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第4話

 ついにこの世界の厨房にはいれる…!

あーなんかドキドキしてきた…


「……あ!」

「どうした?」

「エプロンを忘れました!今すぐ取ってきます」


「……そんなことを気にするなんて、珍しいガキだな」

「そんなことってなんですか、そんなことって!

大事なんですよ!エプロン!料理に埃が入ったらどうするんですか」


光る強面は少しだけ目を見開いた。多分こんなことを言う子供とは初めて出会ったのだろう。


それもそのはず、私は向こうで17年生きて、こっちで5年生きている。

つまり!精神年齢22年の大人びた子供なのである!

あんまりなめてると痛い目見るぜ?


………こんなことを言ったら私が痛い目にあいそうだが。


「ははっ、そうかよ」


そう言って光る強面は優しそうに笑った…様に見えなくもないのだが笑っている顔が怖すぎる。

悪い事を考えてる凶悪犯のようだ。


「じゃ、じゃあ行ってきます」


凶悪犯のような笑っている顔に若干引きつつ自分の部屋に戻る。…はずだった。


皆さん、お忘れだろうか。何を隠そうこのエリーゼ、部屋を出たのは初めてである。


こんな可愛い5歳児が初めて部屋をでたのだ。

戻り方なんて覚えているはずがない。

覚えているなんてことはことあってはならない!

じゃないと、私がまぬけみたいにになってしまうではないか!


とりあえず記憶を頼りに歩こう。

一応ここは私の家なのだ。そこまで広くはないはず。


〜10分後〜

前言撤回めっちゃ広いわ。もう迷路じゃん。

なんかもうよくわかんないとこ来たし……。


ここは今まで歩いていた所と雰囲気がまったく違う

今までいたところは赤とか黄色とか明るいイメージ。   ここは黒や紫とか暗い感じ……

例えるならば、この家の裏の顔のような……


ガキンッガキンッ


「?!」


なになになになになになに?!?!?!

怖い怖い怖い怖い!え?なんか音しない?!

なにか…刃物がぶつかり合うような、嫌な金属音…。

聞いているだけで不安になってくる。

できればこの音は聞きたくない。


「お母様ぁ、マリアぁ、光る強面ぇ…」


怖くて知ってある人の名前を無意識に呼んでしまう。

お母様は毎日私の部屋に来てくれるのだが最近仕事が忙しいと言ってなかなか来てくれない。

そもそも貴族婦人に仕事とかあるのだろうか。 


「こっちの方から音が聞こえたような、、」


わかってる。こういうところには普通行ってはいけないのだ。しかし何があるか分からずに逃げることならてできるわけもない。

………決して好奇心から行こうとしているわけではない。


ガキンッガキンッ


「………ここから?」


そこには扉が一つあって、中から音がする。


私は視界に見える小さな手で扉の取っ手をつかんだ。

ガチャ…

ドアが小さく音を立てて開いた。中はとても広くて槍や弓ナイフ色々な凶器が刃を光らせていた。

しかし私はそんなことには目もくれなかった。


「……お母様…?マリア…?」


そこには愛するお母様と愛するメイドがいた。

二人とも刃物をもって、私の知らない顔で相手を斬りつけようと戦っていた。


マリアは普段の優しい雰囲気から一転。

上下の服は繋がっていて、上は少しフリルが付いている。下はひざ丈まであるスカートだ。

ロングソックスをはいていて上からロングコートを着ている。全身真っ黒だがそんなことは気にならないぐらい綺麗な服だった。


お母様は、少し胸元の開いた軍服の様な服を着ていて、下は膝よりも少し高いスカートをはいている。

左は長く右は短い、おしゃれなコートを羽織っていてお母様の妖艶な雰囲気にはぴったりだった。

こちらも服の色は黒。


しかしお母様も、マリアも衣装が所々切れていて、この戦いでボロボロになったことは明白だった。


大切な2人が傷ついている。そんな姿は見たくなかった。いますぐやめてほしかった。


「2人ともやめてぇ゙ぇ゙ぇ゙ぇ゙ぇ゙!」


足が地面に埋まって動けなくなればいいと思った。

そうすれば2人とも戦いをやめると思った。

そんなあり得ない事を願いながら全力で叫んだ。


「えっ、エリーゼ様?!」

「エリーゼ…!?」


新しい世界に来て疲れているのだろうか、それとも強く願ったせいで幻覚が見えているのだろうか。

 ついさっきまでなにもなかった地面が急に動き出し、お母様とマリアの足を埋めていく。


お母様とマリアはびっくりして動きを止めた、というか止めざるを得なかった。

しかしナイフは握ったままだ。


「ナイフもっ…はな゙じてッ」


もう、何を言ってるのかもわからないぐらい私は号泣していた。そんな私の願いに応えるように地面はお母様とマリアのナイフを奪っていく。


「もう、 戦かわ ない、でッ」


思いっきり叫んだせいで疲れているのだろうか、私は喋ることさえ精一杯だった。

私は手足に力が入らなくて硬い地面に倒れた。

受け身を取らずに倒れたせいでからだ中が痛い。


「エリーゼ!」

「エリーゼ様っ!」


2人が私を助けようと地面に埋まった自分の足をどんどん抜いていく。


そんな事をよそ目に私の意識は少しずつ、しかし確実に闇に放り込まれていく。

あぁ…この感覚は2回目だな。


足が抜けたらしい2人は血相を変えてこっちに走ってくる。

でもそんな事が気にならないくらい私の意識はほとんどなくなっていた。


まだ生まれてから5年しか生きてないのに…

もっと生きたかったな。


そんな淡い願いを胸に抱えながら私の意識は途絶えた。

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