407 収穫物を家に入れアキトさんの家を掃除する
家に戻ると、収穫したばかりの野菜がぎっしり詰まった青いコンテナを、俺はそっと玄関の土間に運び込んだ。足元にコンテナを置きながら、リッカたちが手伝いにやってくる。
「ふう……。今日もたくさん採れたね」とリッカが微笑む。
「うん、今年はほんとに豊作だ。あとは保存するものと、すぐに使うものを分けておかないとな」
俺はコンテナの中身をざっと見渡し、傷みやすい葉物はすぐに冷蔵庫へ、トマトやきゅうりは別の箱にまとめることにした。色や硬さを確かめながら、使い道を考えつつ仕分けていく。
「俺はすぐに使うほうを整理するよ!」
エリクスが元気よく言い、手際よく新鮮なものを取り分けていった。
「じゃあ、私は洗って乾かす作業を担当するね」
とリッカも手を動かす。メセタとミルドレシアも何かと雑用を手助けしてくれて、みんなで効率よく作業が進む。
俺はふと思い出した。
「そうだ、今日はアキトさんの家のリビングを掃除する日だったな」
「よし、収穫物はこれで片付いたし、掃除道具を持って行こう」
そう言って掃除用具を準備し、みんなに声をかけた。
「メセタ、ミルドレシア、アキトさんのところへ行くぞ」
二匹は元気に尻尾を振りながらついてくる。
家の外へ出ると、俺は掃除道具の入ったバッグを肩にかけつつ、メセタとミルドレシアを軽く撫でた。
「ところで、アキトさんはどうしてるでしょうね」
メセタが落ち着いた声で答える。
「アキトさんは今、第一世界に帰還している。ユウキさんと同じく、ここ第二十世界には収穫祭のある10月頃に戻ってくる予定らしいけどね。それまでは、定期的にこちらを掃除しておく計画になってる」
「ああ、そうか。じゃあその間も、私たちがしっかり管理しておかないとな」
気温もまだ温かく、この季節は埃もたまりやすい。彼がいない間に快適な環境を維持できるように、念入りに掃除するつもりだ。
家から少し歩き、アキトさんの家に着く。木々の緑に囲まれた小さな一軒家は、静かで落ち着いた雰囲気が漂う。扉を開けて中へ一歩踏み入れると、少しホコリが積もっているのが分かった。
「よし、まずは玄関からだな」
俺はバッグからほうきを取り出し、ゆっくりと埃を掃き集める。メセタとミルドレシアもそれぞれに動き出し、メセタは棚の上にある不要な物を整理し、ミルドレシアは窓を開けて空気を入れ替え始めた。
「これから10月までまだ時間があるし、定期的にこんな感じで掃除に来るといいな」
そう言いながら、俺は雑巾を濡らして床を拭き始めた。程よく湿らせた雑巾が木の床を滑るたびに、古い埃がきれいに取れていく。
「風通しもよくしておくと、湿気も抑えられていいはずだ」
ミルドレシアの声が心地よく響く。彼女たちの助けもあって作業はとても捗る。だんだんと部屋の中に清潔感が戻ってきて、まるで新しい息吹が吹き込まれたみたいだ。
「次はリビングのカーテンも洗っておこうか」
俺がそう提案すると、メセタが頷き、
「お手伝いいたします。それに、掃除のついでに小さなメンテナンスも忘れずにね。家具などの傷みも見ておきましょう」
「助かるよ、頼りにしてる」
俺は二匹に笑いかけながら、時間をかけてゆっくり丁寧に家を整えていった。こうしてアキトさんの家も、収穫祭が来る頃には気持ちよく迎えられるだろう。
この異世界でのスローライフは、たとえ誰かがいなくても、俺たちの手で静かに支えられているのだと実感する。今日もまた、こうしたささやかな日常を大切にしながら、俺はゆっくりと時間を刻んでいくのだった。




