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雪の女王の王女  作者: 遅杉田盆栽
7/15

そのなな

 道の国には、四人の女王様がいました。



 雪の女王はがんこ者、いじっぱりなお姉さん


 芋の女王は優しくて、だけどちょっぴり寂しがり


 日差しの女王は怖い顔、ほんとはとってもあったかい


 そよ風の女王は末っ子で、いつもみんなに甘えてる



 妖精の女王様たちは、いつも仲良しで、とても素敵な四人の姉妹。



 そんな歌があるのね、有名人なのよ、それにしても、そよ風の女王様はどこに消えてしまったのかしら。


「……私の千里眼で見通せぬところとなると、後は、地下の魔王の城くらいしか」


 日差しの女王様は、とんでもないことを言いだしました。地下の魔王ですって、赤い目をした吸血鬼よ、切っても焼いても死なないの、とっても怖くて、強いそうなのよ。


 王様たちは頭を悩ませます、魔王のお城はとっても深い穴の底にあるのです、今まで、その穴に飲み込まれて、生きて帰った人はいないのです。……生きて帰った人がいないのに、どうしてそこに魔王がいると分かるのかしら? それも千里眼なの? でも、穴の中はからっぽよ、いま、みてきたもの。


「ど、どうしましょう、猫さん、いくら猫さんが強くても、魔王を倒すなんて、無理にきまってます」


「いや、なんで俺が行くことになってんだよ……まぁ、やれって言うなら倒すけどさ」


 猫さんは、自信ありげに、そうに言うのです。ううん、ちょっと自信過剰じゃないかしら、みずへびとは違うのよ、魔王はすごく強いのよ、知らないけど。


「それよりな、俺はな、ひとつ聞きたいと思ってたんだが」


 猫さんは、王様の目をじっと見つめて言うのです。


「……あんた、なんか隠してないか? 臭いんだよ」


「ね、猫さん! 失礼ですよ、もっと言葉遣いを! 」


 まったく、猫は無礼者よ、手討ちにござそうろうよ、いくら田舎者だからって、大人なんだからちゃんとしなさい。


 でも、なんだか王様は困っています。なにかしら、本当に隠しごとがあるのかしら。


「いいか、俺たちはこの、終わらぬ冬の調査に来たんだ、だが、今回の件は国がどうとか言ってる場合じゃないだろう、ほっておけば大陸全てが凍ってしまうかもしれないんだ……だから俺達は、あんた達になんでも協力もする、だからあんた達も、全ての情報を出すべきだ、違うか」


 猫さんは真剣です。普段は寝てばっかりでだらしないと桜は言ってたけど、今日は真面目な日なのかしら、雪が降りそうね……もう降ってるか。


「私たちは、何も隠してなど……」


 首をかしげながら、日差しの女王は答えました。イモ女も頷いてるわね、猫は何を言ってるのかしら、野生の勘なの?


「……そこの銀髪からは、人間の匂いがしないぞ、どっちかというと、女王様がたに、近いにおいだ」


 猫の言葉に、全員が王様を見ました。あ、王様が小さくなっちゃった、威厳もなにも無いわね、これはたぶんアレね、女性問題よ、ゴシップだわ。


「……王女は、わしの娘だ、わしと……雪の女王の」


 なんという事でしょう、王様には、ちゃんとした王妃様がいるというのに、王女様は、王様と雪の女王の娘だったのです。


 これは最低ね、雪の女王様は見たことないけど、きっと妹達と同じ美人さんなのよ、王様は我慢できずに手を付けてしまったのね、いやらしいわ……そういえば、ここに来てから一度も王妃様を見てないもの、さては家庭内別居なのね、当然よ。


「……国王様、私は初耳なのですが」


 日差しの女王様はかんかんです、どんどん目が怖くなっていきます。それも当然よね、王女様は十歳くらいかしら、今まで隠されていたのだものね、心の準備もできないわ、いきなりおばさんなんて呼ばれたら、ダメージはじんだいなのよ!


「……こども、できるんですね」


 イモ女の方は、なんか別の意味で目が怖いわ、アラサーどころか、アラ三百? アラ四百? 知らないけど、なんだか追い詰められた草食獣、いいえ、獲物を追い詰める肉食獣のするどい目つきよ。


 なんだか、しっちゃかめっちゃかになってきちゃった、王様は会議を明日にしようと言いだしたし、ご馳走をふるまってごまかす気なのよ、ずるい大人よ、こんなので騙されるのは桜くらいだわ、でも、どんなお料理が出るのかしら、楽しみね。


 日差しの女王様は王様を追いかけていったし、イモ女はなんだか猫にくっついてきたわ、桜が割り込んでにらみ合いがはじまるの。


「ううん、お前は、困ってるのか? お母さんに会えなくて寂しいのか? 」


 ケンケンうるさい二人を置いて、猫は王女様の前にしゃがみ込みました。綺麗な銀色の髪ね、王様は金髪だからお母さん似かしら、きっと雪の女王様も綺麗な銀髪なのね。


「さみしくない、いつも一緒、だから違う私を助けてあげて」


「また謎かけか、生意気なやつめ」


 とりあえず猫さんは、王女様を頭の上でくるくる回したの、ちょっと表情の少ない子だけど、なんだか楽しそう……なんだかほんとに楽しそうね、私もしたい!


 でも、食事の支度ができたと呼びに来たタヌキ大臣が悲鳴をあげたせいで、また兵隊さん達がやって来たの、しっちゃかめっちゃかね。


 王女様を抱えて逃げる猫は笑ってるの、なんだか悪者みたい。


 でも、楽しそう、楽しそうね。




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