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赤毛のアコ  作者: 麦巻 橙
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第四話 再会と再開


あれから1ヶ月も経ってしまった。


一度、離れると日が経つにつれ、溝が深まるような気がした。


アコからは話しかけづらい。


食堂にヤナセはいて、毎日顔を合わせているのに…。


お婆様の監視も厳しくなり、送り迎えに

ルッソをよこし、自由は完全に奪われた形となった。


そんな中、学園にはヤナセとアコの有らぬ噂がひろがっていた。


この噂がお婆様の耳に入ったらヤナセは恐らく学園を追われるだろう。


アコは目立つ存在である。

暫く学園に姿を見なくなってから、噂が立つのも当然だ。


しかも、数名の生徒にヤナセといる所を目撃されているからよけいだ。


そして、それはお婆様が大袈裟に厳しい自由を奪う送迎も拍車をかけて噂は大きくなりかけていた。


「駆け落ちに失敗したんだってさ。」


「ふしだらね…。」


そんな視線に晒されるとよけいにヤナセと溝を作ってしまう。


食堂に行かなければ気まずい思いもしないのに、毎日顔を見なければ、本当にこのまま終わってしまう気がして…。


アコは噂や視線に耐えながら食堂を訪れた。


無表情で手早く配膳をしてくれたのはヤナセだった。


ランチトレーのスープ皿の下に小さな紙切れが挟んであった。


アコは何故か踊り出したい気持ちになって急いでテーブルに向かう。


紙切れをテーブルの下でひっそりと開け、カンニングでもするかのように読んだ。


[挨拶は省く。僕は今月末に食堂を去らなければならなくなった。まあ、理由は色々だ。その前に僕はやらなきゃいけない事がある。それはあの箱の謎を解く事。そしてペイトン先生の無念、そして君との関係だ。本日15時、図書室で待つ。]


「ヤナセ…。」


監視の目は学園の中までは及ばないが、他の生徒の目が痛いくらいだ。


しかし、アコはヤナセと話せたらそんな事は気にならないくらいだ。


15時まで長かった。


生徒達がバタバタと帰り始めたり、部活動に繰り出している中、アコは図書室に向かった。


あと少ししたら、ルッソが迎えに来てしまう。


アコが教室から出ようとすると、一人の生徒が声をかけてきた。


「ベルナリオル…。」


振り向くと、クラスでもチャラチャラしたお調子者のファルが立っていた。


「ごめん、急いでいるから。」


アコは冷たくあしらうと教室から立ち去ろうとした。


「ベルナリオル!待って!」


困り果てたような顔でアコを呼び止め、前に立ちはだかるファルをあくまで冷たくあしらう。


「何?忙しいの!わかる?」


「あの、食堂の人と何があったかなんて気にしない!俺は他の奴等とは違う!ベルナリオル!俺で力になれないかな?」


ファルはアコに力強くいう。


「ああ、ファル…。ごめん。本当に時間がないの。お願い、急いでいるから。」


「ベルナリオル。いや、アコ!俺は俺はね。あの、入学した時から君が…。ああ、覚えているかな?あの、君が…。」


シドロモドロになりながら話すファルにアコの苛立ちは加速した。


「わからない。そんな話し。思い出話しは他所でしてくれる?退いてよ!」


アコがファルを押し退けて走り出した。


「アイツの所にいくのか!アコ!行くな!」




[そういうのがイヤなんだよ!ファルのバカ野郎!]





アコが図書室についたのは15時を少し過ぎてからだった。


図書室の中には数名の生徒がいた。


アコをチラリと見たが特に噂をするわけでもなく、興味自体示さない。


ヤナセの姿を探すと、彼は窓際の椅子に座っていた。こちらに気づいていないかのように。


アコがヤナセ目指して歩きはじめると、本棚の陰から女生徒が立ちはだかる様に現れる。


「あら?ベルナリオルじゃない?」


如何にも意地悪をするために現れたこの女生徒はアンジェリカ・ミラー。


彼女は名家の御嬢様でプライドの高いアコの同級生だ。


アコよりも大人っぽく、美貌にも恵まれていて男子生徒の憧れの的でもあった。


アコには常に意地悪をしていた。

彼女の事が大嫌いなのである。


彼女はアコの祖母の学園に入学した事自体、気に食わなかった。


同級生、しかも自分より下に思っている生徒の家族が理事を勤める学園なんて、考えられなかった。


「何?どいてくれる?」


アコがキツく睨みつける。


「ああ、そうね。そこの彼氏の所に行くんでしょ?図書室でイチャイチャないでね。」


「言いたい事はそれだけ?ありもしない噂をチマチマ流して喜んでるガキは貴女ね?」


アンジェリカはアコの言葉に怒りを露にした。


「ちょっと!あんたね!」



アンジェリカが文句をアコに言いかけた時、ヤナセがアンジェリカの後ろに立つ。


「Before you point your fingers, make sure your hands are clean. by・Bob Marleyなんてね。」



[指をさして人を非難する前に、君のその手がよごれていないか確かめてくれ。]


Bob Marley


(ジャマイカのレゲエミュージシャン / 1945~1981)



アンジェリカはヤナセの涼しげな態度に腹を立てる。


「わけの解らない事を!あんたね?アコのお相手は?如何にもって感じかしら?」


ひきつった顔で笑うアンジェリカに、ヤナセは容赦しない。


「アンジー、君の沢山のお相手の中に僕も加えてくれないか?」


「う、うぅっ…。バカに付き合いきれないわ!覚えてなさいよ!」


アンジェリカは捨て台詞を吐き、その場を立ち去った。


ヤナセが呆れ顔で「遅刻だよ。アコ。」


アコは笑顔で答える「ごめん!」


ヤナセの話しはこうだった。


明日のこの時間にこの場所に、ルッソに奪われた箱を持ってくる事。


そんな簡単ではない。

そして、朝になっても箱が消えた事に気付かれず学校に登校し、ヤナセと待ち合わせ…。


ヤナセはリスクなんて考えてない。ただ

明日、ここに箱を持ってこい。遅れるなよ。ってそれだけ。





prodigiumの箱はお婆様の部屋ある。


箱を手に入れるには、お婆様が寝室に移動した後の23時過ぎの時間。

しかし、ルッソに見つかる可能性が高いので、ルッソが入浴する0時半が狙い目だが、お婆様は半過ぎに時々、御手洗いに目を覚ます。


その時、自室の前を通るから見つかる危険もある。


しかしながら、これを待っているとルッソが入浴から上がる。


ルッソは15分ほどしか入浴しない。

非常に早いのだ。


高齢のお婆様に入浴中に何かあってはいけないと早く済ませているらしい。


気の休まる暇すらないだろうに。




いつもの様にお婆様と静かな食事を二人では広すぎるテーブルですませた。


会話は何もなかった。


少し不機嫌なお婆様が空気を重苦しく感じさせた。


誰とも会話なく過ごす事もざらじゃないが、この雰囲気は嫌いだ。


さあ、少々危険な作戦開始だ!



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