516 収穫の余韻と、賑やかな台所
夕暮れ時、オレンジ色の光がリビングの窓から長く差し込み、テラスで揺れる洗濯物もすっかり乾いて、温かな太陽の匂いを放っている。
裏庭から戻った俺たちは、コンテナいっぱいに詰まった瑞々しい野菜や果実をキッチンへと運び込んだ。
土の香りと共に、家の中がパッと明るくなったような気がする。
「さて、今日のメインディッシュは、この採れたての野菜たちを主役にするか」
俺はエプロンを締め直し、キッチンの中央に立った。
そこへ、チャリオットが音もなく寄り添い、鋭い包丁をまな板の上に用意する。
「女神様、これほど瑞々しい素材であれば、あまり手を加えすぎぬのが最良かと存じます。わたくしが下ごしらえを担当いたしましょう」
「助かるよ、チャリオット。エリクスは、そっちの葉物野菜を洗ってくれるか?」
「おう! 泥一つ残さず、ピカピカにしてやるぜ!」
エリクスが威勢よく返事をして、シンクで野菜を洗い始める。
リッカは子供たちと一緒に、テーブルを拭き、カトラリーを並べる準備を始めてくれた。
「銀嶺」という特別な言葉を使わなくても、この庭で育った作物は、それだけで十分すぎるほどの生命力に満ちている。
俺は棚から大きな鍋を取り出し、コンロに火をかけた。
今日の夕食は、収穫したばかりの野菜をたっぷり使った「大地の煮込み」と、昨日から馴染ませておいた肉のソテーだ。
まな板の上で人参や玉ねぎが刻まれる規則正しい音、鍋の中でバターが溶ける香り、そして家族の笑い声。
それらが一つに溶け合い、家の中が幸せな温度で満たされていく。
「パパりん、いい匂いがしてきた! お腹ぺこぺこだよ!」
「ふふ、ライト、もう少しの辛抱ですよ」
リッカの優しい声がリビングに響く。
俺は木べらを手に取り、鍋の中をゆっくりとかき混ぜた。
願えば何でも手に入るこの力だが、自分たちで種をまき、育て、泥を落として料理する。
この「手間」こそが、料理を何倍にも美味しくしてくれる最高の調味料なのだ。
窓の外では、一番星が静かに瞬き始めていた。
一日の終わりを告げる穏やかな夜が、もうすぐそこまで来ている。




