第八話 ~サバイバルバトル~
「もう一度言う。俺は死なないぞ?」
「だからなんなの?」
「退くなら今のうちだ」
「そうも、いかないんでね」
スリサンは怒涛の勢いでアルツを追い込む。アルツは必死に耐えながら機が熟すのを待つ。
「おっと、いけねぇやぁハマるとこだった」
すぐさまアルツの作戦を見破りショットガンを撃つ。直撃を食らうアルツ。ボロボロになり回復を待つが次々と撃たれて、回復速度が間に合わない。
「これ、対人間兵器用に開発された特殊なショットガンなんだよね。結構効くっしょ?」
「ぐっ」
かたやアルツは何も武器を持っていない。一気に逆転された形になっていまう。
「ほらほら、弾はお前を殺すだけの数は余裕であるよ。」
「……」
尚も撃ちまくるスリサン、それを必死に耐えるアルツ。このショットガンの銃声は街まで届いていた。
「なんだろうね花火かな?」
「こんな真昼に?」
政府の指示で立ち入り禁止区域になったこの山中には誰も近寄れない。
まさに人間兵器のサバイバルバトルである。アルツはよろめきながらジリジリと距離を縮める。
「無駄だってわかんないの?」
「俺は、俺は死ねない」
「はぁ? 死ぬんだってこれから」
アルツはキリコを思っていた。死ねない理由はそれだった。キリコを喜ばすそれが生きがいになっていた。だから、必死でショットガンを撃たれながらも距離を縮める。
「なんだよ、お前きめぇ~よ」
カチカチ……
「あれ、おかしいな弾がでねぇ」
「弾切れか?」
「どうやらな」
アルツは見逃さなかった。猛ダッシュで駆け寄りスリサンを殴り倒す。
「結局肉弾戦か」
「お前の負けだ。もう一度言う退け」
「やだね、俺だって意地がある」
「意地のために命を粗末にするな」
「は、何言ってんの?」
スリサンはアルツの目をみて怯える。蛇ににらまれたカエルとはまさにこのことだ。
「退けー」
その、大声に圧倒されスリサンはがむしゃらにアルツを殴る。涙さえ流していた。
「俺だって好きで戦ってるんじゃないんだよ。ただ、生きたいんだ」
「俺にぶつけろ怒りを、そして思いを」
「なんで、お前熱くなってんよ? 昔のお前はもっと冷たかったじゃん」
スリサンはその場に手を付き、何度も地面を殴る。
「勝負ありましたね?」
イーワンが来た。身構えるアルツ。
「あら、もうボロボロなのに戦うの?」
「……」
「イーワン助けにきてくれたのか?」
「いいえ、処分しにきました。あなたを」
「へ?」
そういうとおもむろにスリサンの顔にショットガンの銃口を付けて引き金を引く。言葉にできないぐらい悲惨な光景。
スリサンの胴体だけがピクピク動いていた。
「気持ち悪いですね。体も吹っ飛ばして何も無くしましょう」
「止めろ」
グイっとイーワンの手を掴み腹を膝蹴りするアルツ。
「スリサンは生きたいと言った。そんなやつを殺すなんて許さない」
「いいですね、その目昔のあなたですよ?」
「……」
人間兵器の目それは瞳を失った目。真っ白にギラリとした目。アルツは人間兵器へと逆戻りした。心は失い、ただ殺戮だけをする機械に変貌した。
「怖いですね。それこそあなたですよアルツさん」
更に言葉をつづけるイーワン。
「優しく養育されたあなたは人間らしさを取り戻して脱走した。あの、女だれでしたっけ?」
「それ以上言うな」
「あ~、そうだ石丸さんだ」
「言うなー」
アルツはイーワンの口を塞ぐと首をもぎ取った。
「ふふふ。いいですねその調子ですよ」
イーワンは首をもぎ取られて尚しゃべっている。完全なる機械それがイーワン。その思考回路は人間並であり、ザットの最高傑作でもある。
しかも、これは本当のイーワンではない。本当のイーワンはまだ起動されてない。アルツはその頭を握りつぶし、単身ザットに乗り込もうとした。
「アルツくん」
ピクリと足を止めて振り返るアルツ。しかしキリコの姿はない。
「あ~、やはりですね。あなたキリコとかいう女に相当人間らしさを取り戻されているみたいですね」
その、声の主はイーワン量産機。五体に囲まれていた。
「キリコをどうした?」
「室長が迎えにいってますよ」
この場からすぐにでも立ち去りrコの元へ急ぎたいアルツだったが五体のイーワン量産機に足止めされる。
「どけ、俺はあいつを守り行くんだ」
「そうはさせません」
量産機は一斉に向かってくる。
「キリコさん、ちょっと喫茶店でお話しませんか?」
「あ、あなたはアルツくんを追っている刑事さん」
「彼についてまたお話がございましてね」
「はい」
キリコは佐伯の車に乗せられてそのままザットの施設に収容された。
「話が違がいますけど?」
キリコは檻の鉄格子を揺らし大声で叫ぶ。