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待っててクラちゃん!

一刻でも早く、すんごい獲物を持ってクラちゃんのもとに戻りたい。そんな気持ちとは裏腹に『すんごい獲物』はそう簡単には狩れなかった。1日1日を、ジリジリと焦りながらもこれまでの経験を最大限に活用し、理想の獲物を求めて走る。



1日めは、ショボい獲物しか手に入らなかった。

とりあえず狩った獲物を焚き火で焼いて、空腹を紛らわす。ああ、クラちゃんが作ってくれるご飯が既に恋しいよう。クラちゃん、変なヤツにプロポーズされたりしてないかなぁ……と不安な気持ちで眠る気にもなれなくて、朝方までフィールドを彷徨ってしまった。


2日めは、大型の魔獣が少ない昼間に仮眠をとって、薄暗くなってから積極的に動き出す。まあまあビッグネームの獲物を目にはしたけど、あえてアタシは狩らなかった。だって肉が旨くないんだもん、ライバルへの牽制にはなるかも知れないけど、あんなのクラちゃんに捧げるわけにはいかない。


そうして3日めの夜、肉もとっても美味しくて、とにかくでっかいオッドノーズを見つけた。重鈍で変わった鼻を持つこの獲物は、暴れだすと手がつけられないって言われるけど、アタシから見たら格下だ。充分に狩れる。狩ろうかと思ったけど、結局はヤツが根城に向かってゆったりと進むのを、木の上を渡りながら慎重に尾けて、根城の把握だけに止めておいた。


本当は、最初はこれくらいの獲物を狩るつもりだったんだけど……姿を見た途端に『これじゃない感』が湧き起こって、曲刀がどうしても動かなかったんだ。

なんだか、なんだか物足りない気がするんだもん。



不死鳥とか。

永年亀とか。

ドラゴンとか。



食材として滅多に見なくて、でも肉質は最高級、さらに食べれば寿命が伸びるとか言われてるみたいな、縁起がいいのがいいよね、やっぱり。だってプロポーズ用なんだもん。



確かこのフィールドにも、飛竜ならいた筈だよね。

でも、噂ではもっともっと高地の岩場に巣があった筈だったし、あの頃のアタシじゃ勝てないと踏んで、アタックしたことすらない。


今のアタシなら、勝てるんだろうか。





……いや、自分の力をMAX振り絞って勝ち取った獲物を捧げてこそ、クラちゃんをゲットする資格があるんじゃないの?






そこからのアタシは頑張った!


噂のあった岩場へと、全身のバネをフルに活かして駆け登っていく。とにかく上へ、上へ。一昼夜ほど駆けただろうか、周囲の雰囲気が急にさらに荒んだ物になった。生き物の気配がかすかになり、足元には風化しかけたものから新しそうなのまで、大きさも種類もまちまちな骨が散乱している。


近くに強大なモンスターの住み処がある、そう肌で感じるけど、残念な事に住み処の主の気配はなかった。そんなんが今近くにいれば尋常じゃない威圧感がある筈だし。



きっと、狩りに出ているんだ。



そう感じたアタシは、索敵の魔法を唱えてから、しばしの仮眠をとる事にした。アタシは魔法はあんまり得意じゃないから、索敵の魔法だって超強いモンスターが50m内に近づいたら反応するっていう大雑把な感じだけど、今ならそれでも充分だ。少し寝ないと動きが鈍る。どれくらいの力差があるか分からないし、少しだけでも勝てる可能性を増やしたい。


クラちゃん、ちゃんと『すんごい獲物』を持って、生きて帰るからね!楽しみに待っててね!




強大な獲物が手に入る予感に、アタシはワクワクしながら目を閉じた。







やった!やった!やった‼‼


ついにすんごい獲物をゲットした!



索敵の反応で飛び起きたアタシの目に、でっかくて黒々とした飛竜が映る。なんか……脚で掴んでる?おお!飛竜、グッジョブ!最高級の肉質と名高い、グレブルじゃないか!正式名称グレートブルホーン、牛の3倍くらいでっかい癖に防御魔法に特化した倒しにくいヤツだ。どっこも捨てるところがない、超優良食材!



飛竜、アンタを倒して、アンタとグレブルをダブルでクラちゃんに捧げるよ!ありがとう飛竜!



アタシに気付いた飛竜がグレブルを投げ落としたら、戦いの始まり。そして、気がつくと飛竜は地に落ち、息絶えていた。アタシは服も体もボロボロだったけど、肢体も欠けてないし、ちゃんと息だってしてる。アタシの勝ちだ。


戦いの中身なんか、何時だって覚えてないんだよね。

本能が体を動かして、戦いが終われば自分が返ってくる感じ。冒険者になった初めの頃、パーティーメンバーがアタシの戦い方に真っ青になってたから、多分かなり危ない戦い方なんだろうなぁ。まぁ、今回も勝てたし、問題無しだ!



右手に飛竜のしっぽ、左手にグレブルのしっぽを掴んで、残るひとつの飛び石を踏み割る。




さぁ、待っててクラちゃん、すぐに戻るから!

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