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雪の女王の王女  作者: 遅杉田盆栽
10/15

そのじゅー

 けっきょく、会議は中止になりました。とうぜんよね、猫はちょっと考え無しにすぎるんだもの、今夜はゆっくり休んで、また明日話し合うことになったのよ。


 猫と桜にはりっぱな客室が用意されてたの、最初は猫と桜に、同じ部屋が用意されていたのだけど、桜が真っ赤になって断ったから、お部屋は二つ用意されたわ。


 ばかね、せっかくのチャンスだったのに、桜はおぼこだから仕方ないけどね、でも、そんなことだから、あんな不幸な事件がおきてしまったのよ……ん? いや、誰も不幸にはなってないわね、むしろ楽しそうだったし、まぁいいか。


 そんなこんなで、お城での一夜は過ぎたのでした、翌朝、日が昇るとすぐにご飯を食べて、みなは昨日の部屋に集まります。なんだか、イモ女の座る位置が昨日より猫に近い気がするわね、桜がチラチラみてるけど、それよりも話し合いよ、ひと晩考えたんだから、なにか思いついたんでしょうね、もしなにも考えてないのなら、先生ゆるしませんよ。


「あれから、色々と考えてみたのですが……いかに魔王といえども、この城に忍び込んで誰にも気付かれずに、そよ風の女王をさらうのは、やはり難しいかとおもいます」


「うむ、わしもそう思う、もともと、我が精強なる騎士団の目を盗み、それほどの大ごとをこなせるとは、信じたくなかったのだ」


 日差しの女王様と、王様は、そよ風の女王様が祈りの塔にいると考えなおしたようです。


「手近なところから探した方がいいですしね、でも、そよ風の女王様が塔にいるとして、何故、呼ばれても出てこないのでしょう」


「あの、たいへんに失礼な話だとは思うのですが……」


 首をかしげる桜の反対側で、芋の女王様が口を開きました。なにかしら、ポンコツのくせに良いアイディアでもわいてきたのかしら。


「どうした、芋の女王よ、ここは遠慮するような場ではないぞ、何か思いついたなら言ってみよ」


 口ごもる芋の女王様でしたが、意を決したのでしょう、膝の上の手をキュッと握って、王様の目を見つめます。


「王様……まさかとは思いますが、妹にまで、その、手を付けた、などということは……その、世の中には、しっと、という感情もあるのです……私も、今朝になって思い至ったのですが……それは、とてもくるしいものなのです、もしも、そよ風の女王が、その、王様に対して、あの、そのような想いをもっていたとしたら……それが原因で、このような真似をしたのだというのなら……」


 王様は、少しまの抜けた顔で、ぽかんと口を開けました、バシンと強くテーブルを叩いたのは、日差しの女王様です。うわ、目が怖いわ、怒ってるわよ、王様だからって手加減はしてくれなさそうよ、昨日だって、赤くなるまでお尻を叩かれてたものね! 小さな頃からしょっちゅう怒られてたものね、日差しの女王様には頭が上がらないのよ……あ、これは内緒だったわね、ごめんね。


「ま、まて、わしは決してそのような、この宝冠にかけて誓ってもよい、そよ風の女王とは、そのような関係はないのだ」


 りっぱな王冠を左手で抑えながら、王様は、日差しの女王様に手を振るのです。なんだか必死ね、ちょっと怪しいわ。


「おいおい、まさか、雪の女王は、もうこの世に居ないとか言わないだろうな? 」


 猫の心配ももっともね、雪の女王様が死んじゃってたら、本当に冬が終わらなくなっちゃうもの、ちじょーのもつれは、にんじょうざたに発展してもおかしくないのよ、怖いのよ。


「いえ、それはありません、姉に何かあったのならば、私たちが感じ取れないはずはありません」


「ん? 分かるのか? それが」


「はい、おそらくは」


 猫は、今日も膝に抱えている、王女様の脇を抱えて持ち上げました。


「うーん……よし、なら、こいつが鍵になるな」


 二つの意味でな、なんて、猫は格好つけて言うのよ、まだまだ若いわね、こーゆーのがカッコイイ! とか思ってるのよ、私も言ってた気がするけど、それは気にしないよの、大人なんだから、都合の悪いことは忘れて生きるの。


 それから、しばらく打ち合わせをして、お昼ご飯を食べたら、全員で祈りの塔に行くことに決まりました。今はまた甘いお茶を飲みながら、ソファーでくつろいでるの、優雅なひとときね。


「……ねえ、わたしは、いらないの、わたしは構わなくていいから、未来のわたしをたすけてあげて」


「んー? また謎かけかー? そんなこと言って、また回して欲しいんだろう、分かってるんだからな」


 膝の上に王女様を抱えたまま、ソファーで猫はうつらうつらしてるのよ、なんだか、本当に猫みたいね。


「ちがう、んむー、ちがうくないけど、でも」


「まぁいいだろう、未来のお前を助けるのは、きっと未来の俺なんだからな、そっちは任せるさ……今の俺は好きにさせてもらいますぅ……とりあえずは、少し、眠いなぁ」


 猫は、しょぼしょぼと目を閉じてゆきます。あら、王女様も眠くなっちゃったのかしら? 猫にしがみついて、おねむの時間なのよ。


「わ、わたしも、少しだけ、眠いような気がしてきました、少しだけ、仮眠をとろうかな」


「桜さん、ここは、お邪魔せずに、そっとしておきましょう? なんだか微笑ましいですし、ね、私たちはあちらでお話しましょう」


 芋の女王様は、にっこり笑って立ち上がると、そっと桜の手を引きました。な、なにかしら、イモ女のくせになんだか余裕があるわ、桜より上のステージに立っているのね、これが大人の余裕かしら。


 でも、たしかに、眠ってる二人は兄妹みたいね、うーん、美女と野獣、いやいや、美少女と野良猫かしら。


 でも、これから忙しくなりそうだし、少しだけ休んでもいいわよね、そうよね、私も休もうかしら。


 長いお休みの前の、ほんのちょっとした、休憩なのよ。



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