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人生ゲーム

 人生ゲームとは、就職・結婚・出産・家の購入など様々なイベントを経て億万

長者を目指すゲームだ。

 となると、僕も誰かと結婚し、出産して家を買うなどそんなストーリーもある。 


 まあ全て現実ではなく、遊びの中だけど。


「おいおい、早速結愛と結婚だ」


 そして段々と進んでいき、天堂が姫乃さんと結婚することになった。

 結婚すると、またルーレットを引き、番号に応じてご祝儀のお金が貰える。


 すると天堂は1を当て、一番高いお金を貰えることになった。

 僕と井早坂さんが合計で1万を払う。


 こうやってお金で祝ってる気分になるからか、この2人なら将来結婚するんじゃないか、と考えてしまう。


 今のグループでは僕以外なら、子供を作って家を購入など普通にありえそうなので、このゲームにはリアルさが少し感じられた。


 なんかついていけない……。


「おい、お前の番だぞ」


 そんなことを考えていると、天堂に声をかけられ、我に返る。


「ああ」


 僕は結婚とかではなく、スカウトされるなどそういうところに当たれと思いながらルーレットを回す。


 が——

 ルーレットの数の5マスを進めていくと、まさかの井早坂さんと結婚すること

になってしまった。


 金はいらん。平和に行きたい……。


「あたし結婚じゃん! いえーい!」


 井早坂さんはそう盛り上がる中、僕はありえないという現実に突き詰められていた。


 しかしそう思っている顔を井早坂さんに見られてしまう。


「なによその顔ー。あたしと結婚できんのよ」 


 胸に手を当て、いいじゃないと言いたげな口調で言ってくる。


「でもこんな結婚なんて……」

「今は遊びだぞ? そう深く考えるな。楽しめればいいんだよ。楽しめ楽しめ」


 天堂は僕の肩にトントンと叩きそう言ってくる。

 まあ確かに今は遊びだ。


 考えれば考える程、自分の魅力の無さに気付かされる。

 なので、僕はとにかく楽しむことだけを考えた。


「私たちが3000払うのね」


 僕は結婚祝いという形でお金を貰う。


 天堂が「一生祝うことねーな」と冗談で僕に言いながらも、僕たちは人生ゲームを続けた。


 そして僕はツチノコを発見して5万円貰ったり、天堂はバナナの皮に転んで、生命保険として4万円払ったりなど、たくさん盛り上がった。


 その中でも、僕自身その盛り上がりについて行けている気がすると感じながらも楽しんだ。


「オレたち子供できたぜ」

「男の子だね」


 ふふっと笑う姫乃さんに「ガキだ生まれんだろーな」と言う天堂。

 別れたカップルだとは思えない光景に新鮮さを感じた。


 そして井早坂さんの番で、


「あたしたちも子供できたわよ! 女の子だって!」


 今度は僕たちの子供ができ、女の子が生まれる設定になる。


 そしてまた天堂が「時雨の子供とか勝ち組だな。まあオレたちには負けるけど」と言い、それに対し「あたしたちの方が絶対いいよねー」と僕に対して言ってくる井早坂さんがいた。


