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38.最低最悪の再開

 シャアラが目覚めるより少し前、レオニスはリーゼとパラフェに天幕へと引きずり込まれていた。

 とはいってもそこまで抵抗したわけではない。むっつりフェミニストであるレオニスが華奢な女の子に対し抵抗など出来るわけはなかった。

 それに治療の為と言われれば、その好意は嬉しいし行為もやぶさかではない。

 何故かパラフェまで付いてきたのが少々気になったが、パラフェもリーゼに治療を受けたいのだろうと思って特に何も聞かなかった、のだが。



「待ってリーゼ、私がやる」



 レオニスはリーゼによって服を脱がされ仰向けに寝かされていた。

 そして何故か前回と違って自分も着ていたメイド服を床に落として下着姿になったリーゼが、レオニスの逞しい身体、その腰部に座ったその時、パラフェがおかしなことを言いだした。

 しかしリーゼは手と首で必死に否定をアピールしている。



「いえー、パラフェさまー、これはリーゼのお仕事ですのでー。取られては困りますー」



「私も、レオニスとエッチなことしたい」



 そこでレオニスはパラフェが大きな勘違いをしていることにレオニスは気付いた。

 パラフェは、レオニスとリーゼがこれから性的な行いに興じようとしていると、そんな大それた誤解をしているのだ。

 それは正さねばなるまいと、レオニスは口を挟む。



「パラフェ、言っておくが俺とリーゼはお前が想像しているようなことをしようとしているのでないぞ?」



「あーいえー、レオニスさまー、出来ればリーゼはレオニスさまに可愛がっていいただけたらと思っていたのですがー……」



「はい?」



 まさかお前が否定するのか、リーゼよ。ていうか可愛がるってなんだ、具体的に何をするんだ。



「ほら、やっぱりそう」



 パラフェの顔が少しムッとしたものになる。



「いや、しかし俺はそんな気などないぞ?」



「それは分かっておりますー。ですからこれはお願いなのでー、絶対というわけではないのですがー。実はリーゼは今、発情期なのですー」



 珍しく頬を染めながら言うリーゼに、レオニスはドキッとする。



「は、発情期?」



 それは犬とか猫とか、動物界隈の話ではないのか? 人間に発情期があるなんて、聞いたことがないぞ。



「リーゼはー、半分動物のようなものなのでそういう時期があるのですー。この時期はー、そのー、下腹部がとても疼いてしまってー……」




「リーゼは淫乱猫」



 ぼそっと言うパラフェに、今度はリーゼの顔が険しくなる。



「お言葉ですがー、パラフェさまには言われたくありませんー。毎晩契約を更新する為にー、家族と呼んでいる魔獣たちに身体を捧げていることはー、みんな知っていますよー?」



「それは、必要な儀式。あの子達が私の身体に精を注ぐことで、私たちの関係は成り立ってる。決して快楽を求めての行為じゃない」



「ですがー、事実として何度も達しておりますよねー?」



「それも、家族として心をつなげるために必要なこと。だから私はレオニスにも、私の中に精を注いでもらいたいと思ってる」



 過激すぎる魔族の貞操観念は、人族であるレオニスには理解出来そうになかったが、しかし魔族といえども目の前で愛らしい女子が自分の身体を求めてきていると思えば、それなりに反応してしまうのが男というものだ。



「お、落ち着け。人族にとってその行為はとても重要な意味を持つんだ。だからそう簡単に、俺はお前たちとそういうことを出来ない」



 さすがにレオニスの精神は屈強だった。いくら身体が反応しようとも、その心は揺らがない。レオニスの目を見つめそれを悟ったパラフェは、



「分かった」



 と頷いたのでレオニスは安堵の息を漏らしたのだが。



「じゃあ、レオニスをその気にさせる」



 そう言うとパラフェも来ていた服を脱ぎ捨てて下着姿になった。

 髪とお揃いのつもりなのか、ピンクの下着が愛らしさを際立たせる。幼い顔をしている癖に布を取り払ったそこには豊満な果実が実っていた。

 ちなみにリーゼの下着は清純色の白だが、その色は性的な場においてはむしろエロく感じるから不思議だった。

 と、下着の分析などしている場合ではない。



「え、ちょ、ちょっと!」



 レオニスの声は完全に無視され、話は進む。



「リーゼ、治療って、舐める?」



「えーと、そうですがー?」



「じゃあ、一緒にやる」



 リーゼとしてはレオニスの身体を一人で独占したい気持ちが勿論あるが、自分より幼く見えてもパラフェは魔天七星将だ。ただのメイド長であるリーゼの方が立場は格段に下であるし、それ以上の抵抗は罰則さえ与えられかねないので、リーゼは諦めることにした。


 かくして、下着姿の魔族の女子二人に挟まれたレオニスにとって、天国のような地獄の時間が始まる。




 * * * 




 右腕と左足に何かが這うような感覚がある。

 何か、などととぼけているが、本当はそれが何かは分かっている。右はパラフェの舌で、左はリーゼの舌だ。

 以前にもリーゼにこの施術を受けているから分かるが、これは決していやらしい行為などではない。

 身体の中に蓄積した疲労を、舌から魔力を注ぎ込むことで舐め溶かす魔術ということらしい。リーゼの言うところによれば猫が毛づくろいをするようなものだ、とのことだが、それは嘘っぽい気がする。

