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異世界転移した俺は万能スキルでスローライフを謳歌する  作者: みなと劉


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504/519

504 未来への種まきと、家族会議のゆくえ

朝食を終えた俺たちは、チャリオットが淹れてくれた二杯目のお茶を片手に、リビングの大きな木製テーブルを囲んでいた。

テーブルの上には、俺がスキルで願って出した「家庭菜園の心得」という本と、これまでに集めた種袋がいくつか並んでいる。

「さて、それじゃあ家族会議を始めようか。今回のテーマは、トマトの苗を植えた後の空き区画に何を育てるか、だ」

俺が切り出すと、ライトが真っ先に身を乗り出した。

「お父さん、僕、大きなスイカが作りたい! 前にテレビで見た、中が真っ赤でシャリシャリしたやつ!」

「スイカか、いいな。この土地の土なら、きっと甘いのが育つぞ」

俺が頷くと、隣でリッカが穏やかに微笑みながら口を開いた。

「麗人さん、私は先ほども申し上げましたが、料理に使えるハーブの種類をもう少し増やせたら嬉しいです。特に、お肉料理の香りを引き立てるようなものが……」

その言葉を聞いたチャリオットが、一分の隙もない動作で一歩前に出た。

「リッカ様の仰る通りでございます。ハーブがあれば、女神様の作られる料理はさらに高みへと至るでしょう。わたくしも、いくつか栽培に適した品種を存じております」

俺はチャリオットの意見に耳を傾けながら、スキルの本をパラパラと捲る。

「ハーブの小径か……。ただ育てるだけじゃなく、石畳を敷いて、歩くだけで香りが立ち上がるような庭園風にするのも面白いかもしれないな」

「兄貴、それなら俺が石を運ぶのを手伝うぜ! 力仕事なら任せてくれ!」

エリクスが自分の腕を叩いて笑う。彼の協力があれば、土木作業もあっという間に進むだろう。

「お父さん、私はイチゴがいいな! 甘くて可愛いイチゴ!」

ユミナが俺の袖を引っ張って可愛らしくおねだりしてくる。

「よしよし、スイカにハーブにイチゴ、それからエリクスのトウモロコシだったな。……全部やろう。幸い、俺たちの裏庭にはまだ余裕があるしな」

俺は心の中で願った。

(……これから植える全ての種に、最適な栄養を与える土壌作りのヒントを)

すると、手に持っていた本がひとりでに捲れ、今の俺たちに必要なページが開かれる。

「……なるほど。まずは石灰を撒いて、土の酸度を調整するところからか。よし、みんな。会議はこれくらいにして、さっそく畑に出よう!」

俺の掛け声に、子供たちが「おーっ!」と拳を突き上げて応える。

メセタがそんな俺たちの様子を見て、満足げに尻尾をバフンと床に打ち付けた。

外へ出ると、雨上がりの湿り気を帯びた空気が、太陽の熱でゆっくりと乾き始めている。

長靴を履き、鍬を手にした俺の横には、愛するリッカと頼もしい仲間たち、そして未来の「親父」……いや、最高の執事であるチャリオットがいる。

「チャリオット、まずはスイカの場所を決めよう。お前の目から見て、一番日当たりの良い場所はどこだ?」

「承知いたしました、女神様。あちらの緩やかな傾斜のついた一角が、水はけも良く最適かと存じます。わたくしが先導して地縄を張りましょう」

俺たちは一斉に畑へと踏み出した。

土を耕し、うねを作り、新しい命を迎える準備をする。

一振りする鍬の重み、手に伝わる土の感触。

スキルの本に頼るだけではない、自分たちの手で未来を形作っていくこの時間が、俺には何よりも愛おしい。

額に滲んだ汗を、肩にかけたタオルで拭う。

「ふぅ……いい汗だ」

俺が呟くと、メセタが寄り添い、その「視野拡大」の特性で、遠くの森の様子まで俺に伝えてくれる。

森の奥では小鳥たちが歌い、俺たちの畑では家族の笑い声が絶え間なく響いている。

特別な奇跡を願う必要なんてない。

この地で、この仲間たちと、一歩ずつ進んでいく。

それだけで、俺のスローライフはこれ以上ないほどに輝いているのだ。

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