376 朝食の支度を開始する
散歩を終え、家の扉を開けると、キッチンから湯気が立ち上っているのが見えた。中に入ると、エリクスとチャリオットがそれぞれエプロンを着けて料理の準備をしている。
エリクスは真剣な表情で野菜を刻んでおり、チャリオットは手際よくスープの鍋をかき混ぜていた。その光景に俺は思わず微笑む。
「お、やる気満々だな。」
「お帰りなさい!兄貴。」
とエリクスがいう
「さて、何を作るんだ?」
と言って俺も朝食作りに参加する
メセタとミルドレシアはキッチンの方を覗き込みながら、興味津々といった様子だ。
「お前たちは席についてゆっくりしてろ。準備ができたら呼ぶから。」
俺がそう言うと、ふたり――いや、二匹か――は素直に椅子に座り、尻尾を振りながら期待に満ちた目でこちらを見ている。
その様子にまた微笑みがこぼれた。
野菜たっぷりポトフ
冷蔵庫に残っていたキャベツや人参、ジャガイモを使った具だくさんのスープ。大鍋でコトコト煮込まれ、部屋中に優しい香りが漂う。
ガーリックトースト
フランスパンをカリッと焼き、香ばしいガーリックバターをたっぷり塗る。メセタがその匂いを嗅いで、思わずくんくんと鼻を鳴らしていた。
トムフォン
シシリア料理の一つで、少し手間がかかるが挑戦してみた。
トムフォンは、シシリア特有の調味料を使った焼き野菜とクリーミーなソースを組み合わせた一品だ。
俺はエリクスと一緒にトムフォンのソースを作り、チャリオットが野菜を調理する。特にトムフォンのソースはクリーミーで香り豊かに仕上がるため、加減が重要だった。
「ここで調味料を一気に入れると焦げるんですよね?」
と俺が確認すると
「らしいね。焦げを防ぐため、少しずつ混ぜながら入れるのがコツみたい。」
チャリオットは鍋の様子を確認しながら
「こちらもポトフがもうすぐ仕上がります」と報告してきた。
---
完成と朝食の時間
準備が整い、テーブルに料理を並べると、メセタとミルドレシアの尻尾が一段と速く揺れ始めた。
「ほら、お前たち、待たせたな。」
「わーい! パパの料理だ!」とミルドレシアは嬉しそうに目を輝かせる。
メセタも「さすが我が君…どの料理も絶品の予感がしますな」と優雅に口元をほころばせた。
「食べる前から褒めるなよ。それより、さっさと手を合わせろ。」
皆で「いただきます」をして、それぞれの料理を口に運ぶ。ポトフの温かさが体に染み渡り、ガーリックトーストの香ばしさが食欲を刺激する。そしてトムフォン――初挑戦だったが、これが予想以上に好評だった。
「これ、すごくおいしい! おかわり!」とミルドレシアが大声で言い、メセタも「これぞシシリアの味…至福の朝です」と感動している。
俺は少し照れながらも、こうして穏やかな朝を過ごせる幸せを噛み締めていた。