72 受け渡し当日
そして運命の受け渡し当日となった。
朝食を食べ終え
外に出て
倉庫から野菜類コンテナと果物類コンテナを出して
家の近くで待っている。
するとガドガドという蒸気機関特有の音が響き渡る。
「『跡取りくん』!お待たせ!」
とゾニルフ会長自ら魔導式蒸気機関でやってくる。
免許証を持っていたようだ。
俺もそのうちに取りに行こうかな。
あったらあったで絶対便利だしな
魔導式蒸気機関。
「やはり品質はどれもこれもいいね!今日も食べさせてもらえる?」
「いいですよ!待っててください」
ぽよん、ぽよんとユーミルがやってくる。
「このスライム……まさか……(これはどう見ても見た目は普通のスライムだが……『ヴェネフィットスライム』では?)」
もう1人の青年は見たことがない。彼は手伝いさんか?
「君は?『跡取りくん』とはどういう関係で?」
エリクスはゾニルフ会長に
「あ、兄貴……いえ『』さんは……俺がした間違いを許してくれた恩人なんです!」
「恩人?」
「俺少し前まで冒険者だったんです。でも、俺……『』さんを『魔獣を連れた悪党』だと思って斬りかかってしまったんです」
「それで?」
「はいその後俺は冒険者ギルド証明証を剥奪されてしまい……その……『』さんはこんな俺でも『これは君だけのせいでは無い』と許してくれたんです……しかも俺をお手伝いとして働かせてもくれていて……嬉しくて」
エリクスは涙を零し『』の行為に甘える。
ゾニルフはこの時思った
(やはり『跡取りくん』は相当の手練に間違いない……私の目は節穴では無かった!!)
とゾニルフも涙流す別の意味で。
試食用の野菜類と果物類を持ってきた『』はこの光景に慌てて
「ど、ど、どど!どうしたんですか!?なんで二人共涙を流してるんです!?」