亜人の勇者
1000文字以内の短編小説です。
獣人族である彼は、人類が信仰する女神より「加護」を授かった。
当時人と馴染みの無かった彼は、悪い噂や話しか出てこない人類に懐疑的であった。そんな日々の中で、いきなり教会の人間達が彼の家に現れ、「女神よりご神託が降った。あなたは勇者だ」と言われた。まるで意味がわからず、戸惑っているうちに、周囲は教会の圧力に屈する他なく、彼は渋々人間の国へ連れていかれる。
つまらない毎日。面白みのない人々。
彼が人と関わり知ったのは、それだけだ。獣人達の様に、強さをアピールする喧嘩もなければ、酒や交流の場も無い。教会の外に出る事は禁じられていた為、教会外の人間を知る術もなく。全ての人間がつまらない奴ではないだろうが、そんな自分の目で見たわけじゃないのだ。本当のところは、わからないままだった。
教会で過ごし始めて数ヶ月。
教会に新たな勇者がやってきた。久しぶりの珍客に、彼は興味をそそられその勇者に話かける。
「おい、お前も連れてこられたクチか?」
「君も?」
幼い顔つきに、金髪と緑の瞳。純真さをその体で体現する少年であった。
「そうだ。なんか知らんが、勝手に勇者なんて呼ばれてな」
「僕もそうだった。勇者なんて柄じゃないのに、強引にね。この教会の人は普通じゃない!きっと何かある」
少年は決意を込めた瞳で、彼を見る。
「ねぇ、君も秘密を暴くために強力してくれないかな?」
少年は堂々と言い切った。勇者というご神託を受けながらも、反抗しようとする意志。その言葉は、今まで退屈で燻っていた彼の心を強く揺さぶる。
「いいぜ! 手伝ってやる! 俺も教会の人間は気にくわねぇ」
こうして亜人の勇者は、未来の友となる少年と出会ったのだ。