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赤毛のアコ  作者: 麦巻 橙
2/6

第二話 謎の文字列

「あら?確か先生のお嬢様で…。アコちゃん…。」


後ろに立っていたのは大学で会ったミス・クレアだった。


クレアは鍵を取り出すとドアを開けた。


「どうぞ。ここじゃなんだし…。」




アコとヤナセは部屋に入った。


クレアがいそいそと小走りに動きながら


「いま、コーヒー入れるわね。」


そう言ってキッチンに消えた。


アコは不思議そうな顔をしていた。


「あの、お構い無く。すぐ、帰りますので…。」


クレアがキッチンから出てきた。手にはコーヒーを入れたカップ。


バロウズの入れたティーカップとは別の物だった。


「まあ、座って…。って、ここは元々は、先生の研究室だものね。それで、こんな夜にどうしたのかな?」


クレアは自分のカップのコーヒーに口をつけた。




「あの、バロウズさんは?」


アコが辺りを見回すようにして言う。


「居ないわ。彼は夜は自宅に帰るの。どうして?あの、安心して、(・・)は先生に何かするような人じゃない。」


クレアはバロウズを良く知るように言った。


「すみません、夜分に。ここに来たのは泊まる所がないんですよ僕逹。情けない。所持金も底をついてますし。」


ヤナセが無感情な顔で言う。


「ふふ…。彼を疑った子ね?彼が仮に悪い人ならなんで、ここへ?危険じゃない?それから、先生が何故、誰かに殺されたと?先生は病気だったのよ。それに彼も私も先生が亡くなられた時は発掘調査に加わっていて、葬儀すら来れなかったのよ。」


「疑ってすみません。ここへ来たのは、確信があったからです。まず、クレアさんが嘘を言っていないのと、バロウズ氏もシロだってね。」


「あの毒物も後から入れたものではない。クレアさんの疑惑も間違いだと、このコーヒーで更に確信しました。僕らに紅茶を入れなかったし。」


「それから、バロウズさんを僕が怒らせたのは挑発したんですよ。疑惑を消すためにね。試したわけです。」


ヤナセが眼鏡を上げる。


アコがびっくりしたようにヤナセを見る。


「ヤナセ、あんたなんて人なの!バロウズさんが父に何もしてないなら…。」


「じゃあ、アコ、キミに真実を確かめる術はあったのかい?僕は辻褄の会う可能性を考え、答えを出した。それだけだ。バロウズさんが我々にとって、敵じゃなきゃ、頭ひとつ下げれば暖かい場所で眠れるじゃないか。」


