387 絶品チキンカレーを皆で作るぞ
「ほんとに……毎日が夢みたいだよ」俺が呟くと、子どもたちもそれぞれ笑い声をあげる。寝そべっているメセタとミルドレシアの間を、ユーミルの子どもたちが駆け回りながらすり寄っていく。
「今日は夕飯どうする?そろそろ支度しないとね」リッカが立ち上がりながら声をかける。
「俺、カレー食べたい!」ライトが元気よく手を挙げ、ユミナも「私も!」と続く。
「じゃあチキンカレーだな。レシピを出すぞ」俺は胸の中でスキルを呼び出し、静かに唱えた。
「いでよ!絶品チキンカレーレシピ!」
ぽんっ。テーブルに一冊の本が現れる。表紙には金色の文字で『誰でも簡単!極上チキンカレー』。
「さすが兄貴のスキル!」エリクスが拳を握りしめる。
「材料は心配いらない。鶏もも肉に玉ねぎ、人参、じゃがいも、香辛料セットを願って出す」そう言って俺は手をかざすと、ふんわりと新鮮な食材が並んだ。
——手分けして調理開始。
リッカは玉ねぎを薄切りにし、チャリオットは人参とじゃがいもを一口大にカット。エリクスは鶏肉に下味をつけ、俺は鍋でスパイスを炒めて香りを立たせる。
「うわ……いい匂い!」チャリオットが鼻をくんくんさせる。
玉ねぎが透き通ったら鶏肉、人参、じゃがいもを加え、赤ワイン少々で旨味を引き出す。水とカレールウを入れ、弱火でコトコト煮込めば完成間近だ。
「ご飯も炊いておこう」俺の声で、エリクスが魔力式炊飯器に米をセットしてスイッチオン。
「お風呂の準備もしておこうか」リッカがユーミルとミルドレシアを連れて脱衣所へ向かう。
蒸気とスパイスの香りが混じり合う台所で、仕上がったカレーを皿に盛りつける。ホカホカのライスにルウをかけ、福神漬とパセリを散らして出来上がりだ。
「呼ぶぞ!」俺の声で子どもたちが列を作り、全員で「いただきます!」。
初めの一口から歓声が上がる。やわらかな鶏肉とまろやかなルウ、ご飯に染みこんだ豊かな旨味。
「最高においしい!」ユミナが目を輝かせる。
「兄貴、絶対定番メニューだぜ!」エリクスは笑顔でおかわりをねだった。
「女神さまの料理はさすがです」チャリオットも感服した表情だ。
狭い食卓に笑い声が満ち、家族と従魔たちが肩を寄せ合いながら、今日もまた幸せな時間を噛みしめていた。
夕飯後の片付けを手分けで終えると、リッカがふと顔を上げて提案した。
「ねえ、星を見に行かない?」
「いいな……夜風が心地いいだろう」俺は笑顔で頷き、皆を裏庭へ誘う。
月明かりに照らされた畑の向こう、瞬く星々が夜空一面に広がっている。俺は深呼吸をして、今日一日への感謝を胸に刻んだ。
『明日も、もっと素敵な一日になりますように』
静かな夜の空気を味わいながら、皆も一斉に夜空を見上げた。平和なこの世界が、永遠に続くように——そう祈りながら。