490 雨上がりの土と、新しい命の予感
一歩、畑の土を踏みしめると、足の裏からひんやりとした大地の湿り気が伝わってきた。
昨日俺が願った雨は、土の表面を叩きつけるだけでなく、奥深くまでじっくりと染み込んでいたようだ。
「兄貴、見てくれよ。土がふかふかだぜ!」
エリクスが土をひと掬いして、感心したように声を上げた。
「ああ、最高の状態だな。この湿り具合なら、苗も根を張りやすいはずだ」
俺は昨日耕し、堆肥を混ぜ込んでおいた畝の前に立った。
雨によって土の粒子が落ち着き、栄養分が均一に行き渡っているのが目に見えるようだ。
さて、今日はここに「トマト」の苗を植えていく。
俺はスキルを使い、**「ポンッ」**という音と共に、瑞々しい緑の葉を蓄えたトマトの苗を準備した。
「よし、エリクス。俺が穴を掘るから、お前は苗をそっと置いていってくれ」
「了解だ、兄貴!」
俺は手際よく畝に一定の間隔で穴を開けていく。
昨日のうちに土壌作りを済ませておいたおかげで、鍬の先が吸い込まれるようにスムーズに土に入る。
エリクスがその穴に、赤ちゃんの肌を扱うような手つきで苗を置いていく。
「お父さん! お母さん! 僕たちも手伝うよ!」
家の方から、ライトとユミナが元気に走ってきた。
「パパりん、マチルダも土ぺったんする!」
「トトさま、お手伝いしますね」
「父上、列を乱さぬよう監視いたします」
マチルダ、アマンダ、リューも、ユーミルの後を追うようにトテトテとやってきた。
「ははは、助かるよ。それじゃあライトとユミナは、苗の周りに優しく土を被せてやってくれ」
「うん、わかった!」
「お母さん、見ててね。優しくするから」
子供たちの小さな手が、黒々とした土に触れる。
俺が願った雨、俺たちが耕した土、そして家族みんなで植える苗。
この畑から、また新しい「美味しい」が生まれる予感に、俺の胸は静かな期待で満たされていた。




