表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
388/395

388 綺麗な夜空と朝の風景

 夜空を見上げたまま、しばらく皆で無言の時間を過ごしたあと、そっと裏庭の草の上に寝転んだ。ミルドレシアが俺の肩に頭を預け、メセタは傍らでしっぽを小刻みに振っている。ライトとユミナは肩車をしてもらいながら、星座の名前をじゃれ合っていた。

「……ああ、やっぱり落ち着くな」

 俺が吐息をつくと、リッカがそっと手をつないで隣に腰を下ろす。

「本当に、こんな何でもない時間が一番幸せだよね」

 月明かりに照らされるリッカの横顔が優しく、胸がじんわり温かくなる。

 ほどなくして、子どもたちが眠気に負けはじめる。

「そろそろお家に帰ろうか」

と優しく声をかけると、ライトが

「もうちょっとだけ……」

と目をこすりながらも立ち上がり、みんなで家へ戻った。入浴を終えた子供たちはそのまま布団へ。チャリオットは薬草茶をいれてくれて、

「お疲れさまでした」と微笑む。

 俺はお茶を一杯飲み干し、台所をちらりと眺めてから寝室へ向かった。ベッドルームの明かりを消す前、ふと窓の外に目をやる。星はまだ瞬いていて――明日もまた、平和で穏やかな一日になりますように、と心の中で静かに願う。

 ――翌朝――

 鶏小屋のちいさなコッコッという声で目が覚める。時計を見ると午前6時。かかってきた朝の眩しい光が、今日も裏庭を照らし出していた。寝ぼけ眼のままパジャマのまま台所へ行くと、エリクスが早くも玉ねぎを刻んでいる。

「おはよう、兄貴。今朝は何にする?」

「うん……今日は簡単にフレンチトーストにしようかな。昨日、ミルドレシアのおねだりでとっておいたレフアハニーがあるからさ」

 俺がそう言うと、リッカがキッチンに飛び込んできた。

「わあ、フレンチトースト! 私、パン切っておくね」

 チャリオットもすぐに生クリームを泡立て器にかけはじめる。みんな、昨晩のまどろみを引きずりつつも楽しそうだ。

 手分けして準備を進め、パンを卵液に浸し、バターを溶かしたフライパンへ。ふわっと香る甘いバニラとハチミツの香りに、ミルドレシアがテーブルをぐるぐる回りながら「はやく食べたーい」と尻尾を振る。メセタは優雅に一礼しつつ「極上の朝食をいただくのは、この上ない喜びですな」と微笑んでいる。

 完成したフレンチトーストに、クリームとレフアハニーをたっぷりかけて――

「いただきます!」

 口に運ぶと、外はカリッ、内側はとろり。レフアハニーのほのかな酸味がふわりと広がり、今日の始まりにぴったりの甘さだ。

 食後、ふと窓の外を見ると、朝露に濡れた野菜たちがキラキラと輝いている。

「さて、朝の農作業と洗濯を済ませたら、今日は週に一度の納品日だな」

 エリクスが頷き、チャリオットが冷蔵コンテナを開ける。新鮮なジュースや瓶詰めフルーツサンドなどが整然と並んでいる。

「今週も頑張ろうぜ」

 俺は皆の顔を見回しながら、心の中で小さくガッツポーズをした。スローライフは、こうして毎日の小さな積み重ねで彩られていく――。今日もまた、最高の一日が始まるのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