4話:ひじり終
――5月6日(水)
今日で長かったゴールデンウィークは終わり。
そして今日は瀬々羅木から誘われて街に出ている。
待ち合わせ場所は相変わらず同じだった。
今日は瀬々羅木のほうが遅かった。
「待ったかしら」
「ううん、今来たとこ」
「そう。今日は東雲燐、貴方に付き合ってほしい場所があるの」
彼女に連れて来られたの場所はバイキングだった。
「1000円で食べ放題なのよ」
彼女は昨日、胃が戻ったばかりだ。
今まで食さなかった分、空腹なのだろう。
僕は彼女に付き合った。
「今日は私が奢るわ」
彼女の提案に僕は戸惑った。
家は貧乏だと昨日僕に告げたのに。
断ろうと口を開いたが、彼女が話すほうが早かった。
「東雲燐には迷惑かけたから、ちょっとしたお礼よ」
そう言われると断れなくなった。
僕は素直に彼女のお礼を受け取った。
でも、2000円で済ます所は彼女らしいとも思った。
彼女の盆には山盛り一杯の食材が乗っていた。
「そんなに食えるのか?」
「ええ、余裕よ」
おそらく彼女は細身の割には大食いなのだろう。
僕は彼女の食欲に呆気に取られていた。
周りからすれば、僕たちは恋人同士に見えるのだろうか。
それともただの主従関係に見られているだろうか。
「東雲燐の盆に乗ってるそれ、美味しそうね。私にも頂戴」
彼女は有無も言わさず、僕の盆から食材を奪っていく。
やっぱり僕たちはただの主従関係のようだ。
でも、以前に比べて瀬々羅木は楽しそうに笑うようになった。
僕の中の彼女のイメージが、ミステリアスから純粋で家族思いの女の子に変わっていた。
どこにでもいる、普通の女子高校生。
そう思って彼女を見ると、ふいに目が合った。
笑いかけると、彼女は少し照れながら微笑んだ。
怪奇現象は、まだまだ続く。