3 日本史のスーパースター。みんな僕の臣下です。
世界連邦帝国皇帝、田中俊介。
友達五人を、大阪大宮殿の一室に集めました。
この世界をどうするか。
会議が始まりました。
権力者は、腹心の部下を持つ。そして、天下を取ったあとは、その部下たちを高い地位につける。
全知全能の神様。そして、とりあえずは世界連邦帝国皇帝として、僕は、世界をどのように作り上げるか。折角なので自分の好きなように、もう少しきめ細かく作り上げたい。
僕ひとりの構想では限界もある。いや、本当は限界などないはずなので、どうにでもしたらよいのだが、神様の初心者。若葉マークの神様として、人間時代の個性はしっかりと保ったまま、この新しい境遇に臨みたい。
で、友人を集めた。高校時代の友人、水沢と小野。水沢は幼なじみ。実は小学生の頃からの友人である。
彼の家、その父親の職業はかなり変わっている。
新興宗教の教祖なのだ。新興宗教といっても、信者は百人に満たない。
熱心な信者はさらに限られる。
生活はかなり苦しいようだ。
水沢は、家業を嫌がっている。
あとを継ぐ気はないようだ。
中学時代、家に遊びに行ったら、教祖であるその父親に、その教義を説明され、入信を勧められたことがある。
その教義は、既存の宗教における神は、もう手垢がついてしまっている。
一神教においては、自らの神が最高であり、他の宗教の神を排除する。
しかし、世界のどんな大宗教といえども、結局、この世界の唯一の宗教となることは出来なかった。即ち、相対的価値しか持ち得なかった宗教に過ぎない。
ゆえに既存の宗教のあらゆる神の上に位置する超神という存在を、想定する。
神を超える神。スーパーゴッド。
その想定により、人類の歴史の中で、絶対を保ちえず、相対的になってしまった神が、本来の意味を持つ。
訳が分からなかった。
僕は、宗教に特に詳しくはないけど、ユダヤ教や、イスラム教の信者には、邪教としてあっさり抹殺されてしまうだろうな、と思った。
説明が終わっても僕が怪訝な顔をしていたら、水沢の父は、それ以上はもう説明しなかった。
それからも、水沢の家には何度か行き、だいたいは、その父親に会ったが、もう二度とその教義を説明はしなかったし、入信を勧められることもなかった。
それは、有り難いことだったが、この淡白な態度では、信者は増えないだろう、ということは充分に察しがついた。
小野は趣味が一致することによって親しくなった。
彼もスポーツ観戦好き。僕と同様、スポーツ全般に興味を持っているが、特に野球と相撲が好き、というのも僕と同じ。
だが彼は、巨人ファンであり、現在の相撲界に君臨する、大横綱、大天鵬のファンである。
大学生になってからの友人、森、渡部、山川は、三人とも僕が所属している歴史研究会のメンバーだから、もちろん、三人とも歴史好き。
ただ、歴史の中でも最も好きなジャンルは微妙に異なる。
森は日本史。山川は世界史が好き。渡部は、ちょっと変わっているかもしれない。芸術史が好き、ということになるだろう。
僕は、大阪湾を望む大阪大宮殿の一室に、五人の友人を集めた。
時刻は夕刻。その部屋は西向きで全面ガラス張り。
沈む夕日。神々しい景色だ。
折角だからサービスしてあげよう。
「菜月」
僕は、皇后である菜月を呼んだ。
菜月が、天使の微笑をたたえながら、部屋に入ってきた。
菜月は、僕と一緒にいることが嬉しくてしょうがないのだ。
「今から、僕の友人たちと、この世界をどうしようか、会議をするんだ。
君も一緒にどうだい。」
「はい、俊介様。喜んで」
菜月は、芸能人としては、押しの強い性格ではない。実際の菜月もその通りだった。
トップアイドルというわけではなかったが、その可愛さはアイドルの中でも群を抜いていた。
「世界一可愛い女の子」
そんなキャッチフレーズだってあったのだ。
天使と見間違うような美少女の登場に、五人の友人が息を飲んだ。改めてその可愛らしさに感動しているのがよく分かる。
でも菜月は、僕のものなのだらね。
君たちは見るだけなのだよ。
ところで、この五人の友人、貴族にしてあげようかと思っている。
僕は皇帝だから、別に王様にしてあげてもいいのだが、王という称号は、僕の親戚のために取っておこうか、と考えている。
自分の死後の権力闘争を懸念している訳ではない。
この僕が望まない限り、権力闘争などおきない。
それに、やせても枯れても、僕は全知全能の神様なのだから、とりあえず、死ぬ気はない。
王様ではなく、貴族にしておこうというのは、単に趣味の問題だ。
でも僕の友人なのだから、貴族の中の最高位、公爵にしてあげようと思っている。
僕は友人の間では、高校時代も、大学生になってからもいじられキャラ、弟的役割だったと思う。
そのキャラで別に居心地が悪いとは思っていなかった。
でも今は。
彼ら五人は、元の世界のまま。その個性に変化はない。
ただ唯一異なっているのは、この僕を自然な感情で尊敬、いやそれ以上だな。崇拝している、ということだ。
擦れていないと評され、様々な遊びの経験に乏しかった僕に対して、色々教えてあげよう、という感じで、どちらかといえば、上から目線で接していた彼らが、今は、この僕のことを崇拝している。正直いってくすぐったい。
でもこの感覚にも慣れなきゃ
で、彼らは、この僕には不可能なことは何もない。望めば何だってできる。ということは、確りと理解している。
僕は彼らに尋ねた。
この世界をどうしたい。
先ずは、日本から始めようか。
この日本をどうする。
日本史おたくの森が答えた。
日本史のスーパースターをみんな、この世界に生まれ変わらせましょう。
そして彼らの個性に応じて、この世界における日本で、それぞれに役割を与えましょう。むろん、全員、偉大なる俊介陛下の臣下として。
森くん、グッドアイデア。素晴らしいね。
それ採用。
日本史におけるスーパースターか。
ということは、聖徳太子も、源頼朝も、義経も。足利尊氏も、織田信長も、豊臣秀吉も、徳川家康も、吉田松陰も、高杉晋作も、坂本龍馬も、西郷隆盛も、みんなこの僕の臣下になるのか。
それ、いいのか。
いいんだよな。僕は全知全能の神様、この世界の独裁者だものね。
居心地悪いけど。早く慣れなきゃ。独裁者に。
僕は、森と、誰にどんな役目を与えるかの相談を始めた。
「ところで森くん」
「はっ。何でございましょう。陛下」
「君のこと公爵にしてあげたいのだけど、何か名乗りたい称号あるかな」
「そうですね」
森くん、ちょっとシンキング。
「では、大日本公でお願いいたします」
「おっ。大きくでたね。OK 」




