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ありきたりな神様との邂逅

 僕は今、神様と名乗るお爺さんとちょっと話をしている所だ。

なんだか神様が遊び心で現代的な感覚の若者を異世界に送ってみたら、という遊びをしているらしい。


 最初は僕だって嫌だって言っていたんだ。

別に学校で苛められているわけでもない。


 お父さんは出張で家に居ない事が多いけれど、ちゃんと帰ってきた時には僕と遊んでくれたり、宿題を一緒にやってくれたりする。。

お母さんだって気になるところは、「宿題やったの」コールをやろうと思った時にしてくるくらいで、普通に僕の面倒を見てくれる。


 友達だって少ないけど居る。

ちょっとカードゲームやったり、ヒーローがかっこいいよねって言い合って、一番集まりやすい僕の家でゲームの対戦をする仲だ。


 なんだって神様はこんな僕を選んだんだろうかと、疑問に思った。

だから、とにかく他の人にしてください、というと神様は何かを見透かしたように言った。


「お主ヒーローとか、好きじゃろ?」

「知ってるの神様」


 思わず反応してしまったの仕方のない事だろう。

僕はそんなマニアじゃないけど、自分でものすごく強いロボットとかヒーローを考えるのは好きだったのだ。

でも好きだからなんだっていうんだろう。

ロボットやヒーローが普通にいる世界に送ってくれるとでも言うんだろうか。


「そりゃ知っとるよ。わし神様じゃからね」

「むむむ。まぁそれを知られたところで、僕別に他の世界には行きたくない…」

「悪いのぅ少年。君の現世との縁はもう切らせてもらったんじゃ」

「ええ!?」

「こりゃわしの遊びじゃからのー。またひょいっと持ってくるのも面倒じゃろ」

「そんなひどいよ!僕の気持ちはどうなるのさ!」

「世界なんぞ理不尽なもんじゃぞ。そんなことよりもっと建設的な話をせん?」


 僕が声を荒げても神様は全然気にした様子じゃなくて。

なんとなく、もう僕の力じゃどうにもならないんだ、って感じがした。


「で、君さっき言ったみたいなの好きじゃろ」

「うん。好きだけどさ…」


 好きな物の話をしようって感じなのに、全然楽しくない。

友達と凄い速さで動けるのはそれだけで強い!とか、カッコイイのが一番!カッコイイのが強いんだ、とか話してるときは楽しいのに。

神様との会話にはそういう感じを受けない。


「ほれ、もう君は何も慮ることはないんじゃ。『理想の自分』の形を言うてごらん。その形で君を送ってあげよう」


 神様の囁く優しい言葉。

でもきっとそれはきっと怖い事を隠しているんだと思った。


「そ、それより神様。僕の現世との縁を切っちゃったなんて嘘でしょ?」

「本当じゃよ。なんなら君が居なくなった後の世界を見せちゃろうか」


 そういうと、神様は手を振ると、そこにテレビみたいな映像が現れた。

その中ではお父さんとお母さんが、子供が欲しいと話していて。

友達は皆僕なんて居なかったように普通に遊んでいて。

行方不明者が出たと報じるローカルニュースも無い。

僕の居ない事が普通の世界が映し出されていた。


 そして気がつけば僕は泣いていた。

お母さんの作る朝食に僕の分が無い。

名前が思い出せない。

たったそれだけの事がとても悲しくて辛くて、声を上げて泣いた。

その間、神様は何も言わなかった。


 どれくらい経っただろうか、いつの間にか僕は泣くのを止めていた。

そして神様に言ったんだ。


「僕の夢の話をするよ」


 僕は神様に話した。


 優しい時はアリもつぶさない、でも怒った時にはどんなモノでも潰せる手。


 足はどっしりと地面につくアイロン形の足は、どんなに速く走っても絶対に疲れない。


 背中には空を飛ぶ為の三角の機械、何式とか聞かれたけど、解らないからとにかくどんな所でも飛べる物にした。


 頭は口も眼もない中央に尖った顔で、尖った板みたいな、周囲のどんなものでも見通すセンサーホーンを後ろ向きに二本付けた。


 僕の体の表面は、滑らかな象牙色のつるりとした液体金属で、自由に硬さを変えられる。


 関節のある部分は丸く膨らんで、胴体はさかさまの三角形見たいになっていて、腰は細くてひょろっぽい。


 手足も二の腕や太ももは細いけど、手足の先のほうに行くに連れて膨らんでいる。


 この身体はどんなに傷ついても再生する。


 食べ物もいらない。


 胴体の中心にある、あらゆる感情から無限の力を産むハートドライブが収まっている。


 そして僕は好きな場所を好きな温度に設定できる、少なくともセンサーホーンで見える限り、限界は無い。


 最後に、僕の元の身長145cmよりちょっと大きくしてもらって、160cm。


 これが僕の夢の姿。

多分人にはお化けみたいに見える、それでも僕がなりたいと思った姿。

神様は僕の言葉を聞き終わると、頷いた。


「よかろ。ついでに言葉を発する機能と翻訳機能も付けてやろう。だが世界の常識は教えん。自分で見て、考えて、どうするか決めるんじゃよ」


 少し楽しそうに言う神様に僕は言った。


「神様。僕は一生神様を許さない」

「構わんよ。わしは許しを求めん。与えるだけじゃ」

「……じゃあ僕の、別の世界に送るだなんてバカな事も止めて!僕のわがままを許してよ!」

「与えるとは言った。じゃが無制限にとは言っとらん。さぁ、身体を作り変えるぞ少年よ。これで完全に帰れなくなる」


 神様の言葉と共に僕の意識が一瞬途切れる。

そして次の瞬間から胸の奥から溢れる力に、手を視ようとする。


 でも僕は腕を動かす必要が無かった、全てをセンサーホーンが視ていたから。

僕の身体は確かに僕の言ったとおりの、夢の身体に変わっていたんだ。

なのに、僕の望んだ身体のはずだけど、お父さんとお母さん、友達の皆の顔を思い出すと、ちっとも嬉しくなかった。


「さあ、それでは少年を異世界に送ろう」


 神様は、そういうと腕を持ち上げて、すぐに下ろした。

次の瞬間には、僕はもう見知らぬ森の中にいたんだ。

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