8 冒険者ギルド
「それでは、実技試験をお願いします。相手ランクはEです宜しいですか?」
「確認ですが、倒すとEランクから始めれますか?」
Fランクは、主に街での御使いしか無いからパスしたいんだよ。
「戦闘技術が認められますと、Eランクになります」
良かった、お使いクエストは正直面倒くさい。
「相手なんですが、剣士・魔法使い・盾槍のパーティーが現在在中してますが、どちらの方にされますか?」
「全部見て頂きたいので、そのパーティーとの模擬戦をお願いします」
「え!Eランク複数相手ではDランクソロでも厳しいですが、本当によろしいのですか?」
問題無いと伝え訓練場へ向う。途中で見学か何かと勘違いされ、お姉さん方にチヤホヤされる。良い気分だ、テンション上がってきた!
「んで、俺たち理想郷の壁を1人で相手をする新人は誰だよ?」
名は体を表すと言うか、壁は要らないんじゃ?壁が有っては理想郷へ行けないのでわ?
「新人のアルトゥルです。若輩者ですが、宜しくお願いします」
「な!ガキと言うより、幼児じゃねえか。怪我する前に帰りな」
「……」
「可愛いね君、お姉さんと遊ぼうか?」
アタッカー、タンカー、ウィザードのお姉さんと喋ってくれるが、イヤ1人は沈黙だ。対戦相手と認識されて無いな。
「お姉さん、試合をお願いします!倒さないとEランクとして認めて貰えないので」
潤んだ瞳で訴え掛ける!おっさんだった頃は気持ち悪いだけだな。
「解った、解ったよ!但しそこの練習用の木器な」
「ありがとうございます」
剣士の方が折れてくれたらしい、実は良い人なんだ。
「それでは、各自準備をお願いします」
俺は、剣と腕盾だな。サイズが無いので自前の木製の剣と盾を取り出す。左手は魔法を使うのに開けとかないとな。この盾には武器が付いて無いのが駄目だ。今度は、デザインを書いて見るか。
対戦相手は片手剣と大盾と槍、杖は無いので自前の装備か。
相手のフォーメーションはオーソドックスの縦列ね。
「それでは…始め!」
中衛の剣士が飛び出してきた。
「さっさと終わらせる!」
袈裟斬りに軽く振って来る。手加減してくれてるね、やっぱり良い人だね。
魔力操作で、身体強化をして素早く魔法使いのお姉さんの後ろを取る。
「はい、お姉さんはお終いですね」
木剣をお姉さんの首筋に当てる。
「ウソ!見えなかった!…私は終わりか」
先ずは1人、タンカーさんは頑丈そうだよね?
左手が疼く。嫌違う!魔力を集めて氷弾連射だ!
「な!高等魔法だと!」
タンカーさんの木盾を壊しながら、身体を凍らせる。これで2人目だ!
最後は、ちゃんと剣術と体術で行くよ!
「次は、接近戦も出来る事をお見せします」
「ははは、おもしれーやろうぜ!」
この人は戦闘狂かな?
剣を構える、アタッカーさんが先程とは違い手加減抜きで袈裟斬りをする。それを腕盾でいなす。まともに当たると痺れるし体重差で負けるからね。
体勢が少し崩れたので、首へ向けてジャンプキックをするが、流石!空いてる片方の腕でガードされる。
「っつー、ガキンチョ!お前身体強化が使えるのか?俺は使えねーのに」
魔力操作は、努力すれば使えるので頑張ってね。身体強化それの延長だよ!
今度は、アタッカーさんが踏み込んで来たところに土と水の合成魔法の泥沼だ。
ズボッと片脚が落ち、視線を下に向けたので素早く近づく。ウィザードのお姉さんみたいに首筋へ木剣を当てる。
「はぁ〜俺の負けだ」
「すいません、絡めてを使わないと倒せそうに無かったので」
「いや、面白かったぜ!またやろうな」
「はい!宜しくお願いします」
「私も!魔法詳しいよね?教えてね」
「見下してすまない、俺も頼む」
こんな幼児に、頭を下げる事の人を無下には出来ない。だから時間が合えば、是非と答えておく。
「アルトゥルさん、試験は終わりましたので一旦戻りましょうか」
それから訓練場を後にして、最初の受付カウンターに戻ってきた。因みに訓練場で賭けをしていたらしく、俺に賭けてた人から祝儀だと銅貨を数枚貰った。
「マスターに報告しますので、暫くお待ち下さい」
此処で、待ってるのもアレだから建物に併用されてる酒場へ行く。
アルコールを呑みたいとこだが、帰って母さんが心配するのでやめとこ。
「果実水を1つお願いします」
銅貨2枚を渡す。
飲もうとすると、声を出す輩が居る。
「おいおい、いつから此処は子供の遊び場になったんだ」
おお!テンプレ宜しく、絡まれイベント発生か!?
「ギルド登録に来まして、今は結果待ちですよ」
「無理に決まってんだろ!早く帰りな。それに柄の悪いのもいるからだ」
「それは、お前さんだろ?」
カウンターのマスターに茶化されてる。
さっきの剣士さんといい、この人といい…何気に面倒見が良いな。
ドカ!っと物音立てて、一人の男が慌てた様子で入って来る。
「誰かポーションを分けてくれ!」
その後に担ぎ込まれる若い女性だ。
酷い怪我だ、それに毒も受けているな。
「手持ちのポーションだけでは足らないし回復しないんだ、助けてくれ!」
見てしまったので、ほっとけないんだよな。幸い最初の受付嬢以外は、嫌いになって無いしな。あの子はチヤホヤされ過ぎて、自意識過剰になってたし。
「すみません、通して貰えますか?」
人混みを書き分け…れないので、下から行くか小さいから出来る。ちょっと複雑だが、まだ幼児だと自分に言い聞かせる。
「なんだそこのガキ、見せ物じゃ無いぞ!」
気が立ってるのでスルーだ、言い返しても口論になるだけだし。
「鑑定……状態異常の毒もありますので、それが回復の妨げになってますね」
「な!か、鑑定だと。イヤ今はいい、解毒ポーションも誰か持って無いか?金なら払う、頼む誰か!?」
周りはざわつくだけで、持って無さそうだ…仕方ないか。もうこんだけ目立ったんだから今更か、平穏に暮すのは無理か。だったら俺のやりたいようにやるか!
「状態異常回復良し!」
解毒終了だ、続けてヒールも掛けて傷を塞ぐ。
「キュアヒールだと!?」
周りのざわ付きはもはやスルーだ。気にしたら、ザワザワとカタカナが現れそうだしな。
「う、ん…」
「おい!気が付いたか?」
お姉さんが、目を覚ましそうだな。
「まだ、横になってて下さいね。失った血液は戻りませんので」
終わったので、カウンター席に戻りマスターにお代わりの果実水を頼む。帰りは下を通らなくても空けてくれた。