第二話 疑問
つい数時間前に出会った俺たちは、この町
ルズリアを歩いていた。
あれから彼女たちとは会話をしていない。
最初に口を開いたのは「セレン」と呼ばれていた人だった。
立ち止まりただ、
「ここ」
と言った。
視線の先には宿屋の看板が立っていた。
投げ捨てるようなその一言は俺との対話を期待するものではなく発せられたその口からすぐにかき消された。
「あるいてばっかですからね。今日はこの程度で終わりにしましょうか。」
「うん。」
この二人の話には自分からは入れなかった。たぶんずっと昔から二人で生きてきたんだろう。
眼には見えないとても強固で頑丈な絆。いや繋がりがそこにはあった。
「成瀬くん。私たちの用事お付き合いいただきありがとうございました。恐らくいろいろ話したいこともあるでしょう。」
ルーナさんの言葉が俺に投げかけられるまでには真上に上っていたはずの太陽は深いオレンジ色になり影は実際の数十倍になっていた。
俺たちは個室が二つある部屋に泊まることになった。
ドアを開けたとき、どこか安心感のある木のにおいとまるで絵にかいたような部屋が脳に伝わってきた。
この数時間で彼女後ろを歩くことになれていた俺は二人を追うようにして部屋に入った。
長く歩き疲れていたのだろう。彼女たちは深くかぶっていたフードを上げ、ローブをたたむと、部屋の隅に設置された書き物ができるこじんまりとした椅子に腰掛けた。
それが彼女たちの顔を初めて見た瞬間だった。
(きれいだ…)
唐突に、それでも当たり前に彼女たちを見てそう思ってしまった。
二人のその容姿は俺の眼を貫くように飛び込んできた。
二人とも凍てついていて鋭い目つきをしているが、ルーナさんにはどこか暖かみがあった。
ルーナさんは小さな机を取り囲むようにして設置されているソファーに腰かけた。
「座ってっください。いろいろ気になることがおありでしょうからお答えします。」
俺はルーナさんに従うようにして彼女と対になる席に座った。
改めて彼女の顔を直視した。
少し青みがかっている黒髪に凛とした顔、深く引き込まれるような青い瞳、それらが組み合わさり綺麗と言わざる負えない顔を作り上げていた。
そんなことを考えている反面、自分の頭の中ではふつふつと疑問がわき出ていた。
「ここは何処ですか?」
「ルズリアという町です。サーヴァメルナ王制国の統治範囲、北東に位置します。」
「さっき俺のこと、“召喚された”とか」
「はい。召喚された方は召喚されてから数日から数週間、特徴のある魔力を放ちます。先ほどもかすかに感じれたほどで、今は無意識に感じれるほど強くは放たれていませんね」
「召喚って?」
「その話をすると長くなりますが、端的に言えば奴隷商が奴隷を確保するために別の世界から呼んだ人。です。」
「奴隷商?」
「はい。奴隷商です。しかし運がいいのか悪いのか、あなたは目的外だったんですね」
「目的外?」
「はい。奴隷を召喚するのも様々な理由がありますから。あなたは不要だったわけです。詳しいことは分かりかねます。」
「あなたは」
「改めてもう一度。私はルーナ。“テクニカルロイド“です。」
これまで淡々と質問に答えてくれていたルーナさんの言葉に、一つの異物が紛れ込んできた。「テクニカルロイド」とは一体何だろうか。この世界特有の言葉のように感じ、無性に聞きたくなった。 本当は、あまり深入りするべきではない。彼女たちは赤の他人なのだから。しかし、そんな理性を打ち破るように、その疑問を口にしてしまった。
「テクニカルロイドって何ですか?」
「セレン生まれた瞬間から一緒についていく人工的に作られたパートナーです。」
彼女はさも普通のように語った。それと同時にこれまでの彼女たちから感じられた関係も合点がいった。
「今日はこの程度でよろしいでしょうか?」
「あまり多く会話しすぎても混乱するだけでしょうから。これからよろしくお願いします。蓮人様」
「….こちらこそよろしくお願いします!、、、、ルーナさん?」
「ルーナで結構です。寝室は右側の部屋で、私たちは左側の部屋で寝ます。おやすみなさいませ」
「はい、、。おやすみなさい、、、」
淡々と話された様々な内容は脳内に流れ込み新しい疑問でまた埋め尽くされた。
なぜ彼女たちは自分に優しくしてくれるのか、なぜこの世界にこれたのか、前の世界の自分はどうなったのか、疲れ切った体をゆっくりと起こし蓮人はゆっくりと自分の寝室のドアを開けた。
また明日聞こう。これからまだ先は長いのだから。
きっと。
こんにちは翡翠玄汐です!
投稿遅れて申し訳ありません。
忙しくあまり時間が取れないのでこれからも緩やかに投稿していきます。ぜひ気長に待っていただけると幸いです。




