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世界で一番偉い、僕  作者: 恵美乃海
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神様に願い事をひとつだけ叶えてあげようと言われたので、全知全能の神様になりました

小説って何をやってもいいんですよね。

作者がその物語の創造者。その物語の世界では、作者が神様なのですから。 

だったら、主人公のキャラクターを借りて、神様になってみましょう。

 僕の名前は、田中俊介。年齢は二十歳。

 

 歴史とスポーツ観戦が好き。野球は阪神タイガースの大ファン。年に何度かは甲子園球場に阪神戦を観に行っている。


 相撲は、大関、常陸海のファン。素質に恵まれているのに、ここ一番の相撲に弱く、なかなか横綱になれないのを残念に思っている。


 あと、アイドルの北原菜月のファン。世の中に彼女ほど可愛い女の子はいないと思っている。でも、コンサートに行くような行動力のあるファンではない。

 CD を買う。出された写真集はみんな買って、その可愛らしさに見惚れる。そんな大人しいファンだ。


 勉強のほうは、歴史だけは成績はいい。国語も悪くはない。でもそれだけ。あとはみんな苦手。で、今は、何とか二流とはいえるかな、という大阪の私立大学の学生。自宅から通っている。

 

 友達は、高校時代から親しくしている水沢と小野。

 大学に入ってから入ったサークル(歴史研究会、歴史おたくばっかり)で親しくなった、森、渡部、山川といったところ。


 彼女は、いない。今いない、というだけでなく、過去も。女の子と付き合ったことはない。

 

 自分では、そこそこのルックスなのではないか、と思っているのだが、他人からそう言われたことはない。

 客観的には、ごく平凡な外見といことになるのだろう。残念だが。

 

 失恋は何度もしている。中学時代も、高校時代も、大学生になってからも。

 想いを打ち明けた結果、ふられたこともあるし、何も言えないままだった女の子もいる。

 

 とにかく僕は、女の子とは上手く話せない。

彼女が、ほしい、と切実に思っているけど、どうやったら彼女ができるのかよく分からない。


 こうやってあらためて自分のことを語ってみると、平凡を絵に描いたような男なんだなと思う。

 

 歴史が好きで、戦争ばかり繰り返している人間について、何で平和に暮らせないのだろう、そんな世界になればいいのに。

と、これでもそんな真面目なことを願ったりしたこともあったのだけど、二十歳にもなれば、自分には、世界を変えるような才能も行動力もこれっぽっちもない、ということは、とことん思いしらされた。

 

 自分と、やがてできるであろう家族の幸せだけを考えて、これからの人生、平凡に生きていこう、そう思っていた。

 そうあの日までは。


 あの日、僕の目の前に現れたのは、神様だった。

何か特別なこと、劇的なドラマがあったわけではない。

 

 そう突然、神様が僕の前に現れたのだ。

 神様は何ともプロトタイプだだった。白髪で髭を生やしたお爺さん。


 深夜、自分の部屋で、とりとめのない妄想に耽っていた(この時は、北原菜月とデートしているところを想像していたかな)、僕の前に突然現れた。


 で、信じられないことに、色々なお話で、よく使われるあの台詞を僕に言ったのだ。

「ひとつだけ、願い事を叶えてあげよう」


 これ、もしかして、みんなにしているのですか、と訊いたら

「いいや、滅多にしない。気が向いた時だけ」

とのこと。


 何故、僕なんですか、と訊いたら

「たまたま、理由はない。」

とのこと。


 すると神様は、

「ノリ悪いね。はい、一分以内で答えてね。制限時間過ぎたら、他の人のところに行っちゃうよ」

と言う。

 そうか、では答えよう。一分もかからない。

 

 僕は空想好き、この場面も空想したことはあった。

 物語の世界では、このシチュエーション、色々な願い事が答えられていたけど、僕はその答えに不満を持っていた。こう答えたらいいじゃないか、と思っていた。

 

 本当に答えることが起きるなんて、もちろん、夢にも 思わなかったけど。


「では答えます。願い事は」

「うむ」


「全知全能の神様になりたいです」

「その答え、ナイス」

神様は、そう言って誉めてくれた。


 そういうわけで僕は全知全能の神様になってしまった。


 さて、どうしよう。


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