12:雨降って!!!!!
「ふぅー、暴れ回ったしすっきりしたっと」
俺は腕をぐりぐり回して筋肉をほぐした。
つい先ほどまで使っていた技は、一時的に身体能力を高める中国武術『内気功』だ。こいつも絡んでくる不良を撃退している内に覚えたものだった。
まぁ使ったあとは反動でグッタリするんだが……ってそれはともかく、
「よぉ先生、少しは反省したか?」
「あっ、あひぃっ……あひ……ッ!」
俺は地面に突き刺さった巨大な十字架から1センチのところで倒れている剣崎に声をかけた。
どうやらかなりビビってしまったらしく、顔を青くして半分気絶してるようだった。
そんな彼女は優しく抱き起して頬をペチペチする。
「おーい先生起きろー」
「ぅっ、あっ……はわわァッッ!? あっ、アナタは一ノ瀬ッ!?」
「おうそうだ。ご期待通りの『危険人物』っぷりだったろう、満足したか?」
そう問いかけると剣崎フィアは苦々しい表情を浮かべた。
「何が期待通りよ……意味わからん力で教会を滅茶苦茶にしてくれちゃって、こんなの私が流した噂以上にヤバいやつじゃない……っ!」
「そうか? ちょっと修行すれば誰でも出来るようになるだろたぶん」
「出来るかボケーーーッ!」
ガクガクと震えながら叫ぶ剣崎フィア。
この調子なら怪我もなさそうだ。流石の俺も人を殺めてとっ捕まるのは嫌だからなぁ。こんなクズのせいで青春を無駄にしたくはない。
俺は愛理や盾持さんが駆け寄ってくるのを背中に感じながら、銀髪の悪女に問いかける。
「それでどうだ、反省したか? また俺みたいに顔の怖い生徒が入学してきたら、利用してやろうって思えるか?」
「ッ……思えるわけないじゃない、こんなの……ッ! アンタみたいなヤバい奴に引っかかっても懲りないような馬鹿じゃないわよっ!」
「そりゃよかった。おまえはどうしようもないクズだが、人を安心させる才能は本物みたいだからな。これからは表面上だけでいいから、どうか真面目に働いてくれよ?」
そう言いながら彼女をそっと立たせる。
そしてさっさと帰ろうとすると、なぜか剣崎フィアは驚いたような表情を浮かべ、おずおずと口を開いた。
「えっ、ちょっ、待ちなさいよ……私にそんだけ説教垂れて、もう終わり? 殴ったり叩いたりしないの……?」
「しねーよ、そんなことしたらお前の流した噂通りの悪人になっちまう。それに教会ぶっ壊したしおまえのことションベンチビるくらい驚かせたし、まぁ許してやるよ」
「んなッ、ションベンなんてチビってないわよッ!?」
慌てて下腹部を抑える剣崎フィア。
いや、言葉のわりに少しだけしっとりしてるような……まぁいいや。そこは今度機会があったらいじってやろう。
あぁ最後に、これだけは伝えておこうかな。
「剣崎先生、ありがとうな」
「え……?」
「おまえが俺をボッチにしてくれたおかげで、寂しくゲーセンでプラプラしてたら愛理に出会うことが出来た。
おまえが俺の印象を悪くしてくれたおかげで、盾持さんをいじめる奴らを手早く追っ払うことが出来た。
おまえが俺を危険人物にしてくれたおかげで、風紀委員長の三嶋先輩と接点を持つことが出来た。
色々言いたいことはあるけど――仲間たちと出会わせてくれたことに関しては、本当に感謝しています」
そう言って彼女に頭を下げた。
そんな俺に対し、ポカンと口を開ける剣崎フィア。
そのまま何秒も彼女は固まり、やがて何かを言おうとしたところで――、
「シスターさんっ、ご無事ですかーーーッ!?」
教会の扉からたくさんの人たちが飛び込んできた。
どうやら近所の方々らしい。学園外でもかなりの人気を博していたらしく、みんな本気で心配した表情を浮かべていた。
……って、これやばくね!? 俺が教会をぶっ壊して半殺しにしかけたことを言われたら、マジで袋叩きに合うんじゃねえか!?
もちろんビデオカメラの存在があるからダメージは痛み分けになるわけだが、こんだけみんなに人気だったら「ビデオは捏造です!」の一言で押し切られる可能性もある。
や、やべぇどうしようやりすぎた……!
今さらながらそう恐怖した、その時。
「――みなさんっ、私は大丈夫ですよ! 屋根が老朽化して崩れてきたところを、こちらの一ノ瀬くんたちが助けてくれたんですっ!」
「「「お~~~~っ!」」」
「……えっ?」
剣崎先生の口から、思わぬ一言が飛び出した。
いきなりの言葉に「何言ってんだ」と言いそうになったが、それを遮るように彼女はギュッと抱きついてきて、人々に見せつけるように言い放つ。
「ありがとうございますっ、一ノ瀬くん! ――みなさん、この子は不良だと噂されていますが、本当はとってもいい子なんですっ! どうか彼に拍手を送ってあげてください!」
彼女の言葉に素直に従い、集まってきた人々は大歓声を上げてくれた。
これまで受けたことのない祝福の数々に俺はもう固まるしかない。
そうして愛理たちと共に戸惑う中、剣崎先生は俺の耳元に顔を寄せながら呟いた。
「……変な勘違いしないでよね。これは罪滅ぼしのためとかじゃなくて、『勘違いされていた不良を唯一理解してあげていた優しいお姉さんポジション』を得るためにやってることだから」
そう言ってツンと唇を尖らせるシスター服の大悪女。
なんつーか……素直じゃないなぁ、この人は。
そんな彼女のあまりにもわかりやすい態度に、俺は苦笑いを浮かべるのだった。
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