500 柔らかな陽光に包まれて
窓の外から聞こえる風の音と、穏やかな朝の光で目が覚めた。
隣ではリッカが静かな寝息を立てており、足元にはメセタの大きな体が心地よい重みと体温を伝えてくる。
「……ん、麗人さん……おはようございます」
俺が少し動くと、リッカがゆっくりと瞳を開けた。彼女は俺の生理による体調の変化も、すべてを分かった上で寄り添ってくれる大切な嫁だ。
「おはよう、リッカ。今朝はいい天気だな。……お腹も、そんなに重くないよ」
俺がそう答えると、リッカは安心したように微笑み、俺の手にそっと触れた。
その時、メセタが優雅に顔を上げ、スキルを通じて凛とした声を脳裏に届けてくる。
「おはようございます、我が主。今日も貴方の健やかな目覚めを見届けられたこと、私にとって何よりの喜びです」
メセタは「高速狼」の名の通り、喜びを抑えきれない様子で尻尾を凄まじい速度で振り、バフバフと床を叩く音を響かせた。
俺はベッドから抜け出し、キッチンへと向かう。
「……肉厚の鉄板と、深めのボウルを」
願うと同時に、手に馴染んだ調理器具がスキルの光と共に現れる。
日曜大工のような特殊な技能を願えば、決まって本しか出てこないこの万能スキルだが、こうして家族のために料理を作る道具だけは、いつも俺の意を汲んで手元に届いてくれる。
「女神様、目覚めの茶をご用意いたしました」
既に完璧な執事の佇まいで控えていたチャリオットが、一分の隙もない動作で湯気を立てるカップを差し出す。かつての親父としての面影を、今は信頼できる執事としての献身の中に感じながら、俺はその茶を一口啜った。
「パパりん、おはよー!」
「お父さん、お腹すいた!」
二階からライトやユミナ、マチルダたちが賑やかに駆け下りてくる。
家族の笑い声と、鉄板の上で弾ける食材の音。
特別なことは何もない。けれど、この手で守り、積み上げてきたこのかけがえのない日常こそが、俺のすべてだ。
「さあ、みんな揃ったな。朝ごはんにしよう」
俺は家族の輪の中心で、新しい一日の始まりを噛み締めながら、温かな料理をテーブルへと運んだ。




