第9話
「はぁッはぁッはぁッ……ゴホッ」
訓練を始めてから1週間。なぜ私はこんなに全力で走っているのだろう。……駄目だ頭がはたらかない。
「ッ……!」
そんな事を考えていたら足を木の枝につまずいてつまずいてしまった。痛い。とてつもなく痛い。
おのれ木の枝め。末代まで呪ってやる……。本当になんでこんな森の中を走っているんだ。
「エリーゼ様!早く立ち上がってください。実戦でしたら死んでますよ。」
……そういえば実戦訓練をしていたんだった。だからって走る?森の中を。地面はゴツゴツしてて走りにくいし少し気を抜くと転ぶ。
「ったく……才能の持ち腐れですね」
おまけにこの毒舌。この人ほんとに家のメイドなんだよね?主人の娘に対して上から目線すぎない? え?どう思う?
「誰に聞いてるんですか……もしかして頭打ちました?」
「もうやだ……マリア嫌い。」
あと心の声を読まないで……。
「え?!……嫌われるならもういっそ今よりもハードな訓練にして強くして嫌われても後悔のないように……」
「嘘!嘘!嘘!嘘!大好き!本当に大好き!」
「え!ほんとですか?!も〜エリーゼ様ったらっ」
よかった……。これ以上練習メニューを増やされてたまるもんか。自分の身は自分目守らねば。
「じゃあ……次は私との模擬戦です」
「……なにそれ?」
「簡単に言うと私と戦うやつです」
「わぁすっごく簡単!とってもありがとう」
「これは初めてするメニューなので安心してください」
「あ、だよね!だって模擬戦なんてメニュー初めて聞いたし初耳だったもん」
「それを初耳っていうんですよ」
てへっ。
「じゃあこの中から好きな武器を選んてください」
マリアが大きなカバンから色々な武器を出してくる。ナイフ、剣、弓矢、大剣、太刀、銃、銃、銃、銃、銃、……銃多くね?
「こっちの銃は軽くて装弾数が多いんです!その横のやつは装弾数は少ないですが威力が強くて……それでこっちは……」
どうしよう。呪文詠唱してるようにしか思えない。マリアってもしかして銃オタク?
それにしても武器選べなんて……触ったことすらないからどれがいいかなんてわからない。
「聞いてます?エリーゼ様……」
でも、なんだろう。分からないはずなのに、分かってはいけなかったはずなのに、体がこいつだと叫んでる。気づけば私は握っていた。
「……剣と銃ですか。正直2個選ぶとは思いませんでしたが、その組み合わせは難易度が高いですよ」
「大丈夫だよ」
「?」
私を誰だと思ってるの?
大丈夫に決まってんじゃん。だってさ
「私はエリーゼ・アレクサンドラ・マ・カトリーナだから」
SSランク暗殺者の娘だ。
難易度が高くて結構。だってそうでしょう?難易度が高いってことは選ぶ人が少ないってこと。それなら、これから戦うだろう未知の敵はこの武器、この戦い方、このスピードに慣れていない。つまり対策かできない。
十分すぎるハンデだろう?
「自身があるのは結構ですけど今からですよ?模擬戦。そんなに難易度高いの使って大丈夫なんですか?」
「せめて銃だけは練習させてください」
「こんなに高速でスライディング土下座する人初めてみました」