番外編
お父様Side。
私はアース領の領主、ベルゼ・フォーカス・ア・カトリーナだ。突然だが、私には愛する4人の娘がいる。その中で末っ子のエリーゼは最近5歳になった。
正直、娘のエリーゼとはあまり会わないようにしている。なぜなら……。
「エリーゼ様!ナイフとフォークが音を立ててはダメです。」
「え〜いいじゃん、ちょっとぐらい!」
「だめです!」
私がエリーゼが好きすぎるからだ。今も溜まっている仕事をほったらかしてエリーゼを見に来ている。
あの夜空の黒を秘めた様な母親譲りのサラサラとした黒髪と夜に光る月を閉じ込めたような黄金色の瞳。
まさに月のような唯一無二の存在。しゃべると薔薇の蕾のような可愛い唇がパクパクしてとても可愛い。笑うと花が咲くように辺り一面が明るくなる。
「エリーゼ様!もうすぐ勉強の時間なので早く食べてください」
「え〜!もうちょっとまってよ……」
すねてるエリーゼかわいい。
「ごちそうさまでした!」
「お!食べましたね。えらいです」
「ふふーんっ」
喜んでるエリーゼ可愛い。
「じゃあ食器片付けてきますね……っうわ!」
バターンッとマリアが倒れた。
「あははははっマリアがこけてるー!」
「笑いすぎですよ!エリーゼ様!」
笑ってるエリーゼ可愛い。後光が差してる。
私はこの数秒で気づいてしまった。つまりエリーゼは可愛いの化身なんじゃないか。こんなに可愛い娘ならすぐに婚約者が見つかりそうだ。
……嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!どこの馬の骨かも分からんやつにエリーゼは渡さん!分かっても渡さん!エリーゼは一生私と暮らすんだ!い〜や〜だ!エリーゼいなくなるのい〜や〜だ!
バッシーン!
「痛ッ!……なにするのマリア、痛いんですけど!」
「旦那様がエリーゼ様を見過ぎているせいでエリーゼ様が……んーなんか視線感じない?気の所為?って言ってきます。めんどくさいんでやめてください」
「エリーゼの声はもっとかわいい。そんな声じゃない」
「すみませんねこんな声で」
マリアはSSランク暗殺者なだけあって気配を消すのが上手い。背後にたたれるまで気付かった。元々、マリアは気配を消して夜に紛れて相手を殺す戦い方をするので気配の消し方はこの屋敷で一番上手い。
……ちなみにこれは言い訳ではない。
「あとエリーゼ様見てる時の視線ねちっこくてキモいんでやめてください」
ガーーン……。
キモいって言われた……。メイドのマリアにキモいって言われたぁ。私のほうが立場上なのにぃ。……でもエリーゼに言われるよりかはいっか。
そうして私はエリーゼゲージを溜め終わったので仕事に戻ることにした。
2ヶ月後。
エリーゼが偶然、マリアとヘレン(マリアの母)が訓練を行ってる場面をみて中級の土を操る者を使って魔力切れで倒れたらしい。
5歳で中級魔法を使っちゃうなんてやっぱり家のエリーゼは天才だ。天才で天使ってもうそれ神じゃない?
僕は急いでエリーゼの部屋にマリアとヘレンと行って、入った瞬間誰よりも早くエリーゼよ真横に位置づけた。間近でみるエリーゼは可愛かったのでしゃべるのを忘れていたら途中ガーディンもきて少し喋ってマリアと共に部屋を出た。
「さ〜て地面動かすかぁ」
「なにを動かすって?」
きゃぁぁぁぁぁぁ!!喋っちゃった!エリーゼと喋っちゃった!かわいぃぃぃぃ!お口動いてるぅ!
……んん゙っ。可愛すぎてつい動揺したが、魔力切れを起こして倒れているのにさらに魔法を使うなんて言い出したら、最悪命に関わるかもしれない。
だから止めに入ったのだが緊張でなにを喋ったか覚えてなく、回復したエリーゼに魔法を教える約束をしたことだけ覚えている。
やった。これで合法的にエリーゼと話せる。そして最後に心配だからという大義名分のもと監視魔法をた〜くさんつけて部屋をでた。無茶をしてほしくないのでエリーゼに一応伝えて部屋を出た。
「やったぁ!エリーゼちゃんと喋っちゃった!うひょぉぉぉぉ!」
その時さっきつけた監視魔法を通じて聞こえるエリーゼの声。その声はとても小さかったが私には聞こえた。
「少しキモいよ」
キモいよ。キモいよ。キモいよ。キモいよ。私の中で何回も流れるエリーゼのキモイ。私が言われたくなかった言葉第2位……。ワンチャンエリーゼから嫌われたかも……?
「うぅ゙…」
考えただけで意識が……。
「お父様!大丈夫ですか?!」
そこへ僕の声が聞こえたらしいエリーゼが僕を心配して疲れ切って動かないはずの体を無理やり起こしてきてくれた。窓から放たれる光がエリーゼを照らす。
とても美しい。やっぱり家の娘は
「天使だ……」
そこで私の意識は途絶えた。
「え……怖」
と恐怖と困惑が混じった声で言ったエリーゼその言葉エリーゼが大好きな父に届くことはなかった。
ちなみにエリーゼの母の名前は
ヘレン・ロゼーヌ・フォア・カトリーナである。