一変
すぅーすぅー。
窓を開け、風に揺られる。
今は季節でいうと、夏なため、日中暑い。
A棟の今は使われていない教室に僕はいた。
5階にある、今はいらない机などが置かれている場所だ。
僕は放課後、この手紙を無視することなく、この手紙通りに従った。
こんなのは初めてなので、心臓がとにかく跳ねている。
今日は放課後の掃除当番ではなかった僕はすぐに向かい、手紙の主を待っていた。
そして待つこと数分。
廊下の足音がなる。
しかし、静かに歩こうとしているのか、音は小さい。
そして僕は窓を閉め、ドアに向き合う。
緊張しているのか、唇が少し震えているような気がする。
「落ち着けー……」
自分に落ち着かせるように声をかけた。
そうすると、自然に体も脱力し、緊張が溶けてくる。
そして———ドアが開いた。
「は……?」
喉の奥からそんな声が漏れる。
目の前にいる人物———
「よお」
———天堂だ。
「クラスでは随分とニヤニヤしてたな」
「……してない……」
思ってもいなかった人物にさっきまでの緊張はもう無くなっていた。
そして天堂が目の前にいることに少し疑問を持った。
あの手紙の文体は女子だったはずだ。
ていうことは、
「来ていいぞ」
僕の心を読んだかのように、廊下に向かって声出した。
すると、複数聞こえる足音。3、4つくらいはある。
そして教室に現れたのは、このクラスではない女子だった。
そこで、手紙の正体はこの女子たちが手紙を書いたということで納得した。
「なんでアタシたちが呼ばれんのさ」
「はぁめんどくさ」
見るからに派手な化粧の女子だ。
僕たちのクラスではない。
「何がしたい」
僕はこの意図が読めずにそう訊いた。
「まあそう警戒するな」
天堂は僕のところにきて、肩を叩く。
「少し喋ろう」
天堂にそう促され、端っこにあった椅子で輪になる。
僕もそれに座り、とりあえずは従うことにした。
人が増えたからか、息苦しく感じた。
そして女子たちには「もう帰っていい」と言って僕たち2人の空間になった。
***
「んで、俺がなんのためにこんなことをしたかって?」
「なんでこんなことを……」
「ただの遊びさ。最近髪を切ってから少し人気者になってきてるらしいしな」
いや、それは勘違いだ。
僕はまだ姫乃さんとしか話せていない。
しかし、天堂にとってはそこが良くなかったらしい。
「お前、もう結愛と喋るな」
声のトーンが1個下り、天堂が言った。
「……なんで?」
僕はそれが嫌だったのか、天堂に反抗的な態度をとってしまう。
「見てて痛い。お前みたいな陰キャが結愛に話すな」
いじめに近いことを言われる。
いや———これはいじめだ。
僕はそれをしっかりと感じ、身を縮めた。
こういうとき陰キャの僕にできることは、反抗せず受け入れることだ。
ただ言われることを受け流せば、なんとも思わなくなる。
そうだ、僕は調子に乗っていたのかもしれない。
姫乃さんに話しかけてもらうようになってから、カッコよくなりたいと思い、髪を切った。
そして少し女子からの目線が変わっただけで、天堂が言っているようにどこか調子に乗っていたのかもしれない。
やはり———僕みたいな人は1人端っこにいた方がいい。
それに———姫乃さんにも迷惑だ。
僕みたいな人と話していれば、姫乃さんの評価が下がる。
なので、僕は今の状況を終わらせるための言葉に出した。
「分かった……。もう姫乃さんとは話さない」
「それでいいんだ。俺も何もしたくないからな。大人しくしとけ」ここ天堂だけにする? 周りの人出て行かせる
そう言い、教室を出ていく。
僕は1人残された教室で、また髪を伸ばそうか悩んだ。