「頭ひとつって…。人を傷つけて、そんなものじゃすまないでしょ!ヤナセ。」


クレアが割って入ってきた。


「まあ、今日は二人とも疲れてるんだし、休んで。ね?ベッドは奥にあるわ。」


「クレアさん。彼を疑ってすみません。」


アコがそう言うとクレアは笑顔を見せて言う。


「それは彼に直接言ってあげて。それに私も疑われてたみたいだけど許してあげるわ♪」


「あ、すみません…。そう言えばクレアさん、何故ここへ?」


「ああ、私?いつも夜に来て、片付けをして彼の晩ごはんと朝の食事を用意するの。ほっておいたら何も食べないから。帰り道の途中だしね。」


「バロウズさん、幸せですね。」


「どうだか。」

二人はニッコリと笑った。





キッチンでヤナセが呼ぶ。


「やはりな。」

ヤナセは紅茶の茶筒を持ってアコに見せた。


「これに例の葉が混入していたよ。」


「警察に届ける?」

アコが怯えたように言う。


「アコ、キミはどう思う?僕は厄介な事は避けたいね。恐らく、僕らも長い取り調べになったり、クレアさんや間違いなくバロウズさんは容疑者になるだろうね。」


ヤナセは溜め息をついた。






次の朝、なかなか寝付けなかったアコはふらふらとベッドからはい出た。


テーブルには朝食が並び、そこには先に食事をするヤナセとクレア、バロウズがいた。


「おはよう。良く眠れた?」

クレアが優しく言う。


「あれ?みんな…。」

アコはまだ眠いと言わんばかりの顔だ。


トーストをかじりながらヤナセが

「酷い顔だな。早く食べて出掛けるぞ。」


「出掛けるって…。」





「出るぞアコ!おい!いい加減にしろ。」




あれ…。




「ヤナセ?あれ?夢?」


アコが目を覚ますと、まだ真っ暗だった。


「アコ、いいか?保身のため、話しを合わせたが、クレアもバロウズも敵かわからん。今は完全な潔白かどうか。今は話さないが、行動が不自然だしな。」


「僕はずっと寝たフリをしていたが、キミはマジで寝るなんてお気楽だな。警戒心が無さすぎる。」


アコは眠そうにベッドから起き上がる。


「じゃあ、なんのために来たのよ?」


「完全に信じるフリをしてスキをつくる。そのあと、ここを調べるためだ。」


「キミが寝てる間にクレアさんも帰って行ったが、それと同時に紅茶の茶筒が消えたよ。」


アコはびっくりしたように叫んだ。


「なんで?そんな…。クレアさんは…。」


ヤナセはアコの気持ちなど意に返さぬ様子で言う。


「それから、面白い物を見つけた。謎のメモとボランティア名簿だ。とにかく、バロウズかクレアが戻ってきたら不味い。ここを出よう。」


アコはゴミを払うように、頭の赤毛をバサバサと片手でやると、ひとつ溜め息をついて「疑い出したらキリがないけどでも、真実が知りたい。行こうヤナセ!」


ヤナセは相変わらずの無表情だが、口の端を少しだけ上げて答えた。






アコとヤナセは少し離れた公園のベンチに座って話していた。


「その文字列は何だろう?」


BaUqtReTeHgEsSnMdUutAgCmTl


ヤナセが見つけたメモを開いている二人。ヤナセは黙っている。


「ねえ、名簿見せて。これ、発掘調査のボランティアと研究員名簿だよね。バロウズさんの名前もある。」


「ヤナセ!もしかして!」


アコが急に声を上げた。


Baバロウズ

Uqtアンバー・クイーン・トーン

Reリサ・ブラームス

Teテッド・ブラームス

Hgハリー・ゴールディー

Esエドワードか江戸川…。

Snサンジェルマン…。

Mdマット・ダンフォード

Uut…。

Agアラン・グラハム

Cmクレア・マリエール

Tl武田勇雄


「て、なるんじゃない?」


「まてまて…。発想はおもしろい。

だが、Re、Te、Es、Snがおかしいだろ?他の法則に反する。

それからUutはなんだよ?それにイニシャルに当てはまらない人が15人もいる。」


アコは頭を掻いて不機嫌そうに溜め息をつく。


「これは元素記号だよ。おそらくね。何の法則かはわからないけどね。キミの親父さんの専門じゃないね。」


「名簿を一人ひとり当たって解決法を見つけるのもいいが、時間がかかり過ぎる。で、僕が思ったのは江戸川を捜す事、それから箱の行方を追うのがいいと思う。この元素記号はゆっくり考えよう。」


ヤナセはそう言うと眼鏡を上げる。


「クレアさんやバロウズさんは?」


「何らかの関わりがあるのは確か、どこかで必ずぶつかる。それまで泳いでいればいい。黒か白か確信がもてるだろう、いずれな。」


「なんだ。ヤナセの推理も憶測に過ぎないのね?」

アコは首を振るとニヤリとした。


「 僕をなんだと思ってるんだ。名探偵ってわけじゃない。ただの一般人だ。」






ヤナセ イチジョウ…。


日本人は名前、漢字で書くんだっけ?


ヤナセの字、忘れたな。


今更だけど彼、頭がキレるし頼りになる。私より年上で、何歳だっけか?


25才って言ってたかな?


出会ったのは父の葬儀だった。


私は悲しみと言うより、母や私を捨てたうえに、勝手な事をして病気の事も言わず、この世から居なくなった父を怒りを感じていた。


涙ひとつ出なかった。


私の知らない人逹が大勢いた。

誰と挨拶したかなんて忘れた。

色々と事務的な挨拶や言葉を交わした。


そんな中、ヤナセが一人泣いていた。


父には大学時代にお世話になったらしい。ヤナセは理由があって中退したらしいから、父とは半年足らずの付き合いだったとか。


そんなヤナセと少しだけ言葉を交わしただけ。


でも、他の誰よりも人間らしかった。


もっと話したかったが、何の約束も交わさず別れた。


その後、私の通う学園でヤナセは食堂の調理師していた。


そこで再会し、話した。


そして、色々と成り行きで今回の旅に出た。


「アコ?おい!アコ!」


ヤナセが声をかけていた事に気付かなかった。


少し不機嫌そうにこちらを見ている。


「あ、ああ、ごめん。考え事してた。]


にっこりと愛想笑いをするとヤナセは溜め息をついた。


「何を考えたか知らないが、一度、僕の家に行く。色々と用意が必要だ。30分ほどで帰れるからアコは待っていてくれ。」


「私も行くよ。」


「いや、僕のアパートもキミのお婆様か、

もしくはもっと危険な奴の手が回っていたら厄介だから。

噴水広場に30分後。いいな。」


そう言ってヤナセは足早にその場を去った。


「なんだよ!ヤナセの奴!女の子一人にするなんて‼」





ふとアコの背後に気配を感じる!


「お嬢様!やっと見つけましたよ!お婆様が心配なさっておりますぞ!」


振り向くとそこには、お婆様の執事の[ルッソ・テンプルトン・マードック]が立っていた。


「マードックさん!」


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