496 至福のキノコ尽くしと、父の教え
食卓には、チャリオットと協力して作り上げた「森の真珠」のキノコ料理が並んだ。
キノコのソテー、香草の香るクリームスープ、そして炊きたてのご飯。
「女神様、皆様、冷めないうちにどうぞ」
チャリオットが静かに椅子を引き、全員が席に着く。
「「「いただきます!!」」」
一斉にフォークとスプーンが動く。
「森の真珠」を口にした瞬間、濃厚な旨味とバターのコク、そしてチャリオットが選んだハーブの爽やかな後味が口いっぱいに広がった。
「……っ! 兄貴、これ、今まで食べたキノコの中で一番旨いぜ!」
エリクスが驚きに目を見開き、大きな口で頬張る。
「本当においしい。お父さん、また森に採りに行こうね!」
「お母さん、このスープ、体がすごく温まるよ」
ライトとユミナも夢中でスプーンを動かし、リッカも「麗人さん、チャリオットさんの隠し味が効いていますね」と、幸せそうに微笑んだ。
「パパりん、キノコぷりぷり!」
「トトさま、森の味がしますね」
「父上、これはまさに大地の恵みでございます」
マチルダ、アマンダ、リューも、その豊潤な味わいに満足げだ。
俺は隣に控えるチャリオットを見上げた。
彼は執事として無表情を保っているが、家族の「美味しい」という言葉を聞くたびに、その喉が微かに誇らしげに鳴っているのを俺は知っている。
「チャリオット、最高の晩餐になったよ。ありがとう」
「もったいないお言葉です、女神様。……ですが、素材を活かすのは料理人の腕次第。かつて私が貴方に教えた『基本』を、女神様が今も大切にされている証でございます」
一瞬だけ、執事の顔から「前世の親父」の顔に戻った気がした。
俺がこの世界で万能スキルを使いこなし、こうして家族を養えているのは、前世で親父が厳しく、そして優しく教えてくれた「生きるための知恵」があったからだ。
「……ああ。忘れてないよ、親父」
心の中でそう呟き、俺は再び温かなスープを口に運んだ。
外はすっかり暗くなり、夜の静寂が訪れているが、我が家のダイニングだけは、いつまでも賑やかな笑い声とキノコの芳醇な香りに包まれていた。




