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「俺たちと一緒にいれば変われるんじゃね?」

 髪を切ってから約1ヶ半近く。僕の環境がその間に変わった。

 姫乃さんと話すようになり、それと井早坂さんとも僕と話すようになった。


 だが天堂はというと、前とは変わっていない。

 イケメンで学年でもリーダー的存在感。それに交友関係の広さ。


 なにもかも完璧な天堂だが、僕みたいな人とはあまり話したくないらしい。

 どうせ、お前と話してると俺の評判が悪くなる、とでも思っているのだろう。


 しかしちょくちょく隣の席から話しかけてくれるので、案外優しいところはあるのかなとも思い始めた。


 こうして僕の環境は変わっているのだが、目立っている姫乃さんや井早坂さんと話しているからか——他クラスまで僕のことが広まっていった。


 しかしその噂を聞いたのは、井早坂さんからだ。


瑠翔るいとのことめちゃくちゃ訊かれるんだけど」


 クラスの中に1人でいると、授業の間の休み時間に僕のところへそう言いながら近づいてきた。


「僕に言われても」

「そこは驚くところでしょ。そんな正論みたいなこと言わないでよ。つまんない奴〜」


 僕の机の上に乗っかってきた。

 座るところがないにしても、机に座るのはどうかと。


 まあそんなこと言われなくても内心では驚いている。

 嬉しい気持ちはあるが、嫌な気持ちもある。


 僕は1年から少し性格が変わって内気なタイプになってしまったので、周りとの交友関係は広くない方がいい。


 男子ならまだしも、いろんな女子と話すとなると、僕の身が持たない。

 僕が黙っていると、井早坂さんが僕に対して思っていることを口にした。


「瑠翔はもっとイケイケした方がいいと思うけどなぁ。慎弥(しんや)みたいなのがいい例じゃん? イキってるけどカッコいいみたいな?」

「おい、聞こえてんぞ」

「あ、ごめ」


 隣に座っている天堂がツッコミをしてきた。

 まあイケイケなんて僕にできるわけないが。


 それにこんな僕がイケイケでオラオラな感じを出したらキモすぎて笑われる。

 僕の前の髪型を知っている人ならもっと笑われるだろう。


「僕はそんなキャラじゃない」

「えー。ほんとつまんなーい。髪の毛変えたならキャラも変えなさいよ。いつま

でもそんなんじゃ前と変わんないわよ」


 謎理論をかましてくる。


 まあ確かに髪を切って自分も変われたらな、とは思っていたが、そんなことは僕にはできなかった。


 こうしてさっきまでも井早坂さんが来てくれるまで1人でボーっとしていたし、自分から人に話しかけにいくこともできないでいる。


 そう言われて、心に響いたのか、僕も変わんないとダメなのかな、と思い始めた。


「確かに変わりたいけど……僕にはできない」

「んーどうしたら変われんのかな」


 顎に手を当て、思案する。

 人は前にも言っていたが、急に変われる人間はいない。


 人に優しくするんだ、と決めても最初は意識して変われるかもしれないが、ずっとは続けられない。


 かなりの時間が必要なのだ。

 そう、時間だ。


 そこで、盗み聞きをしていたのか、天堂の口から思ってもいなかった言葉が出てきた。


「俺たちと一緒にいれば変われるんじゃね? そのうちにノリとか分かってくるだろ」


 天堂らしくない僕に対しての言葉に、僕は口を開ける。


「それいいわね! 慎弥最高! いいわよね、瑠翔!」


 天堂の言葉に賛同しながら、僕の肩に手を乗っけて言ってくる。

 近い……。僕は引き気味になりながらも、考えた。


 即決はできない。

 まず、絶対に僕が1軍のグループに入ったら邪魔になる。


 そして、みんなから変な目で見られる。

 それに、僕が入ることでこのグループの空気が悪くなる。


 更に、姫乃さんにつまらない人間だとバレる。

 それにそれに……、


「はい、返事しないから承諾ってことよね! はい決まり〜。いえーい」


 僕の考えていることを無視して姫乃さんとハイタッチをかます。


「いや……勝手に決めないでくれよ……」


 流石にこのグループに入ってと考えていると、悪いことしか思い浮かばなかったので、入らないと伝えたい。


 僕にとってマイナスがほとんどじゃないか……。

 だが、そのマイナスを変えるチャンスと言えた。


「まあ、まずは明日カラオケでも行こうぜ。カラオケならゆっくりできるしいっぱい話せるだろ」


 天堂もまた僕の思っていることを無視して話を勧める。

 そして僕は天堂の言葉に反対できずに、明日を迎えてしまった。


 改めて、僕のいいところがないことを実感した1日だった。


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