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No,2 ~脱走した危険物~  作者: イフジタダヒロ
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第六話 ~№3起動~

「本当に起動させていいのですか?」

「私が良いっていうからいいんだよ」

 佐伯は髪の毛を右手でくしゃくしゃと掻きながら、苛立ちを隠せず研究員を蹴り飛ばし押しのけ、ナンバー03の起動スイッチを押した。


 研究室は緊迫し怯えるものまでいた。佐伯はイーワンをナンバー03の戦闘訓練相手にするが、ナンバー03はクスクスと笑い、左手の小指で耳をかきながら佐伯に言い放つ。

「自分の可愛い娘が死んでもいいんすか?」


 佐伯は眼鏡をクイっと上げて冷淡に言葉を発する。

「問題ない」

「なるほど、自分の娘すら手ごまにしかおもわないすね?」

 ナンバー03は床を思いっきり踏みつけ振動を起こす。その床は窪みへこんで地割れした。


 イーワンはそれを見て息を飲み込んで、全身を奮い立たせた。

 恐怖である。

「おや~、イーワンは怖いらしいよ?」

 ナンバー03はニヤニヤとしながらイーワンに迫りくる。それを見ていた佐伯がイーワンの背中を蹴り命令する。

「やれ、お前は既に一度死んでいるんだ怖がることではない」

「はい」


 ナンバー03は戦う前に名前の事を言った。

「そうだ、おっさん俺はスリサンて名前は気に入らないから本名で呼んでくんない?」

須栗拓人(すぐりたくとか)?」

「そうそう、拓人でいいよ」

「わかったスリサン」


 この、佐伯の挑発にキレたスリサンは、イーワンを殴り飛ばし空中に浮かんだところにすかさず蹴りを入れた。そして最後は頭を掴み床に顔面を埋め込んだ。


「もう一度言い直して下さいよ?」

「すまない…ス・リ・サ・ン」

「はぁ?」

 スリサンは発狂し、佐伯に殴りかかろうとしたが、イーワンに足を掴まれ倒れこんだ。


「パパには指一本触れさせない」

「テメーは引っ込んでろ」

 スリサンはイーワンの手を踏みつけて、振り払おうとしたがイーワンは決して放そうとしない。そればかりか、スリサンの足を引っ張り倒した。


「パパは私が守る」

「ふざけんな。改造され性の奴隷にされてんだぞ?」

「それでも大切な家族」

 イーワンは唯一の家族である佐伯リュウを大切に思っていた。


  が、しかし佐伯はそうは思っていない。

「イーワン、泣けるね。そんなお前が大好きだよ」

 心にも無いことを言う佐伯。その真意は、イーワンの本気を見たかったのである。当然のごとくスリサンは、佐伯を殺しにかかるがイーワンがそれを阻止する。


「室長、イーワンの戦闘データが限界を超えたのに、スリサンと互角に戦っています。これは一体?」

「ふん、彼らも一応人間だからだよ」

「感情ですか?」

  滝沢は佐伯に恐る恐る訊く。


「その通りだよ。それこそが人間兵器の強み。完全なる機械では限界があるからね。」

「なるほど」

 滝沢はハンカチで額の汗を拭うと、静かに佐伯の背中に銃口を当てる。


「なんのつももりかね?」

「あなたのような恐ろしい人間は死んだほうがいい」

「ふむ、なかなか度胸があるじゃないか滝沢くん」


 滝沢が引き金を引こうとした時、それに気付いたイーワンがとっさに滝沢のほうに向かってくる。だが、スリサンに止められる。

「放せ」

「ふん、これは俺と滝沢さんの室長暗殺計画なんだよね。協力してくれたら自由になるってさ」

「そんなこと出来るわけない」


 バーンと銃声が研究室に響き渡る。そして佐伯が地面に倒れこむ。

「ははは、遂にやったぞ。これで俺は恐怖に怯える事がなくなる」


「パパァァーーー」

  イーワンの悲痛な叫び声が響き渡ったかと思うと、静かにイーワンは体を揺らした。


 ドクン……

 ドクン……

 ドクン……

 

