1:停学になりました。
――人間というのは容姿で人柄を判別するものだ。
それが俺、『学園一の不良』と呼ばれている一ノ瀬弓弦の持論だった。
実際は善良な一般市民のつもりなんだけどなぁ。むしろアニメやゲームが大好きな陰キャだったりするくらいだ。
だが鋭い目つきのせいで昔から怖がられ、『生意気な目つきだ』と絡んでくる不良をどうにか撃退している内に俺が不良と呼ばれるようになってしまった……。
そんな現状を変えるために勉強しまくり、不良のいなさそうな遠くのエリート学園に入ったのだが、そこでも俺は弾かれ者だ。
結果、高校2年生になっても友達は一人も出来ず、周囲から怯えた目で見られる日々を過ごしていた。
――そうしてボッチのまま夏を迎えようとしていたある日の休日、時間を潰そうと一人でゲーセンに入った時だ。
何やら奥のほうで数人の男たちが固まっていた。
なんだなんだと思い、こっそり近づいていくと……、
「――なによアンタたちっ、どっか行きなさいよ! 数人で取り囲むのがジャパニーズ流ナンパってわけ!? クズ馬鹿死ねーっ!」
「なっ、なんだとこの女ぁ!? ちょっと声かけたくらいで言い過ぎだろうが!」
……ハーフっぽい金髪のちっちゃい女の子が男たちを相手にギャーギャー喚いていた。
いや、小っちゃいって言っても身長が低いだけで年齢は十代半ばくらいだし、なのに一部分はとても大きいが……ってそれはともかく、かなり不味い状況だ。
女の子はかなり口が悪いらしく、「あっちいけアホー! アンタたちって本当に最低のクズねッ!」と口汚く罵って無駄に相手を刺激している。
あぁー、そんなこと言ってたら案の定……、
「さっきから好き放題言いやがって……この女ーッ!」
「ひっ!?」
ついに男の一人が拳を振り上げた!
その様子に怯え竦む金髪の少女。このままじゃ数秒後にはマジで暴力沙汰だ。
はぁーもう、しょうがねぇなぁ!
トラブルに巻き込まれるのはごめんだが、流石に殴られそうになっている女の子を放っておくわけにはいかない。
俺は無駄に磨いてしまった喧嘩の経験を活かし、男に対して回し蹴りを叩きこんだ!
「ってうぎゃーッ!?」
俺の足先は見事に彼の側面を捕らえ、勢いよく真横にぶっ飛んでいく。
最終的にゲーセンの機械に当たったことで、店中にドンッと大きな音が響き渡った。
って、しまったー!? やりすぎたー!
当然ながら店中の客や店員が注目することになり、俺はめちゃくちゃ焦った。
このままじゃ学園に騒ぎが知られて停学間違いなしだからだ。
そう焦る俺の気も知らず、ふっ飛ばした男の仲間たちが睨みつけてくる――!
「なっ、なんだテメェは……って顔こわッ!?」
「本職のヤクザか!?」
「『よくも俺の狙ってた女に手を出したな殺す』って顔に書いてありやがる!? くそっ、こうなったらやってやらぁーッ!」
いやいやいやヤクザじゃないから!?
別にそいつのこと狙ってないし殺すとか書いてないから!?
「「「死ねーッ!」」」
ってうわあ襲ってきた!?
頼むからもう逃がしてくれってッ!
俺は内心泣きそうな気分になりながら、戦いを最速で終わらせるために心臓・アゴ・鳩尾への急所三連打で全員を一瞬で気絶させたのだった。
ふ、ふぅー、なんとかなったなぁ。
よし、トラブルも(暴力で)解決したことだし逃げるとしよう! このままじゃマジで警察が来る!
そうして駆け出そうとした――その時、小さくて柔らかい手がギュッと俺の腕を掴んできた。
一体なんだと振り向くと、そこでは先ほど絡まれていたハーフなちっちゃい女の子が、俺のことをキラキラとした目で見つめていた……!
そして言い放つ。
「アナタッ、ジャパニーズヤクザねッ! なんてカッコいいのかしらーッ!」
「ってヤクザじゃねえよッ!?」
ゲーセン中に響き渡る俺の叫び。だが女の子はそれを気にせず「チャカとか持ってるの!?」「何組に入ってるの!?」と質問の連打を放ってきた。
……そして数十秒後、何やら日本大好きらしい彼女に引き止められたことで、近くを巡回していた警察が到着。
俺は見事に補導されることになり、停学処分を食らうことになってしまったのだった。クソがー!
◆ ◇ ◆
そして一か月後の停学明け、学園中の生徒たちからさらに怖がられながら教室に入ると……、
「――ダーリーンッ!」
「もがぁっ!?」
ちっちゃいのに一部大きな柔らかい何かが、いきなり俺に抱きついてきた!
何だと思い取り払うと、
「やぁんっ、酷いじゃないダーリン! ダーリンもこの学園の生徒だって知って、これは運命だーって思ってたのに!」
「お、おまえ、あの時の!?」
俺を間接的に停学させた金髪美少女だ……!
コイツのおかげで俺は警察から『キミ、ヤクザって呼ばれてたらしいけどホント?』と疑われる羽目になったっていうのに!
そんな俺の気も知らず、彼女は無駄に可愛い顔でウィンクを飛ばしてくる。
「アタシの名前は姫宮 愛理、アメリカからの留学生よ。これからよろしくねぇ、ダーリン?」
そう言って彼女は、多くの生徒が注目する中で俺にギューッと抱きついてくるのだった。
た、頼むからマジでやめてくれーーーーーー!?
↓最後に『ブックマーク』に広告下からの『ポイント評価』、お待ちしてます!