爆弾
衝撃の爆弾発言により、氷漬けのように固まってしまったソフィリア。
それを知ってか知らずか話を続けるルーウェン。
そんな二人を少し離れた場所から不思議な顔で見つめる侍従たち。
ルーウェンは何かを話しているが、少し離れている侍従たちは勿論であるがソフィリアにも一切聞こえていない。
ソフィリアはただいま絶賛パニック中だ。
待って。あの傷者の婚約者ってもしかして私だったの?もしかしてゲームの時も魔力暴走に巻き込まれていた!?
それにしても傷者の意味…!!私が考えていたのと違うかった――!!いや、違うかったのか?真実はわからない…よね?
でもどちらにせよダメダメダメ!
だってルーウェン様のトラウマの中心に今いるのは私でしょ?今回巻き込まれたのは私だけだもんね?つまり、私がいるとあの魔力暴走の時のことを思い出してルーウェン様は苦しむはず…。生真面目な彼は責任を…とか言っているが、この婚約話は彼の望んだことではなく確実に仕方なくだ。それにこんな見た目で貧乏貴族の私と婚約なんて…そんな可哀そうなことはできない。メリットも何もないじゃない。
それに私はただ、ルーウェン様がヒロインと結ばれたとしても生き残るという未来を得たいだけなのだ。死亡フラグにヒビを入れるにはトラウマを少しでも軽くして、禁忌魔術を使わせないように約束すればいいと考えている。
…それにもし、もしもだよ?もしも本当にゲーム内のルーウェン様の婚約者が私だったなら、私って婚約破棄されるうえに病気で死んじゃうのでは…?あの…お気の毒な…婚約者…。
私の表情がどうだったかはわからない。だけど顔面蒼白。この言葉が一番合っていたかもしれない…とルーウェン様の言葉でそう思った。
「そのようにこの世の終わりのような顔をしないでください。確かに、怪我を負わせた人間と一緒になるのは嫌ですよね。」
いやいやいや、そういうのじゃないんです。むしろ婚約して…結婚して…そのご尊顔を毎日見られるのならラッキーすぎるぐらいラッキーだけど…。いや、毎日見てたらドキドキしすぎて死ぬかもしれないけど…。いや…ちょっと…かなり…夢みてしまう。ぐふふ。ぐふふふふ。
いや、だめだめだめ。せっかくソフィリアになったのだ。私はまだ死にたくない。もし婚約者となったら、私が死ぬ可能性が極めて高くなる気がするのだ。それに、私はルーウェン様の闇の一部にはなりたくない。そんなの耐えられない。
だったら闇になるきっかけごと無くせばいい。つまり私のことなどさっさと忘れてしまえばいい。婚約者にならなければいい。もう二度と会わなければいい。そう、私は絶対婚約者になってはいけない。
ソフィリアは何度も言うが、すでに頭が絶賛パニック中である。
落ち着け。落ち着いて話すんだ。
ひっひっふー。
いや、これは違うな。
一度ゆっくりと深呼吸をする。
すーーはーーー。
まず。怪我を負わされた相手だから婚約するのが嫌だというルーウェン様の誤解は解いておきたいと思う。だって実際そうじゃないんだもの。
私と婚約なんてすると、お互いがお互いを苦しめる結果になることは目に見えているのだ。なぜなら私という存在がルーウェン様のトラウマを刺激し続けることになるし、お互いの死亡フラグもたってしまう。なんて恐ろしい。
ただ…こんなことを説明することはできない。
だから、望みもしない婚約を責任と言う形でルーウェン様に押し付けてしまうことが嫌だということをどうにか伝えたい。そう思って言葉を口にする。
「そうではありません。怪我は関係ないのです。責任とかはもう考えないでいただきたいのです。」
しかし必死に言葉を紡ぐものの、頭の処理能力はほぼ機能していない。なんとも言葉足らずな説明になってしまっていることは、ソフィリア自身も気づいてはいるが言葉が出てこないのだ。
すると、何を思ったのかルーウェン様まで可笑しなことを言い始めてしまった。そして私の頭の中は更に混乱を極めることになとは予想もしていなかった。
「私のことがお嫌いですか?いや、でも顔が見れて幸運だと言っていたぐらいですから私の顔は好みだということですよね?」
…え?なんだって?