404 夕飯の支度とお素麺の陰謀論
俺は夕飯のメニューに頭を悩ませていた。どうせなら少し変わったものを作ってみようかと思いながら、レシピをパラパラとめくっていると、チャリオットの目がひときわ輝いた。
「女神様、このお素麺という料理、興味深いですね」と彼が言った。
お素麺――それは乾麺で作る細い麺料理だ。俺も耳にはしたことがあったが、改めてレシピを見ると、すごくシンプルでありながら奥が深そうだ。
しかし、ふと、昔どこかで聞いたお素麺の陰謀論を思い出した。
『お素麺って、乾麺なのに茹でると量が増えるから、あいつらは実は…』
何か不思議な話だったが、確かにあの軽い乾燥麺が茹でると倍以上に膨らむのは不思議だった。いや、科学的には水分を吸って大きくなるだけなんだが、俺たちの間ではその量の増え方を「陰謀論」的にからかっていたのだ。
「ねえ兄貴、茹でると増えるってほんとですか?」チャリオットが首をかしげる。
「まあ、乾麺は水分を吸って増えるのは当たり前だけど、確かにあいつら(乾麺業者)はその分かさ増し作戦をしてるかもな!」と俺は冗談っぽく返した。
そうして、今夜はお素麺をメインに据えた夕飯を作ってみることにした。シンプルな夕飯だが、その手軽さと清涼感が疲れた体にぴったりだと思ったからだ。
チャリオットもレシピを読み解きながら、材料の用意を手伝ってくれる。みんなもなんだか楽しそうだ。
「でも、茹でた後で量が増えるから、たくさん作らなくてもいいですね」とリッカが呟く。
「そう、その“増量”は精神的な満足感も増やしてくれるんだよな」と俺も笑う。
そういうと俺は早速お素麺の乾麺を願って出した。
すると、ぽんっと音を立ててテーブルの上にいくつかの束になった乾麺のお素麺が現れた。細くて白いその麺が束ごとに綺麗にまとめられており、見た目からして涼しげだ。
「お、これなら手早く茹でられるな」俺はにやりと笑いながら布巾を手に取る。
「うちはそこそこの大人数だから、このくらいの量なら余裕で食べ切れるだろう」と俺は言い、寸胴鍋にたっぷりの水を張る。さっそく火にかけながら、束になった乾麺を丁寧にほぐしつつ鍋へ投入した。
麺が水を吸い、蒸気が立ち上っていく。シンプルだけど、これが意外とみんなの身体を冷やして疲れを癒やしてくれるはずだ。チャリオットも横で様子を見ながら、
「兄貴、乾麺ってこの量でお腹いっぱいになるんですかね?」
「なあ、ここは俺の万能スキルも働くだろう?」と煮える寸胴鍋に手をかざすと、水温がちょうど良くなる。何せ、我が家の食卓は大家族……いや、それ以上の人数がいるから、このくらいの量はすぐになくなるというものだ。
「よし、そろそろ茹で上がる頃かな」俺は鍋の中の麺の様子を見て、火加減を調整した。
さあ、夏の夜にぴったりなひんやりとしたお素麺の夕飯が始まるぞ。みんなも楽しみにしている――そんな素朴だけど、心から幸せを感じる瞬間が、これからまた繰り返されるのだ。
「おいおいおい!?なんだこの量は!?」
あまりの大量さに俺は驚きを隠せない。見に来たエリクスもまた
「ちょ!?なにこれ!?なんなのこの量は!?」
と、俺と同じ反応をする。
「食べ切れる?これ……」
全員が同じ意見だったのだ。
小分けにしてなんとかこの家の全員で食べきることはできたのだが腹に溜まりすぎてなかなか風呂支度までにいつもよりも時間がかかってしまったのは言うまでもない。
これが素麺陰謀論か……。