「ウオレット」

 イーワンは大量のドル札をウォレットに入れ込み腹の窪みにはめ込む。そして凶暴化して、滝沢に突進する。


「やはりこうなったか。スリサン」

「あぁ?」

「いや、拓人くん」

「オーケー、100カラットダイヤモンドを用意してくれ」

 滝沢はスリサンに100カラットのライやモンドを投げ渡す。


 それを腹の窪みにセットすると、雄叫びをあげイーワンに近寄り背中を両手を組んだ拳で、おもいっきり振り落とす。


「がっ」

 地面に倒れこむイーワン。とどめの一発と顔面をめがけて蹴りこんだが、それはイーワンの残像である。イーワンは、スリサンの背後に回り込み頭を掴み壁めがけて、走りそのままスリサンの顔を壁にぶつける。


「ぐはっ」

 スリサンも相当なダメージを食らう。だが勝敗は燃費が早いイーワンが押されつつあった。


「もう、イーワンは限界か」

  勝利を確信した滝沢は下を見下ろした。佐伯の遺体がないことに気づく。


「あれ、室長の遺体が消えた?」

 気づくのが遅かった。


 滝沢は胸を貫かれていた。

「へ?」

「見てなかったの? 仕方ないわね普通の人間だものね」

  クスクスと笑うイーワン。

「あなたが引き金を引く瞬間、私はパパを他の場所へ移動させたのよ」


 イーワンが指をさす方向に佐伯は笑っていた。

 そしてスピーカーで滝沢に言い放つ。

「もっと有能な部下だと思っていたが失望したよ。私を暗殺しようだなんてね」


「忘れていたの? 私の能力、超高速を」


「ははは、そうだったとんだ誤算だった」

 滝沢は虫の息だ。

「そうだ、拓人くん……」

「ごめ~ん、ここの居心地がよくってさ~食わしてくれるわ、ゲームやりたい放題だし。内通したの俺なんだよ」

「遊ばれていたのはか俺は?」

「そういうこと、じゃあね」

 スリサンはとどめをさした。


「さて、本題に入ろう。アルツの探索及び殺害任務やってくれるかね?」

「おうよ」

 スリサンにとってはこの戦闘はウォーミングアップにすぎない。


「室長、スリサンの戦闘データです」

「ありがとう。石丸加代美(いしまるかよみ)くん、新たな私の部下しっかり頼むよ」

「はい」

 加代美はビッシっと敬礼しお辞儀をする。


 翌日の昼間……

 キリコとアルツは大型ショッピングモールにいた。

「アルツくん、はいアイス」

「……ありがとう」

「あたし、ちょっとお手洗いいってくるね」

「了解」


 その時大型スクリーンに緊急ニュースが飛び込んできた。

「次のニュースです。今日未明発表した国際指名手配犯の顔写真が政府機関より公開されました。この、の顔にピンときたら逃げるようにお願いするとのことです」


 アルツの周囲がざわめきはじめた。

「おい、さっきのアイツじゃね?」

「やめろよ、マジこえ~し」

「え、でも似てるぽい?」


「……どうやらここまでか」

 アルツは席を立ち逃亡する。そこへトイレからキリコが帰ってきて唖然とする。キリコは警察官たちに包囲された。


「動くな、凶悪犯と一緒にいた女だな。奴はどこへ行った?」

「え、私なにかしましたか?」

 とりあえず手を上げて無抵抗をアピールするキリコ。そこへ佐伯率いる者たちも駆けつける。

「あなたは重要参考人です。同行願います」


 アルツは物陰で様子を見ていた。下手に動くことは出来なかった。

「キリコ直ぐに助ける」

 そのまま姿をくらます。

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