486 温かな後片付けと、湯気の向こう側
「ふぅ、美味しかった……」
食卓に満足げな溜息が満ちる。
「さて、それじゃあ片付けを済ませてしまおうか」
俺が声をかけると、リッカが「麗人さん、お皿洗いは私がやりますね。チャリオット、手伝ってもらえる?」と立ち上がった。
「承知いたしました」と、チャリオットが静かに動き出す。
「お父さん、僕もお皿運ぶよ!」とライトが空いた皿を重ね、
「お母さん、私はテーブル拭くね」とユミナが布巾を手に取る。
「パパりん、マチルダも応援する!」
「トトさま、ピカピカにしますね」
「父上、残ったお料理は私が冷蔵庫へ」
マチルダ、アマンダ、リューも、それぞれのやり方でキッチンへと集まってくる。
家族みんなで動けば、山のような食器もあっという間に片付いていく。
カチャカチャという食器の音と、子供たちの笑い声。
この日常の音が、俺にとってはどんな音楽よりも心地よく響く。
キッチンが片付くのを見届けてから、俺は脱衣所へと向かった。
雨上がりの夜は少し冷える。今日は早めに風呂を沸かして、みんなで温まろう。
俺は壁に取り付けられた操作パネルの前に立ち、慣れた手つきで画面をタップした。
「えーっと……温度は42度でいいな」
指先一つで、風呂釜に勢いよくお湯が注がれる音が響き始める。
ひと昔前の苦労が嘘のように、今はこうしてパネル一つで快適な風呂が用意できる。
「おーい、みんな! お風呂沸かしてるから、順に入る準備をしておいてくれ!」
リビングに向かって声をかけると、
「はーい!」という元気な返事と、
「お父さん、僕、一番に入る!」というライトの弾んだ声が返ってきた。
浴室から立ち上り始めた白い湯気が、脱衣所の鏡を淡く曇らせていく。
雨で潤った大地と同じように、今夜は俺たちもこの温かなお湯で、一日の疲れをゆっくりと癒やすことにしよう。




