私に彼がやたらとセッ◯スを求めてくる件に関する一考察の試み
「ねえ、どうしてそんなに私とシたいの」
「それはもちろん、君のことが好きだからだよ」
返事はすぐに返ってきた。
好きだから、セッ◯スをする。これが彼の言い分らしい。私にはよくわからない。
「それに」
と、彼は付け足して言う。
「僕たちは恋人同士じゃないか」
私はその発言に耐えられなくて反論する。
「別にセッ◯スなんて、恋人同士がするものだって決まってないよね?友達だって、それか、そのへんの人とだってできるでしょ」
彼は困った顔をした。
あなたは、セッ◯スしたくて私と恋人になったの?
そんなことを、彼に言う勇気はなかった。
「ちょっと考えるついでにトイレに行ってくる」
と言って彼はトイレにいってしまった。
一人取り残され、することもなく室内を見渡す。満足に明るくはないこの部屋には、たいして興味のあるものもなくて、さっきの会話を考えてしまう。
好きだから、セッ◯スしたいってなに。
本当は、セッ◯スしたいから好きって言ってるんじゃないの?
一度生まれた疑念は消えることはなく、大きくなるだけだ。
そうだよね。人間なんて、所詮いきものだし。性欲で動いていても全然不思議じゃないよ。
でも、恋人になるのってそういうのじゃないって思う、私は。そんな安直な考えで終わらせたくない。第一それが正しいんだったら、私が彼に抱くこの感情はなんだっていうの。好きだからセッ◯スしたいんだったら、私は彼のことが本当は好きじゃないってことになる。一緒にいる楽しさとか、そういう感情全てが性欲に支配されているなんてきっと暴論だ。
だから、彼の気持ちを考察しなきゃ。
彼は私のことが好きだと言っていた。そして、セッ◯スがしたいとも言っていた。その間にあるものはなんだろう。
たとえば、好きな人と子供を残したいから。こんなことが考えついた。たしかに、好きな人と結婚して、子供にかこまれて、みたいなことを想像することは誰だってある。でも、子供ができて堕させられた人なんて何人も聞いたことがあるし、膜一枚隔てた擦り合いになんの意味を持たせられるの?さすがに無責任な発言だよ。
愛を確かめ合うため。こんなことも思いついた。この場合、セッ◯スは愛を確かめ合う最上級の行為となるのかな。ハグとか、キスとか、スキンシップの最上位としてのセッ◯ス。聞こえはいいけど、結局行為を最上級たらしめているのは、子供ができるからじゃないの?
あと、気持ちいいからとかあるけど、それは恋人とは関係のない話。
考えてみたけど、結局よくわからなかった。彼は何をいうのかな。
いくつかの予想された回答を心に携えて、彼を待った。
「トイレ終わったわー」と言って、彼は戻ってきた。
「さっきの話、何か思いついた?」
おそるおそる、聞いてみる。
「うーん。考えてみたんだけど、よくわからなかった」
そっか。そんな程度のことか。
「ていうかさ、もっかいやらね?そうしたらわかるかも」
「そうだね、考えすぎて知恵熱出そー。もうなにも考えたくなーい」
そのままベッドに転がって、彼は私の上に重なる。
別にいいよね、これで。愛されているんだからさ。