第5話
ここはどこだ……?私はどうしたんだっけ。
たしか……光る強面にあって、エプロンを取りに帰ろうとしたら迷って、そこでマリアとお母様が戦っているのを見つけて……。そうだ!あのあと2人はどうなった?!
「お母様、マリア!」
私はさっきの事を思い出し、重い体を無理やり起こして2人が無事かと確認しようとするが体に激痛が走り、またベッドのうえに体を倒してしまった。
「?!奥様!エリーゼ様が起きました!」
「!っエリーゼ!」
「エリーゼ様っ!」
よかった。お母様とマリアはケガをしている感じはない。私が倒れてからは戦ってはいないっぽいな。……服でケガが見えないけど本当はめっちゃケガしてたりして…。
「2人共、怪我は?」
「怪我?!するわけないじゃないですか!」
……ん?
え、どゆこと?
「エリーゼ、私たちが使っていたナイフは人の体には傷がつかないようにしている特別製のナイフなのよ」
「服は傷つくから困るので、服も傷つかないように発注してほしかったです……」
「そっちのほうが危機感持つでしょ」
「も〜奥様!正論言わないでください!反論できなくなります!」
と2人は仲良さそ〜〜に喋っている。
「え?2人共ケンカしてたんじゃないの?殺し合いとか……仲直りしたの?」
そうすると2人は一瞬狐に摘まれた様な顔をした。
その後2人はみるみる真剣な顔になっていく……。
もしかしなくともこれ、聞いちゃだめなやつだった?
「エリーゼ、よく聞いて」
「はい」
「カトリーナ家は……暗殺の家系なのよ」
カトリーナとは私の苗字のようなものだ。私の名前をフルネームで言うとエリーゼ・アレクサンドラ・マ・カトリーナという……らしい。いや長いな。
「……え?」
でも今はそんな事はほんっっっとにどうでもいい。カトリーナ家が暗殺の家系ぃ??
「……ほんとに?」
「ほんとよ」
お母様は至って真面目。ふざけている感じもない。
マリアも真剣な顔つきで冗談ではないと判断するには十分すぎるもう判断材料だった。
「本当は子供にこの事をカミングアウトするのは十歳からなのだけれど……今回は仕方ないわね」
「すみません…つい熱中して気配を感じ取るのを忘れてました……」
「ほんとよ一流の暗殺者たるもの、それぐらい毎分毎秒やっとかなきゃ」
「奥様も気づかなかったのに……」
これを聞く限り、喧嘩ではなく戦いの訓練だったみたいだ。
それならそうと看板をかけて書いていおいてくれ。紛らわしすぎるだろっ。
「でも、知ってしまったなら訓練を始めるわよ」
………ん?クンレン?
「え?」
「当たり前でしょう。今までは十歳になってから訓練を始めるのだけれど……知ってしまったならしょうがないわよね!」
お母様……そんな生き生きとした顔をしないで。
私は今からが不安でしかなくなってくる。
「あ、でもここでいっていいの?メイドさん結構部屋の中にいるけど……」
部屋にはメイドが軽く十人はいてみんなそれぞれの仕事をしている。
「あ、ここにいる……というかこの家に仕えているメイドは全員暗殺者よ」
……これは何かの夢だろうか?今日1日だけでも情報過多すぎるのだが。
一旦整理しよう。私の産まれた家は暗殺者の家系でメイドも全員暗殺者。マリアとお母様は訓練のために戦っていて、私はそれを偶然みてしまい、本当は十歳から知るこの事を5歳で知ってしまった。こんなに濃い1日では初めて……
「あ、そうそう訓練は明日からよ」
……訓練は明日から始まるらしい。
脳内説明をしている時に言ってくれるとはご丁寧にどうも!その前に光る強面に肉の焼き方教えたいんだけ
「ガキが倒れたってほんとか?!」
ど。ここの家は全員私の脳内での会話を遮るのが好きなのかな??
「あら、ガーディンが来るなんて珍しい」
「もしかして、この人も……」
「暗殺者よ」
まじかよ。どうりで圧がすごいと思ったわ。
最初に[こいつ特殊な訓練受けてんの?]ってツッコミをいれたけど特殊な訓練受けてたわ。
しかも名前ガーディンって…名前まで強そうなのなんなん?マリアといい、ガーディンといい、ここの世界の人名が体を表し過ぎじゃない??
「エプロン取りに行ってくるっていってから二十分たっても戻ってこないから逃げたと思ったぜ」
「ガーディンは見た目"は"怖いですもんねぇ……夜は抱き枕抱かないと寝れないのに……」
「ちょっ、そのことは言わねぇって約束だろ?!裏切ったなマリア!」
まじで?ガーディン夜抱き枕抱いてねてんの??
ギャップありすぎだろ。惚れるわ。
しかもこの2人妙に仲がいいな。マリアはいつも敬語なのにガーディンにはタメ口なの少しずるいと思ってしまう。
「っていうか、ガキじゃなくてエリーゼ様ね?当主の娘にガキって……バカじゃないの?」
「しょうがねぇだろ!今知ったんだよ」
一応反省はしているようだ。そこまで気にならなかったしどっちかっていうと……
「上下関係あるみたいで嫌だからそっちのほうがいいなぁ……」
ガーディンはびっくりしてから少し笑って、
「じゃあこれからは嬢ちゃんって呼ばせてもらうな」
「!!はいっ」
嬢ちゃんはたくましい感じがするが……まぁいいか。たくましくなればいい話なのだ。
「まぁ、無事だったらいいわ。とりあえず俺はダンジョンに行って今日の夜食に使うビッグベアーを倒してくるわ!」
「あ、頑張ってくださいね、どうせ装備つけて行かないんでしょ?」
「あれあると動きにくいんだよなぁ……」
「普通は一撃食らったらバラバ〜ラになるのに」
この会話だけでどれだけの情報が頭に流れ込んできただろう。とりあえず一つずつツッコミをさせてくれ。
ダンジョン?!この世界ダンジョンあんの?!なにそれ……出会いとか求めちゃっていいやつ?
ビッグベアー?絶対くまじゃん。名前からしてくまじゃん。ベアーって言ってんじゃん。絶対危ないじゃん。それに対して……え?装備をつけていかない??しかも一撃でバラバ〜ラ?
……………………………………。
いや、装備つけろよ!!危ないだろ!
「…というか今頃なのだけれど……エリーゼとガーディンは知り合いなの?
あなた、私とマリア以外に仲いい人いたのね」
お母さまそれはひどいよ。さすがに強面でももっといるって……。
「旦那様とも仲いいです。」
「ガーディン、そんなに変わんないから。ドやらないで」
可哀想すぎるだろガーディン!!!!
「いやなんか肉の焼き方が下手くそって直談判してたので……」
「落ち込んでるの??ガーディン笑」
「う、うるせぇ!と、とりあえず俺はビッグベアー狩ってくる。マリア!身体強化魔法!」
「はいはい」
…………この家全員暗殺者。特殊な訓練受けてたガーディン。明日から私訓練。この家のメイド全員暗殺者。ガーディンは夜抱き枕を抱いて寝ている。しかもめっちゃ脳筋&強いっぽい。ダンジョンもある。
それだけでも情報過多なのに…最後に魔法来ちゃったよ。
「ははっ」
もう笑うしかないな、これ。
明日が少し楽しみだと思ったのはみんなには内緒だ。
「そういえばエリーゼ様、魔法使えたんですね!びっくりしましたよぉ」
「……ん?」