「どっちも同じくらいじゃない」


 僕がそう言うと「おお、中々言うな」そうハハッと笑いながら言う。


 今の発言も僕は盛り上げるというか、天堂がツッコっんでくるだろうと思って言った発言だ。


 段々と、天堂たちのペースに合わせることができるようになった僕は体感でも実感し、遊びが楽しいと感じるようになった。


 僕はボケ担当とか、揶揄(からか)われるキャラがお似合いなのかもしれない。


 そうして天堂たちは後先考えずに家を購入して家に旗を立てたり、姫乃さんは五月病にかかりお金を払っやりと、様々なイベントに巡り合わせ、最後を迎えた。


「僕の勝ち!」


 そう、最後は僕の圧勝だった。

 あと2マス進めばゴール。


 今のところ誰よりもお金を持っている状況。

 しかし——


「1が出たら如月くん負けだよ」


 そう、1を当ててしまったら甥っ子の借金を引き継いでお金が全部無くなる。

 そんな状況に「1出ろー」と連呼する天堂。


 それに従って、今度は姫乃さんや井早坂さんまでそう連呼し始める。

 僕はゾクゾクしながらルーレットを回した。


 回した瞬間に野生の勘なのか、1が出る気がした。

 そして——


「はい1出た! じゃああたしの勝ちー!」


 1が出てしまい、僕のお金が全て飛んでいった。


「マジ……」


 僕は勝てると思っていたゲームに負けてそう漏らす。


「今回は時雨の勝ちだな。よしじゃあ、負けのお前は時雨に夜ご飯奢りだな」

「夜ご飯?」


 謎の単語にそう訊き返す。

 もしかして夜ご飯はどこかに食べに行ったりするのか?

 そう思っていると、天堂が違和感に気づいたのか、姫乃さんに視線を向けた。


「あれ、今日夜ご飯食いに行くって言ってたよな?」

「如月くんごめん……」


 姫乃さんが「言い忘れてた」と言って、恐る恐る「……お金持ってる……?と訊いてきた。


 どうやら今日は夜ご飯をどこかに食べに行く予定だったらしい。

 姫乃さんは僕に言うのを忘れていたのだろう。


 まあ僕の財布の中身は意外と入っているので、行くことはできる。


「持ってるよ」

「良かった……」

「結愛戦犯ー」

「結局行けたからいいじゃーん


 姫乃さんの言い忘れに対して井早坂さんがそう姫乃さんに言った。


 結局お金を持っていたからいいのでは、と思ったがこれも会話を盛り上げる1つのツッコミだ。


「じゃあ行くか」


 僕たちは夕焼けの中外に出て、食べ放題の店へと向かった。


 僕の財布の中身を見て、奢るお金があると知った天堂が食べ放題にしたのだ。クソッ。


 そう思いながらも顔は正直だったのか、僕の顔は笑っていたらしい。

 そして僕の顔を見ていた姫乃さんと井早坂さんはまたこう言った。

「「その顔いいね」」

 体重が上がってきた。

 脂肪が筋肉に変わったからだろう。


 筋肉は脂肪より1.2倍重いと言われている。

 見た目も少し変わってきてる気がする。


 腹筋も見えてきたし、上腕二頭筋の筋肉も力を入れれば前より浮き出る。

 そんなことを朝鏡越しで見てから、僕はまた朝早く起き、筋トレを始めた。


「はぁ……。ふぅ……」 


 呼吸に合わせ、力を入れる。


 段々と重りも上がってきているし、この狭い部屋に筋トレ道具を用意して良かった。


 そうして僕は朝の習慣になった筋トレを終え、朝風呂に入る。

 正直、この朝風呂が気持ちいい。


 朝に汗を流して、それからお風呂。

 朝のルーティーンのようだが、僕にとってこれは1つの快感でもあった。


 そしてお風呂から上がった僕は、前だったら放置していた髪をドライヤーで乾かし、髪を整える。


 まだセットは上手くいかないのでしないが、そのうちできるようになりたいと

は思っている。


「カッコよく見せたいし……」


 そう呟きながら僕はあることを考えていた。

 その内容は朝姫乃さんから連絡が来ていたが、まだ返していない。


 朝の筋トレも終わったし、後は学校に行く準備をするだけなので、落ちついたかなと思い携帯を開いた。


 姫乃さんのトークをすぐに開き返信する。

 その姫乃さんのメッセージの内容は——


『遠足楽しみだね!』


 僕は薄っすら暗くなった画面から僕の顔が見え、画ニヤニヤしていることに気づく。


「よし! 学校行こ!」

 僕は立ち上がり、学校に向かった。

 いつもは今日も学校か、と思っていた学校が嘘みたいだ。


 そうして僕たち1年生の遠足が始まる——


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