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ネビウスクロニクル  作者: 石井
太陽の都編
150/259

第150話 呪いの迷宮(6)「遺跡の支配者」

 いくつもの尖塔せんとうが並びたち、それらは天蓋てんがいまで達していた。入り口などはなく、それは建物というよりも、何らかの機械的な装置であった。その大きさは尋常じんじょうではなかった。城塞じょうさいごとそびえ立っていて、人の身では全貌ぜんぼうを見ることができなかった。


「すごい!」


 カミットは無邪気に声をあげた。彼にはそれが神殿に見えて、エージに聞いた。


「昔の人がここでお参りしたのかな?」


 エージが分析を述べた。


「これが火山のれを制御する大元の仕組みなのかもしれないね。簡単に来られる場所ではないし、宗教的な構造物ではなさそうだよ。古来こらい人の認可がなければ昇降装置も使えないようだったしね」

「そっか!」


 カミットは疑問を解消すると、今度は周囲を見回した。彼は魔人を探し始めた。

 その間、エージは巨大な耐震装置のあちこちを熱心に観察していた。そしてエージはつい学者のモードになってしまって、彼はまた周りが見えなくなった。

 このときバルチッタが手癖のままに近くに転がっていた古代の遺物を風呂敷に入れた。ハルベニィはバルチッタをった。彼らは小声で言い合ったが、二人してエージの猫耳が彼らの方を向いていることに気づくと、バルチッタはあわててくすねた物を全て元に戻した。

 バルチッタは愚痴ぐちった。


「くそぅ。こんだけ汗かいて、銀貨一枚にもならねえのか」

「仕方ねえだろ。命が助かればマシだ」


 そうこうしている間に、カミットは歩いていける場所に魔人が見当たらないと分かって、森の呪いでつたを出して、耐震装置をよじ登ろうとこころみた。

 その瞬間であった。

 警告を示すラッパのような音が鳴り響き、赤い照明が点滅して、危険な雰囲気となった。

 そびえ立つ尖塔せんとうつたい、上の方からまばゆい光がりてきていた。

 バルチッタとハルベニィは抱き合って悲鳴を上げた。

 カミットは登ろうとしていたつたが消えてしまって尻もちをついた。

 エージだけは冷静だった。


「おや。我らの大化身だいけしんを怒らせてしまったかな」


 カミットたちの前に降り注いだ光の正体は、燃え盛るたてがみを持つ灼熱のライオン、太陽の化身(スタァテラ)であった。

 太陽の化身(スタァテラ)咆哮ほうこうを鳴り響かせ、侵入者たちを威嚇いかくした。燃え上がる火を周囲に放ち、逃げ道をふさいで、彼は詰め寄った。

 カミットは彼の前に飛び出して言った。


「魔人を探しに来たんだ!」


 言葉が通じる相手でもなし、太陽の化身(スタァテラ)はカミットを食い殺そうとした。

 するとカミットに宿やどる森の呪いが巨樹をあらわし、太陽の化身(スタァテラ)を押し返した。

 太陽の火は呪いの一体目の巨樹をあっさりとほろぼした。しかし巨樹は何体も現れて、カミットを守るように並び立った。

 エージはこの様子を見て、関心を示した。


「森の呪いが太陽の火を恐れていない?」


 カミットは得意になって言った。


「僕の呪いはすごいんだよ!」

「安定しているし、第一世代という感じではないけど。起源きげんが違うのかな」


 このあと森の呪いは自ら巨樹をらしてしまった。これにともない、周りを囲っていた火も消えた。

 大いなる者どうしは小競こぜり合いこそしたものの、全力でやり合うことはせず、なにやら人知の及ばぬ様子で相談して、事を収めたようだった。

 それでも太陽の化身(スタァテラ)納得なっとくしたわけではなさそうだった。彼は不機嫌にうなると、ぴょんと跳んで、巨大な耐震装置の上の方に行ってしまった。そうしてあたりを見渡せる高さで陣取り、カミットたちをじっとにらんだ。

 ようやく平和が戻ってくると、ハルベニィがカミットにせまってさけんだ。


「魔人どころじゃねえぞ! 本当に殺されるかと思っただろうが!」


 カミットはハルベニィの剣幕けんまくがなぜだかおもしろく、あははと笑った。


「大丈夫だよ。僕の森の呪いは大化身だいけしんとだって、上手くやってくれるんだ」

「くそ! こえぇのはくそったれだ! 早く帰ろうぜ!」

「なんで? もう大丈夫だって。もっとちゃんと調べようよ」


 カミットの意思とは正反対に、森の呪いは動き回る低木をたくさん発生させて、これらでカミットたち全員をつかまえ、大急ぎで昇降しょうこう装置の方までれて行った。

 エージははこばれながら、まだ余裕よゆうの様子で分析していた。彼はぼそりとつぶやいた。


「なるほど。ならず者をすぐに帰らせるのが条件だったのかな。彼らは紳士的だな」


 昇降装置と思われた小部屋は実際には遺跡のあらゆる場所へと移動できる乗り物であった。それはカミットたちが来たときは別のルートを通り、一気にある出口まで彼らを運んでいった。そこは太陽の都(ソルガウディウム)の第一層の貧民街の地下水路に通じていた。


「こんなところに出入り口があったなんて」


 学者たちには明らかでなかったその入口は、しかし盗賊には御用達ごようたしであった。バルチッタとハルベニィは逃げる機会をうかがっていたが、エージは彼らに命じた。


「さて。君たちは詳しそうだし、地上まで案内してもらおうかな」


 二人の盗賊はがっくりと肩を落としたのであった。

お読みいただきありがとうございます。

ブックマーク、ポイント☆など入れていただければ幸いでございます。


2022年10月23日:「第11話 呪いの森(4)森の魔人」の描写の大幅修正、ルビの追加をしました。

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