 ともあれリーゼがこの術を得意としているのは本当のようで、そして幸か不幸か、パラフェもその心得はあるらしい。

 まあ魔天七星将ともなれば、このくらいは容易いのかもしれないが。


 そう考えれば、もしかしたらエカレアも出来るのかもしれない、いや、彼女は魔術騎士団の団長なのだから確実に出来るだろう。少し想像する。あの『堅牢』を体現しているような騎士さまが一糸纏わぬ姿(妄想故の特別仕様です)で、レオニスの上に跨って身体を重ね、彼女の好物であるわたあめにそうするように、レオニスの身体を啄ばむ。

 それはとても淫靡な光景だ。今想像するべきではないと気付いたレオニスはすぐに頭を振って想像を散らした。

 まあエカレア本人の性格を考えれば、出来る出来ないに関わらずやりそうもないのは確かなので、また今度想像してみてもいいかもしれないとは思う。



 そんないつかのことよりも今、この時、現時点、問題が発生している。

 純粋に俺の身体を労わってくれているリーゼと違って、パラフェは完全に俺の身体を狙ってきている。

 そんなことをさせるわけにはいかない。彼女が魔族ならなおさらだ。妊娠しなければいいというわけでは決してない。

 だから、パラフェがこの時間何をしてこようと、俺は絶対に耐えてみせる。



 そんな鋼の決意を胸に、レオニスは女子二人に身体を完全に預けていた。



「ちゅ……ん、れろ……ちゅぱ」



 右肩に感じるパラフェの吐息が温かい。



「んぁ……ん、ちゅ、ちゅるる……」



 左足の甲に感じるリーゼの舌は、猫らしく少しのざらつきがあるが、それが逆に心地よい。

 客観的に見ればいやらしく見えてしまうのかもしれないが、実際に施術を受けてみれば確かにこれは癒されるのかもしれない。魔術を流されているというのもあるが、舌の感触がくすぐったくも温かく柔らかく、不思議な気持ち良さがある。

 いかん、このままでは眠ってしまいそうだ。



「レオニス、気持ちい?」



 不意に右耳に囁かれ、背筋がゾクッとする。

 それを悟られないように、レオニスは平静を装って答える。



「ああ、気持ちいいぞ」



「そう。良かった」



 ウィスパーなパラフェの声が脳を溶かしにくる。しかしそれでもレオニスは耐えなければならない。

 もし眠ってしまえばパラフェに何をされるか分かったものではないので、多少の刺激があった方がこちらとしてもありがたい。後はレオニスがおかしな気持ちになってしまわないように気を付ければいいだけの話だ。

 だがそれが難しいということをレオニスは忘れていた。



「……っ!」



 息を漏らしてしまう。

 急に耳を舐められ、その感覚の鋭さに驚いてしまったのだ。



 ぴちゃぴちゃとした水音と、パラフェの熱い吐息とが同時に耳の中に入ってきて、理性が揺さぶられる。

 何故だか念入りに耳に舌を這わせてくるパラフェに同調してか、リーゼの舌も上の方へと上がってくる。

 脇腹、胸、鎖骨、首筋を順に舐められる。

 目を閉じているせいか嗅覚も研ぎ澄まされ、何か甘い匂いと、メスの香りの混合臭がした。


 やがてリーゼの舌も耳へと辿り着き、右耳をパラフェに、左耳をリーゼに嫐られ漏れ出そうになる声を堪える。

 声を出してしまったら、負けだと思った。

 いくら二人の下着姿の女子に両側の耳をしゃぶり尽くされようとも、更に付け入られるわけにはいかなかった。



 ここで感じるがままに身をよじらせ喘いでしまっては、パラフェの思うつぼだ。イニシアチブを取られ、なし崩し的に俺はこの少女に食われてしまう。それはとても魅力的な事態ではあるが、しかしここで自分の欲望に屈してしまっては、俺の宿願は志半ばで終わる。それは絶対に嫌だ、

 もう耳がふやけてしまいそうなほどに、リーゼとパラフェの唾液に塗れてしまっている。それは確かに気持ちよく、脳に近いせいか頭の中もリフレッシュされている気はするが、同時にやはり性的な意味も心のどこかで燻っている。

 それを明確にしてしまったら終わりだ。



 そうは思うが、しかしレオニスは庶民の男子なのだ。

 未だ勇者ではなく、健康的で健全な男性だ。

 いくら律する心があろうとも、身体はどんどんその感度を増していく。



 はぁ……くっ、あぁっ!



 声に出せないものを心の中で処理する。

 それがよりレオニスを苦しめていた。



 ま、まずい! リーゼの体温が、パラフェの吐息が、喘ぎが、水音が。



「ふふ、レオニス、苦しそう。もっと、気持ちよくなって」



「レオニスさまー……リーゼは、リーゼはもうダメです……レオニスさまが、欲しいです……」



 囁きが、レオニスの心の中の城を攻め落とそうとしている。

 水攻めでもあり兵糧攻めでもあって火攻めでもある。レオニスの心に築かれた堅牢な城は早くも瓦解する寸前だ。



 く、くそ! ここまでなのか……。



 ついにレオニスが白旗を上げそうになったその時。

 天幕の入り口が開き誰かが入ってきた。



「おい、何をしているのだ貴様らは!」



 その場で下着姿の誰もがハッとする。そこにはここに居るはずのないはずの人が居た。

 三人に稲妻を落としたのは、空色の騎士――――エカレアだった。



 

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