アタシ、頑張る!
やっぱり、やっぱり、クラちゃんが大好きだ‼‼
超結婚したい‼‼
そう思ったらもう、我慢できなかった。
クラちゃんがアタシに惚れちゃうくらいスッゴイ獲物をたっくさん狩って、ちゃんとカッコよくプロポーズに行くんだ!
酔っ払った勢いで、くだ巻く感じでやらかしたダメダメなプロポーズを忘れて貰うには、そんじょそこらの獲物じゃダメだ。
クラちゃんが思わずメロメロ~ってなって、しかも他の、クラちゃんを狙う不届き者達がひれ伏して「二度と色目を使いません」って誓いたくなるような、そんなすんごいインパクトのある獲物が欲しい。
走りながら、自分の懐を確認する。
このところクラちゃんに貢ぎたくて、美味しいお肉を持った高位モンスターをたっくさん狩ったし、ヤツらの魔石を売れば飛び石だって買える筈。
アタシはとにかくギルドに向かって全力で走った。
「おっちゃん!」
「おっ、来たな」
良かった!飛び石の話をしてくれたおっちゃんが今日のギルド受付担当みたい!これなら話が早いかも!
「おっちゃん、前に話してくれた飛び石が欲しいの!飛び石なら昔自分が行った場所に飛べるって、おっちゃん言ったよね?ねぇこれで足りる?飛び石が買えるかな⁉」
袋から出すのももどかしくって、魔石が沢山入った袋ごとおっちゃんに押し付ける。
「はあ?お前さん、あの美人な兄ちゃんにプロポーズしたんだろ?飛び石買ってる場合じゃねぇだろうに」
「なんで知ってるの⁉」
「冒険者がわんさかいる居酒屋で派手にやらかしゃあ、そりゃあ噂にもなる。ギルドは朝からその話題で持ち切りだ」
マジで……?穴があったら入りたい……。
あ、ホントだ。みんなニヤニヤしてこっち見てるし。
「ああ、俺ぁちゃあんとお前さんがあの兄ちゃんをおとすに賭けといたから、頑張ってくれよ?」
「へ?なんで賭け……?」
「あの兄ちゃん、あんなナリして浮いた噂ひとつなかったからなぁ、今まで皆、牽制しあってたんだろ?お前さんに取られるくらいならってライバル達が我も我もと群がるんじゃねぇか?ってな話になって盛り上がってなぁ。お前さんは大穴だからな、当たりゃあデカい。頼んだぞ」
くっ……面白がられている。しかもアタシは大穴なのか……アタシのプロポーズが発端なのに酷い。
「まだ冒険者達にしか噂は出回ってないみたいだが、2~3日もすりゃ街中に広がっちまうぞ。そうなりゃ名乗りをあげてくる敵も増えるかも知んねぇなぁ」
他人事みたいに言うおっちゃん。
「ちなみに一番人気は楽師のライラだ。負けんなよ?」
ライラって、あの泣きボクロが色っぽい、ハープ奏者のヒト?胸とお尻がバーン!で腰がキュッとしてて、いっつもいい匂いがするフェロモンダダ漏れっぽいあのヒトも、クラちゃん狙いなの?
強敵どころじゃないじゃんか……!
「ヤバいよぉそれならなおさら急がなくっちゃ!おっちゃん、早く!早く飛び石売ってよぉ!」
おっちゃんから飛び石をぶんどったアタシは、その場で石を叩き割る。
瞬間、光と共に風景が一変した。
目の前にはゴツゴツした岩肌。乾いた風が吹きすさび、血の匂いと土の匂いが鼻につく、荒んだ世界。
間違いなく、アタシが今よりちょっとだけ若い頃、腕を上げるために通いつめた魔物達の巣窟だ。
ここならきっと、クラちゃんもフェロモンダダ漏れライラさんもビックリな、すんごい獲物が獲れる筈。
クラちゃん、アタシ頑張るから‼‼