

恐らくだが、隣の領地の騎士共が暴れてたりするのだろう。

今の時期で怪我をするのはそういう可能性が高そうだ。

しかし、教会に人がいる状態では戦闘に巻き込みかねない。

それはソフィア殿が求めるものではないので困った。


「何かきっかけがあれば良いんだけど」

「何やら動きがありますよ」

「なんか、どっか行こうとしてね?」


離れた場所から見ていた俺達の視線の先には、民衆を放置して足早に何処かへと向かおうとしている聖職者達の姿があった。

一体、何が起きているんだ?


「よく分からないけど行くわよ!」

「了解しました」

「あぁ、もう、行き当たりばったりだな!」



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