最終話:焦げ付きの勝利と、愛の汚染
1. 聖女の光と焦げ付きの熱波
清純の舞踏会。マリアベル聖女が発動した「純粋の魅了魔法」は、大広間をミントの香りがする白い光で満たした。貴族たちは犬っコロのように、うっとりとした表情でマリアベルを見上げ、完全に意識を乗っ取られようとしていた。
その光の中、ルシアの「焦げ付きチャーム」が煤と油で黒く、しかし強く輝く!
「許しませんわ!偽りの純粋さで、人々の心を汚染するなんて!」
ルシアはチャームを握りしめ、「焦げ付き錬成」を最大出力で発動した!
ドゴォォォン!!(※音はしないが、心に響く焦げ付きの音)
ルシアの全身から、パイをオーブンで焼きすぎた時に出るような、強烈な「焦げ付きの熱波」と「香ばしい匂い」が解き放たれる!その熱は、マリアベルの純粋な光と激しく衝突した。
「なっ……!」
マリアベルの顔が驚愕に歪む。彼女の純粋すぎる魔法は、ルシアの極限まで硬化・濃縮された「汚れ」に触れた途端、急速に分解されていく。
貴族たちは、魅了魔法から一時的に解放され、「あれ、何でミントの匂いにこんなに感動してたんだっけ?」と我に返り、パニックに陥った。
2. 王子の覚醒、潔癖の終焉
混乱の中、ルシアの焦げ付きの熱波が、イグナス王子の立っている場所にまで到達した。
さらに、足元に置かれたセリオの「汚染フュージョン・トレイ」(焦げ付きの煤と黄金色の土)から、強烈な土と焦げ付きの匂いが、王子の鼻を直撃する。
「ぐあああああああ!!くっ、汚い!焦げている!土だ!」
イグナス王子の瞳から、ミントの光が完全に消え失せた!極度の潔癖症がもたらした究極のショックが、マリアベルの魅了魔法を打ち破ったのだ。
覚醒した王子は、ルシアに向かって叫んだ。
「ルシア!君の焦げ付きは、こんなにも……強烈な魔力の源だったというのか!?私は、純粋すぎる愚かさで、国宝級の才能を……汚いと断じて追放したのか!」
王子は悔恨の念に顔を歪ませ、その場に崩れ落ちた。
3. 聖女の敗北と、愛の誓い
マリアベルは絶望した。魅了魔法が破られた上、イグナス王子まで覚醒してしまった。
「許さない!汚い!汚い!汚い!その焦げ付きごと、消えてしまいなさい!」
哀れ、マリアベルは、自らの魔力の全てを込めた「純粋な水の刃」を生成し、ルシアに放った!
ルシアは胸に谷間の焦げ付きチャームを”ぎゅッ”と握りしめ、最後の力を込めた。
「焦げ付き錬成!」
水の刃は、ルシアに触れる直前、超高密度の黒い蒸気となってルシアの周囲を包み込む。それは、「焦げ付きの粒子が蒸気化した」ようなもので、水の刃は黒い蒸気に触れるごとに、「油と炭素の結晶」となって砕け散った。
そして、黒い蒸気が晴れると、マリアベルの純白のドレスは煤と油の点で汚され、その美しい顔もニセパイも焦げ臭い蒸気でくすみ、醜い本性を露わにした。
「こん、な……ぁぁ私が、汚された……!」
マリアベルは敗北し、その場にいたゼストの部下に連行された。
事件が終息した後、イグナス王子はルシアの前に跪いた。
「ルシア。私は、私の過剰な潔癖のせいで君を追放し、国を危機に陥れた。頼む。もう一度、私の婚約者として、この王国を焦げ付きの力で守ってほしい!」
王子は、「焦げ付き」という言葉を口にするたびに、無意識に「うっ」と小さく呻いていた。
ルシアは優しく微笑んだ。
「殿下。わたくしの『焦げ付き錬成』は、『焦げ付きへの愛』があってこそ発動します。そして、殿下は今も焦げ付きと土を、心から嫌悪していらっしゃる」
ルシアはセリオの前に立ち、彼の煤まみれの袖を掴んだ。セリオは”ひゃっ”と反射的に震えたが、逃げなかった。
「わたくしの『焦げ付きへの愛』を、汚染の恐怖を乗り越えて受け止めてくれたのは、この方だけです」
セリオはルシアの手を握り返した。彼の頬は汚染への恐怖で引きつっていたが、瞳には純粋な愛が宿っていた。
「ルシア。俺は、一生涯、君の焦げ付きと土の汚染から逃げずに、君という純粋な存在を守り抜く。だから……このまま、俺のそばにいてくれないか」
ルシアは満面の笑みで頷いた。
「はい!セリオさん!焦げ付きと土に満ちた、汚いけれど幸せな人生を、共に歩みましょう!」
こうして、元婚約者の後悔と、王国の危機を救った「焦げ付き令嬢」ルシアは、「土克服の潔癖騎士」セリオと共に、ミントの香りがしない、焦げ付きパンの香る故郷のカフェへと帰って行った。
その後、イグナス王子は「焦げ付きと土の恐怖」を克服するため、カフェ・オーブリエで皿洗いを修行することになったという。
(おわり)




