6:『老人ホームから日本を支配していこう作戦』、開始!
――暴力団ユズル組あらため、『お助け団ユズル組』の活動は学外にも及ぶ。
普段は学園内を掃除したり飽きたら三人でゲームしたりしてるんだが(※盾持さんもゲーマーらしい。ゲームキャラはイジメてこないからだとか。悲しい)、この日は愛理の提案で近くの老人ホームに来ていた。
まぁ理由はどうしようもないんだけどなー。
「いいかしら二人ともっ、今や日本は超高齢化社会よ! つまり、おじいちゃんやおばあちゃんたちを手下にすれば国家侵略計画が大きく前進するってわけよ!」
「史上最悪の敬老理由だな……」
「というわけで、今日は老人ホームのみなさまに手作りパンを振る舞いたいと思いま~す!」
ピンクのエプロンを纏いながら元気に拳を上げる愛理。そんな彼女に緑色のエプロンを身に付けた盾持さんが「わっ、わぁ~っ!」と精一杯に歓声を送った。可愛い。
ちなみに場所は老人ホーム内にある厨房である。
盾持さんに(国家侵略という目的を隠して)交渉を頼んだところ、スタッフさんが快くオッケーを出してくれたのだ。噛みやすくて飲み込みやすいようちゃんと工夫してくれれば問題ないとか。
流石は盾持さんだな、どっからどう見てもいい子だし。
なお、俺はめちゃくちゃ警戒された。解せぬ。
まぁそれはともかくクッキングタイムのスタートだ。
楽しそうに調理を始める二人を横目に、俺は自宅から持ってきたマイクッキングセットを並べ始める。
そして見るがいい、俺のパン作りテクニックをなぁ――ッ!
「あっ、ユズルすごいッ! 見えないくらいの速さで生地をこねてるッ!」
「ふはははははっ! 料理で大事なのはスピードだぁッ! 生地内の酵母が新鮮な内に一気にカタをつけてやるぜーッ!」
「い、一ノ瀬先輩がこれまで見たことないくらい活き活きとしていますっ! 先輩ってお料理得意だったんですか!?」
「当たり前だろうッ、友達いなくて時間が余りまくってたからなぁーッ!」
「「悲しいッ!」」
少女二人の尊敬と悲哀を受け止めながら俺は完璧な分量で水や調味料を足していく。
さぁ老人たちよ味わうがいい、俺の完璧の料理で昇天しろォオオオッ!
◆ ◇ ◆
そして、
「いやぁ~愛理ちゃんの作ったパンは美味いのぉ!」
「二葉ちゃんのパンも美味しいぞい!」
……不思議なことに、褒められまくっているのは彼女たちばっかだった。解せぬ!
いやまぁたしかに愛理のチョココロネと盾持さんのコッペパンは美味しかったよ?
でも少しくらい俺のを褒めてくれてもいいだろッ!
「あっ、このパンめっちゃうめぇ!? 一体だれが作って……え、あそこのガラの悪い兄ちゃん? えぇ……」
ってそこの老人ッ、俺のほうを見て微妙な顔をするなーーッ!?
みんなこんな感じで俺が作ったと知った瞬間に話しかけてもいいのか迷った雰囲気を出しやがる。
……ちなみに、完全に誰もが褒めてくれないというわけではない。一応、何人かからは大絶賛を受けたのだが、その老人たちというのが――、
「へへッ、こんなに美味いシャバのメシを食わせてくれるたぁ気が利くじゃねぇか若いの。オレが支配してた組に口利きしてやろうか?」
「おっとヤマさん待っておくんなせぇ、この若いのはぜひともウチの組に欲しいねぇ!」
って、なんで引退した元組長っぽい爺さんばっかに賞賛されるんだよーーーッ!?
こ、このままじゃマジでヤクザにされるッ! 愛理助けてー!
「まぁユズルったらっ、業界の大先輩たちに気に入られるなんて流石だわッ! 『老人ホームから日本を支配していこう作戦』、大成功ねっ!」
って大成功じゃねえよはっ倒すぞボケーッ!?
俺は厳つい老人たちにチヤホヤされながら、大きく溜め息を吐いたのだった……!
・マフィアの娘ゲット(一話)、事務所+愛人ゲット(三話)、暴力団のコネゲット(六話)
日本侵略RTAかな?
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