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プロローグ
ある風の強い日、その子は産まれた。
家で家事をこなしていたレイシア、彼女は少し前流産で子供を亡くしていた。
彼女は毎晩生まれてくるはずだった子供を思い、涙を流していた。
ついには子供の元気な「オギャー」という幻聴が聞こえて、聞こえて…
「………………オギャー、オギャー」
幻聴ではなかった。家の外に出ると小さな赤ん坊が置き去りにされていたのだ。
裸のまま、寒い風にさらされて。
一も二もなくレイシアは赤ん坊を抱きしめると、使うことなく飾られていた赤ん坊用のベットにその子を寝かせた。
おそらく捨て子であろうその赤ん坊が、レイシアの家の養子として迎え入れることになるのはそう時間のかからないことだった。
そうして、その赤ん坊はヴェント、と名付けられ、レイシア=フィーチェ、ハンス=フィーチェの養子となったのだった。