表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
35/36

鬼ごっこと水着

 快晴。

 半袖から出ている肌、首元を日差しが照らす。 


 気温は30度。長袖を着ている人はいない気温の中、僕たちは海の目の前まで来ていた。


「うおぉ……」


 あまり海に行かないというか、行ったことのない僕はそう声を漏らした。

「わぁ……」


 そして隣にいる姫乃さんも口を開けながらそう漏らす。

 ほんとに今日は天気が良い。


 真上を見たら目が太陽に焼かれそうな気がする。


 海は太陽の光によって輝いていて、子供たちが砂浜で遊んでいたりと、楽しそうな声が聞こえてくる。


「とりあえず砂浜まで行くか」


 そう言い、僕たち7人は階段を降り、砂浜の方に足を向ける。

 井早坂さんは我先にと、走って階段を降りていく。


 そうして砂浜まで着くと、急に鬼ごっこが始まった。


 井早坂さんが姫乃さんに「ハイタッチー」と言い、瞬時に理解した姫乃さんは他の人たちを追い始めた。


 そして姫乃さんは僕なら捕まえられると思ったのか、僕の方を向いた。


「え、マジか……」


 僕は危険を察知し、砂浜の中を走る。


「走りづら……!」


 足を着地するたびに足が砂に埋まる。


 重い足取りの中、僕は頑張って逃げるが、なんと姫乃さんに僕は追いつかれてしまった。


「タッチー! 如月くん鬼ね!」

 姫乃さんは「わーい!」と言いながら違う方向に走っていく。


 タッチ返しというセコい真似はできないので、僕は結衣凛さんは新城が走っていった方向に足を向けた。


 すると、1人の姿が見えた。

 天堂だ。


 捕まえられるもんなら捕まえてみろと言いたげな佇まいに、僕は天堂の方に足を向けた。


「棒立ちとは……絶対捕まえてやる」


 僕はそう意気込み、走り出す。

 しかし天堂は僕のことを舐めているのか、まだ動かない。

 ギリギリまで棒立ちしているつもりか。


「舐めるなぁ!」 


 僕は大きな声でそう言い、全力で走った。

 砂浜では瞬時に方向を変えることはできない。


 ギリギリまで近づいたところで天堂がどちらかに避けるはずだ。

 そう考え、僕はどちらに足を向けるか予想する。


 そうして——


「キタキタ!」 


 天堂は楽しそうにそう言い、足を回転させる。

 僕が予想していた方と同じ方向だ。


 僕は走りながら重心を変えていたので、天堂が逃げた方向に足をすぐに変えられた。


 が——


「「あ」」


 僕たち2人は転けてしまい、僕が天堂に覆い被さるようになる。


「イッテえ……」


 僕の顔が顔に当たってしまたらしく、顔を擦るながら言う。

 すると、井早坂さんがその様子を見ていたのか、こちらに近づいてきた。


「大丈夫ー?」 


 アハハハハと大袈裟に笑いながら言ってくる。


「慎弥ダッサぁ。慎弥鬼じゃーん」

「うるせーな!」


 井早坂さんは天堂のことをバカにするように言い、「逃げろー!」と言いながら逃げていった。


「クッソ。オレ鬼かよ」


 天堂はそう言いながら、僕を軽くどけて立ち上がる。


「よっしゃ、捕まえられた」


 僕は天堂に、ざまあとは言わずにそう言った。

 僕をバカにするのが悪いんだ、とも言わないでおいた。


 天堂は「次捕まえてやる」と言いながら近くにいた巫さんを追いかけ始めた。


「いや————————!」


 砂浜の中で巫さんの大きな声が響く中、僕たちは鬼ごっこを楽しんだ。

「お前そんな筋肉あったか?」


 下に水着を着ていた僕たちはビーチで先に着替えを済ませていた。

 女子は海に行ってから着替えると決めていたため、更衣室に向かっていった。


 そうして僕は上半身裸になったときに天堂からそう言われた。

 筋トレの成果は男子から見ても分かるようだ。


 ふぅ……。やったぜ。


「最近筋トレしてるんだ」

「マジで言ってんのか……?」


 お前マジか、とジト目で見てくる。

 確かにこんな僕が筋トレなんか合わないわな。


「まあ……。そんな目で言ってこないでくれよ……」

「いいけどよ、お前やっぱり結……」


 そこで言葉に詰まった。

 姫乃さんたちがこちらに向かっているのに気づいたのだろう。


「……まあ新城の体みりゃ、お前の筋肉なんてヘナチョコだろうけどな」


 最後にそう言い残して、姫乃さんが歩いている方向を向いた。

 僕は歩いてくる姫乃さんの水着ではなく、新城の体を見た。


「うおぉ……」


 引き締まった太ももの筋肉、脹脛(ふくらはぎ)、そしてまた引き締まった肩周り、まるで運動部の見本みたいだ。 


 太ももや、足の筋肉から見るに、サッカーなどの運動をしているのだろう。

 だが新城は今帰宅部だった。


 それに1軍にいるみんなは帰宅部だ。

 1軍なのだからバリバリ運動してモテモテというわけではない。


 運動部という肩書きなしで知名度を上げ、学校中みんな知るような存在になっている。


 そう考えると、姫乃さんと天堂からできたこのグループはすごい……。

 そんなことを考えてたときだ——


「……ぎくん。……らぎくん! 如月くん⁈」

「おおっ」


 新城の体のことなどいろんなことを考えていたら、僕はどうやら姫乃さんに何回も声をかけられてたらしい。


「なんでそんな無視するの⁈」


 やばいやばい、と思い、「ごめん」と言いながら振り返る。


「………………」


 声が出なかった。

 新城の体を見たときとは違う。


 ——なんだ……? その水着は。


 水色のリーフ柄のビキニからは美しさが見え、ワンショルという形からは色気が出ている。 


 露出高すぎないか……?

 ビキニということもあり、谷間や、股のラインがくっきりと見える。 


 最近の女子高校生はこういうのを着るのか?

 それに露出高すぎではないか……?


「い……いい顔……! ど、どう? 似合ってる……?」


 最初なんて言っているか分からなかったが、似合っているか訊いてきたようだ。


 僕はしっかり答えないと、と思い、しっかりと意識を保つよう気を高めた。

 心の中で深呼吸をし、僕は口を開いた。


「とても似合ってるよ」


 でも、露出しすぎとは言わずに、そこで言葉をつぐんだ。


「良かったぁ……」


 安堵するように言った。


「って、ごめんね。困らせちゃった?」

「いや、別に」


 僕の反応を見たからいいか、と思っているのか、急にいつものお姉さん雰囲気

になる。


「結愛集合ー!!」


 そこで、さっきから天堂たちと遊んでいる井早坂さんがそう言った。

 僕は姫乃さんに見惚れている間に、みんなは移動していたようだ。


「が、ちょっと待ってー!」


 と、井早坂さんに伝え、僕の方を振り返る。


「ちょっと歩かない? 2人で」

 急なお誘いに一瞬困惑したが、僕は無言で頷いた。

 砂浜の中を2人で歩き始めた。


 そして姫乃さんの雰囲気が変わる。


 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