ロックンロール小説
♪The♪
♪Beat&Sugar♪
第1章
僕の名前は音高僕......。
風変わりな名前でしょ。
名付け親は音高樹理亜婆ちゃんです。
僕の亡くなった祖母の樹理亜婆ちゃんが枕元で、消え入りそうな声で囁いた...
樹理亜婆ちゃん
「私がまだ18歳だった頃...ロンドンの地下鉄通路でリヴァプール出身の若くてハンサムなシンガーがギターで、ロックを歌っていたのよ...とってもハスキーで痺れるソングヴォイスだったの。8歳の僕ちゃんには難しいかしら...」
僕
「よく分かんないけど...。僕な大きくなったらロンドンに行ってあげるよ!」
樹理亜婆ちゃん
「あら嬉しいこと言ってくれるのね。じぁ~、そこの引き出しの奥にあるペンダント持っていって!それが婆ちゃんだと思って一緒に連れて行っておくれ...」
引き出しの奥から取り出したペンダントは、
ブラチナのチェーンと小さなオープン型24金ペンダントトップだった。
僕はペンダントトップの下にあった、
カセットテープが眼に入った...。
樹理亜婆ちゃんが、
ペンダントネックレスを
細い細い手で僕の首に手を
回してつけてくれた......。
その2日後に...。
樹理亜婆ちゃんは天国に逝った。
通夜も終わって、
樹理亜婆ちゃんの部屋に行き
引き出しを開ける。
カセットテープを取り出すと...。
そこには♪The Beat&Sugar♪
と書かれていた。
♪The♪
♪Beat&Sugar♪
第2章
18歳になった僕は...。
少しずつ貯めていた貯金を解約して、
南回りのルートでヒースロー空港に降り立った。
右も左も分からなかったが……。
ずっと樹理亜婆ちゃんからクィーンズイングリッシュを叩き込まれていたので、会話に困ることはなかった!
そして...。
ロンドン郊外のBrixton地区にある、
ミスタージョージ爺さんの2階の小さな部屋に居を構えた。
ジョージ爺さんは、どうやら樹理亜婆ちゃんの古くからの友人のようで、僕の手紙を読んで心良く受け入れてくれた。
二階の一人部屋で持参してきた樹理亜婆ちゃんの♪The Beat&Sugar♪を聴いてみると...。
ハスキーで痺れるソングヴォイスと、
シャウトするキダーが流れる!
そのソングヴォイスは、
まるで僕の憧れの
ジョンレノンのようだった!
しかもビートルズ時代の、
ジョンのヴォーカルソングばかりだった!
僕は太陽が東から昇るまで、
聴きいっていた...!
そして樹理亜婆ちゃんの、
若い頃を想い出していた。
知らず知らずに涙が頬を伝わってきた。
♪The♪
♪Beat&Sugar♪
第3章
次の日......
ハードなジェットラグと睡眠不足で、
ベッドから起き上がったのが西に夕陽が沈む頃だった!
フラフラになってリビングに降りて行くと、
アンクルジョージ爺さんが暖炉の前のカウチから声をかけてきた。
アンクルジョージ爺さん
「ヘイ!ボーイ!今からフルムーンパブに連れて行ってあげよう!」
僕
「満月の館ですね...。
お供させていただきます!」
アンクルジョージ爺さん
「ボーイのジュリア婆ちゃんが大好きだったパブなんだぜ...」
僕
「そうだったんですか...」
アンクルジョージ爺さん
「そうだボーイ!ギター持って行こう!」
僕のギターケースに愛用の
1962年製J-160Eギブソンがある。
生前の樹理亜婆ちゃんから受け継いだ
形見分けのギターだった。
二人でフルムーンパブに向かう...
するとアンクルジョージ爺さんが、
突然詠い出した。
Mr. moon lightを!
アンクルジョージ爺さんの声も、
ハスキーだった。
夜空には、ぽっかりと大きな大きな満月が出ていた......。
そんなアンクルジョージ爺さんの詩声と共に、フルムーンパブのドアの前にやって来た。
店内に入るとフルムーン関連のグッズや書籍が飾られていた。僕をくぎ付けしたのは、壁に飾られていたジョンレノンの後ろ姿で、大きなお月様を見上げいるポスターだった。
テーブル席に座ると、アンクルジョージ爺さんはギネスビールをワンパイントオーダーして、僕にはフルムーンパブ名物のフレッシュレモネードをオーダーした。
アンクルジョージ爺さん
「やぁ!ボーイ!ようこそジュリアが愛した街に!」
僕
「樹理亜婆ちゃんが住んだ街なんですね」
アンクルジョージ爺さん
「あぁ...このパブにも毎日通ってたもんだ」
アンクルジョージ爺さんは、壁のポスターに向かってギネスビールのグラスを掲げて一気に呑み干した......。
アンクルジョージ爺さん
「なぁ!ボーイ!明日からチューブの地下鉄通路でストリートデビューしちまいな!俺が遠い昔に無くしちまった魂を、ボーイが受け継ぐんだぜ!」
僕はジョージ爺さんと同じように、壁のポスターに向かってレモネードグラスを掲げて一気に呑み干した......。
♪The♪
♪Beat&Sugar♪
第4章
その時......。
店内にジョンがメインヴォーカルの
恋する二人が聴こえてくる。
アンクルジョージ爺さん
「なぁボーイ!お前さんのギターで、ひとつ詠ってみたらどうだい!」
アンクルジョージ爺さんからギターケースを渡された僕の脳裏に樹理亜婆ちゃんの声が...……。
樹理亜婆ちゃん
「僕ちゃん...。行っておいで」
そのひと押しで、
僕のギターを抱えて小さなフルムーンのステージに歩き出す。
僕
「Hello everyone!my name is BOKU.
,so play Beatles number ride on!」
1962年製J-160Eギブソンを弾き出すと
自然と僕はshoutしてくる。
Shoot me
Shoot me
Shoot me
Come togetherを詠い出すと
極東のジパングの少年から…。
まさかのクィーンズイングリッシュが。
フルムーンパブのスタッフや客が
ざわつき始める......。
Shoot me
Shoot me
Shoot me
最初のShoot meで...!
僕を見つめる視線を感じた...。
その方向に眼をやると。
一人の栗色ヘアーの女の子が...!
Shoot meのリズムに合わせて
僕に指鉄砲の銃口を向けてきた!