めでたしめでたし
ようやくお城の中が落ち着いたのは、お日様が赤くなってからでした。まぁ当然よね、ろーぜきものが派手に暴れたんだもの、責任者のくびが飛ぶのよ。
あ、王様が責任者なのか。
「二人とも、こたびの一件、わしは、まことに感謝しておるのだ、ありがとう……いや、言葉には尽くせぬな」
「ありがとうございます」
秘密の地下通路を抜けた先で、二人は頭を下げました。慌ただしい出発になっちゃうけど、仕方ないわね、説明も難しいし。
「そんな、やめてください、私達は当然の事をしたまでなのですから、そうですよね、猫さん」
「あとで褒美は貰うけどな」
にやりと笑って猫さんは言うのです、すぐにパシンとよい音をさせて、桜が頭をはたきました。まったく、相変わらずね、もう慣れちゃったけど。
「うはは、よいよい、なんでも届けさせよう、褒美は望むままだ……いや、どうだ猫よ、このまま我が国の騎士にならぬか? お前ならば、王女と結婚しても構わぬぞ」
まぁ、なんて太っ腹なのかしら、褒美が道の国ぜんぶってことじゃない、玉の輿ね! ちがうか、そうか。
「お断りします! 」
「なんでお前が言うんだよ……まぁ、桜が泣くから遠慮しとくよ、王女様も元気でな」
猫がしゃがんで頭に手を乗せると、王女様は猫に抱きついて、ほっぺたにキスしました。あら、おませさんね、真っ赤な顔しちゃって。
「ごほうびです! 」
「……ははっ、まいった、こんな大層なもの貰ったら、もう金貨は受け取れないな」
猫は、とびきりの笑顔を見せる王女様の頭をぐりぐり撫でると、立ち上がって歩き始めます、見送る二人の姿が見えなくなるまで、桜は途中で何度も振り返って、その度に手を振りました。
「……なんだか、あっという間でしたね」
「そうだな、まぁ、簡単な仕事だったよ」
「精霊たちも、落ち着いてる……まるで、これがあるべき姿だったみたいに」
「そうか」
「……これから、どうなるんでしょうね」
「さぁな、ところで桜よ」
「はい? 」
「春になったら結婚しようか」
「はい、よろこんで……ほがっ!?」
あはは、桜が固まっちゃった、なんだかんだ、落ち着くところに落ち着きそうね、うん、次の楽しみもできたことだし、久しぶりに充実してた。
じゃあ、私も、眠りにつく前に、最後の仕上げをしておきましょう。
空に溶けた四人の女王様は、混ざり合って散らばりました。
もう、ノックしなくても季節は巡ります、世界を作った神様の、最後の忘れ物も片付いたのです。
北に飛んだ雪の女王様は、山に降り積もって山エルフになりました、少しおててが長いのは、半分に分かれたときに、つなぎ方を間違えたから。
西に飛んだそよ風の女王様は、草原に舞って草エルフになりました、子供のような姿ですが、なにか自分で罰を与えたのかもしれません。
南に飛んだ日差しの女王様は、海に飛び込んで海エルフになりました、その一途な心で、最後まで、たったひとりを愛することでしょう。
そして東に飛んだ芋の女王様は、最初に一本の木を植えて、森エルフになりました、隣には、小さな黒エルフを連れています。
これで、やっと、世界は完成しました。
むかしむかしの物語。
王女様の夢の物語。
目が覚めたら、忘れてしまう物語。
だからまた、夢で会いましょう。
おやすみなさい。
本編もよろしくね。




