312 事件の真相と犯人
シーン:真相の糸口 — 最後の手がかり
篠田は、高橋明子が襲われたことでさらに事件の謎が深まったことを感じていた。
彼女が襲撃された部屋から発見された「会いたい。今夜、裏口で。」
というメモが、事件の核心に迫る重要な手がかりであると確信する。
篠田はこのメモの筆跡を注意深く観察し、再び宿泊客たちに話を聞くために動き出す。
彼の中で、徐々にある一人の人物が浮かび上がっていた。
まず、佐々木隆志。
ビジネストラブルを抱え、取引に失敗していた彼だが、彼が直接の犯人ではないと篠田は感じ始めていた。
次に、三浦美紀。
武田信一郎と親しい間柄でありながら、彼女の行動にはまだ謎が残っている。
篠田は最後に、再び三浦美紀と対話をすることを決意する。
彼女は、何か重要な事実を隠しているのではないかと直感していた。
シーン:告白 — 三浦美紀の秘密
「三浦さん、あなたは何かを知っていますね。」
篠田がストレートに問いかけると、三浦は一瞬驚いた表情を見せたが、すぐに冷静を取り戻した。
しかし、篠田の目は彼女の動揺を見逃さなかった。
「私は…ただ、武田さんに近づきたかっただけです。彼が大きな取引をしようとしているのを知って、それに興味を持ってしまったんです。でも、私は何もしていません。」
篠田は、三浦がまだ何かを隠していることを感じた。
彼女の焦った様子、話をする際に時折目をそらす仕草。
それが、何か重要な真実を示しているように思えた。
「武田さんはあなたを信用していました。しかし、あなたが彼を裏切る理由があったんじゃないですか?」
三浦は再び沈黙し、しばらくの間、篠田の視線を避け続けた。
そして、ついに彼女は重い口を開いた。
「私は…武田さんを愛していたの。でも彼は、取引に夢中で私のことなんて見ていなかった。だから、あのメモを送ったのは私です。」
篠田は黙ってその言葉を聞き、事件の全体像がはっきりと見えてきた。
三浦美紀は、武田信一郎に対して何らかの感情的な理由で接触し、彼女自身が何かを求めていた。
しかし、彼女が犯人ではないことを篠田は確信していた。
「それだけじゃないでしょう、三浦さん。あなたは武田さんを愛していたかもしれないが、彼を殺したのはあなたじゃない。真実を話してください。」
三浦は涙を浮かべながら、ついに全てを告白した。
「実は…私は彼に、あの夜、取引を辞めるように説得したんです。彼が危険な取引をしていることに気づいて、怖くなってしまって…。でも、彼は私の言うことを聞かなかった。そしてその夜、彼は殺されてしまったんです。」
シーン:犯人の正体 — 予想外の展開
篠田は三浦の告白を聞き、武田信一郎の取引相手が誰なのかを確信する。
武田の死の背後にいるのは、彼が取引をしようとしていた相手だった。
そしてその人物こそ、旅館に宿泊しているもう一人の客——佐々木隆志ではなかった。
篠田は警察と共に、佐々木の部屋に向かった。
彼は一見、取引の失敗を装っていたが、実際には武田に対して強い怨恨を抱いていた。
武田のせいで、自分のビジネスが崩壊したと信じていたからだ。
佐々木は最初、武田との関係を否定し続けていたが、篠田が決定的な証拠を突きつけた時、彼は観念した。
「そうだ、俺がやった。だが、武田が俺を裏切ったんだ。彼が俺のビジネスを壊して、俺の人生をめちゃくちゃにしたんだ!」
佐々木は取引をめぐる恨みから武田を殺害した後、証拠を隠すために温泉で遺体を偽装しようとしたのだった。
そして、第二の犯行である高橋明子の襲撃も、彼女が事件の真相に近づきすぎたために起きたのだ。
シーン:事件の終結
佐々木は警察に逮捕され、事件は解決した。
篠田は、再び温泉旅館の静けさが戻ったことを感じながら、旅館の女将に挨拶をする。
「これでようやく安心ですね。」
女将は深く息を吐きながら、篠田に感謝の言葉を伝える。
「本当にありがとうございました。こんな悲惨な事件が起きるなんて、夢にも思いませんでした。」
篠田は微笑みながら、温泉の湯煙が立ち上る露天風呂を見つめた。
「温泉は、人を癒す場所のはずなんです。でも、人間の心の闇が深くなればなるほど、どこにいても平穏は訪れないのかもしれませんね。」
そう言い残し、篠田は静かに旅館を後にした。
---
こうして、『湯煙温泉殺人事件』は、取引を巡る人間関係のもつれと、裏切りから起きた事件として幕を閉じました。
「なかなかに面白かったであるな」
メセタがいう。
人間関係のもつれは突如として
人同士の言い争いや殺し合いにまで発展するときもある。
ビジネスの関係でもそれは然りである。
結構考えさせられる
内容であったと俺は思った。
「じゃあそろそろ寝ようか」
「はーい」
また、明日は良い日でありますように。