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No,2 ~脱走した危険物~  作者: イフジタダヒロ
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第三話 ~尽くす者~

 朝になりキリコはドサっという音に気づき目を覚まし恐る恐る玄関のドアを開けると傷ついてボロボロのアルツがいることに気づいた。慌ててアルツを家の中に入れる。


「こんなに傷ついてどうしたのかしら? まるで誰かから暴行を受けた様子」

 キリコは取り合えず応急処置して明日病院へ連れていくことにした。


 朝になりキリコは驚く。あんなに傷付いていたのにアルツは平然としており回復していた。傷跡一つ残ってはいなかった。人間兵器の自然治癒力は通常の人間より遙かに高められているのである。


「あの~アルツくん大丈夫なの?」

「何がだ?」

 キリコはこれ以上聞いても無駄と知り質問はやめた。それよりも気になったのはどこに行っていたかだ。


「昨日どこに行ってたの?」

「これ」

 アルツは四つ葉のクローバーをキリコに差し出す。アルツはキリコの恩に報いるため山の中にクローバーを探しに行っていたのである。


「これ、あなたが探してきてくれたの?」

「……」

 アルツは静かにうなずく。そんなアルツに対しキリコは軽くアルツの頬を叩いた。

「私ね、そんな事されても嬉しくない。」

「何故だ?」


 キリコは勉強机の上に飾ってある一枚の写真を指さして涙を溢れさす。そしてかすれた声で語り出す。

「あれは私の大切な人だった、それは登山をしてる最中だったの。私が足を滑らせ転んで崖から落ちそうになったとき彼は私をかばって崖から転落して命を落としたのよ。彼の最後の言葉は人のために死ねるなら本望だって」

 両手で顔を覆い更に涙を流すキリコ。


「あの人は自分のためより人のために何かをする人だった。でも、そっれて自分を大切にしてないってことよね?」

「わからない」

「そうよね」

「だが、お前の気持ちが辛いのは理解できる」

「だから私のためじゃなく自分のために何かをしてよね。約束よ?」

 キリコは小指を指しだし指切りをさせて約束する。これでわかってもらえたかは微妙だが。


「ありがとう。これは宝物にするからね」

「俺、お前が笑うとなんか胸が締め付けられる」

 それは、はじめて芽生えた少年の恋心だ。徐々にではあるがアルツはキリコに心を開けてきている。


「じゃあ、私バイト行ってくるから今度はちゃんとお留守番しててね」

「任務了解」

 相変わらずアルツは敬礼をして見送る。


 その頃ザットの施設内ではイーワンに任務失敗の処分が行われていた。それは壮絶たるもの。言葉では言い表せないほどの暴行。


「お許しください」

 イーワンは涙を流し命乞いをする。佐伯は電気が走るムチでイーワンを叩く。

「フハハハ、人間兵器でも命乞いはするのか?」

 部下たちは恐ろしさのあまり目をそらす。そして最後にイーワンの胸をまさぐり一言。

「しかし良い美貌だ。人間兵器じゃなかったらお前を犯していたところだよ。まあ、改造前は楽しませてもらったけどね。フハハハ」

 監禁室に佐伯の笑い声が響く。

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